夜の空気には 甘いジャスミンの香りが漂っていた
明日降るだろう雨を含んだ気配が 心に 身に 纏わり付くように感じた


あの時 君は確かに会話に参加していた
身振り手振りを交えて話している人を 確かに見ていた

彼はその輪には入っていなくて
そして そっと腰をあげ ちらりと後ろを見遣った

なんの
なんの合図もなかったようなのに

君は頷いた

輪の中心から僅かに顔を動かし

頷いた

小さく二回



今の




それに気付いたのは僕が君を目で追っていたから?

話なんて聞いてなかった
僕は
君も?

僕が君を見ていなければ 
注意深く見ていなければ 気づかなくて済んだだろう

なのに
自分に毒づく

見なきゃよかった

あんな小さな頷きにさえ 気付いてしまった自分にうんざりする

気づきたくなんてなかった
君と彼の関係にも
自分の中の醜い気持ちにも

嫉妬なんて


確かに彼は君を好きだと
みんなの前で言っていた

自分もだと 言わなかったのがいけなかったのか

君はそんな事には取り合わなくて
当たり前だと安心した

なのに
君は頷いた

小さく二回

しかも
そっけなく

なぜ
そっけなさは時に親密さを感じさせるのだろう

あんなにそっけなくなければ
あんなに小さくなければ

無言の挨拶だと受け取れたのに

向こうで待ってるから
分かった

そんな会話が見えた

「了解」
二度の頷きがそう言っていた

そして 君はやってこない

二台の車は

待ちぼうけ?


そして、僕は今 君の家の前を通過した


君のような甘い香りを抱きながら





2010.6.5UP
お久しぶりです。本当に。
ご無沙汰しまくっております、聖奈です。
リハビリしていきます!