君にプレゼントをしよう 君によく似合う真っ白な洋服 君は嫌だと言うけれど、きっと天使のように見えるだろう  「俺、白い服、あんまり好きじゃない」 君はいつだってそう言って嫌そうな顔をする。 「どうして？可愛いのに」 「可愛いって言われるのも好きじゃない」 そう言って膨れてそっぽを向くのも可愛いよ。そう言ったら君はどんなに怒るだろう。 「どうして？」 「男として見られてないって事だろう？」 「そんな事ないよ！褒め言葉だよ！」 「とにかく白い服は、好きじゃないの！」 もう何回もこんな会話を繰り返してるけど、でも、今日は着て貰うよ。 だって今日は僕の誕生日。 「どうして俺が貰うの？」 手渡された包みを抱えて君は首を傾げている。 「それ着て俺の誕生日を祝って欲しいから。」 分かった、と君は笑って見せたが、中身を見ると顔色が変わった。 「変態。お前の趣味を疑うよ。女の子に着せればいいだろう」 それでも君はちゃんと着てくれた。その気持ちが嬉しいよ。 白いホワホワのニット帽に、同じくアンゴラでホワホワのセーター、オフホワイ トのコーデュロイのパンツまで身に纏った君は少し長い袖から指先だけを出し、 裸足のまま冷たそうな床の上を歩いてる。 僕の声に反応して振り向いたその姿は、本当に天使のようで、僕には真っ白な羽がはっきりと見えたよ。 家の中でまで被ってる事はないなと外した帽子の中からは癖のない茶髪がさらさらと零れ出した。 しばらくうろうろしていた君ははにかみながら大きな包みを持ってきた。 「はい。プレゼント。お誕生日おめでとう。」 チュッ 可愛いらしい音と共に、柔らかい感触が唇に当たった。珍しい君からのキスに僕は一瞬目眩がして、君を抱きしめ損ねてしまった。 君は照れ隠しに少し乱暴に渡すと恥ずかしそうにすぐに後ろを向いてしまった。 「開けていい？」 「うん」 結局君からも洋服を貰って、僕らは二人ともお互いが着せたい物を着てデートに出かける事になった。 「カップルみたいじゃない？」 君は一瞬嫌そうな顔をしたけど、手を繋いで来てくれた。 すっかり顔なじみになった洋服屋で会話を弾ませる君。 インテリアショップではしゃぐ君。 靴屋で暇を弄ぶ君。 電気屋で走り回る君。 そして今、君は一風変わった雑貨屋で、つまらなさそうに している。 それでも、今日は僕に付き合わなければいけないと気を使っているのだろう。 壁にも凭れかからずにじっとしているのは、洋服を汚さない為だろう。 街を歩いていても、お店に入っても几帳面な君は真っ白な服を真っ白なままにしようと神経を尖らせている。 それは、今、食事をしながら最高潮に達していて、 僕は君が白い服を嫌がる理由が少しわかった気がした。 「そんな神経質にならなくていいのに」 「そういう性格なの。せっかく貰ったのにすぐに汚したら勿体ないしな。」 食事がすむと、お決まりのデートコースを歩く事にした。みんなお互いの事しか見ていないから都合がいい。 夜景を見ながら君を抱こうとしたら、 「手、綺麗なのかよ」 君の意地悪そうな声が聞こえて、僕の腕は行き場を失った 。 「俺も白い服嫌いかも」 思わず呟いたら、 「な？だろ？」 と君の満足そうな声が聞こえて来た。 真っ白な服を着ているくせに真っ黒な羽が一瞬見えたから、悔しくなって一気にきつく抱きしめた。 「俺に抱きしめて貰えないから白い服嫌いなの？」 「なわけないだろ」 汚れる、と嫌がる君をちょっとからかってみたら、くぐもった声が聞こえて来た 。 それでも、 「もう一回プレゼントちょうだい」 と言うと、 チュッ 僕の腕から君がもがきながら出て来て、唇を奪っていった。 ホワホワの帽子に縁取られた君は可愛くて 「やっぱり俺は白い服好きだな。」 と呟いたら、 「わかったよ。もう好きにして」 なんて投げやりな言葉が聞こえて来たから、僕は少し調子に乗って言ってみた。 「じゃあ、年の数だけキスして。ろうそくはいらないから」 ケーキを準備してない事を気にしていた君は 「うちに帰ったらね」 と下を向きながら言ってくれた。 33回のキスは少し疲れたね。でも最高のプレゼントだったよ。ありがとう。 白い服のまま眠る君にお礼のキスをすると、34回目のキスに目覚めた君がニヤリと微笑んだ。 「34才おめでとう。これで来年の分ももう済んだな。」 |