*これから先、かなりブルーなお話になっています。
 それでも、気になさらない方だけ、先に進んでください。
 苦情等、一切お受けいたしませんので、よろしくお願いいたします。


















































流れ落ちる涙を見る度に君を思い出す。
あの日、僕が泣かした君を。
涙で濡れた君の顔。君は透明な滴を零し続けた。
僕を詰るあの声が今も耳から離れない。
一番大切な君を泣かせたあの日、あの年。








窓辺に座る君は静かに本を読んでいた。
穏やかな光が君に降り注ぎ、滑らかな肌が惜し気もなくさらされていた。
侵しがたいその姿に声をかけるのをためらい、するべき話を先延ばししようとした。
じっとこのまま見ていたい。
そう思う僕に君が気付く。
柔らかな微笑みをそこに加え、僕の名前を呼ぶ君は、
恥ずかしげもなく例えるならば聖母のようであった。
「ん?」
穏やかに聞く君にこんな話ができるわけがなかった。
ただ、誰よりも先に僕は君に伝えなければならなかった。

「結婚…することになった」
静寂が訪れた。
「そうなんだ。」
君が静かにそう答えそうな程、穏やかな静寂だった。
このまま眠ってしまいそうに心地のよい。

が、君はそうは答えなかった。静寂は終わった。

「何言ってるんだ?」
「……」
「なぁ、お前何言ってんの?」

僕を睨む君の目から次々と涙が溢れ出した。
「僕はおめでとうとでも言えばいいのか?なぁ?なんて言えばいい?なんて言って欲しい?」
怒りに震える君に言葉を返せなかった。
「言えよ!言ってみろよ!」
「……」
「だよな、言えるわけがないよな。僕には自分を選ばせたくせに。
 僕の結婚は許さなかったくせに!僕はお前を選んだんだぞ!お前を取ったんだぞ!」
「……」
「なんか言えよ」

言えるわけがなかった。何も言葉を持ち合わせなかった。

「あ〜!」
君は有らん限りの怒声を吐き出し、読んでいた本を机に叩き付けた。
「あの時言ったよな?一生俺を幸せにするって。お前を選んだ事を絶対に後悔させないって。
 言ったよな?実行してみろよ!やってみろよ!口で言うだけってお前が1番嫌いなんじゃなかったのかよ!」

涙が伝う白い小さな顔と、口から出る強い言葉。

それでも君は綺麗だった。 

「ごめん。」
そんな言葉が君を傷つけるだけなのはよく分かっていた。
「ありがとう」
そんな言葉で解決出来ない事もよく分かっていた。 

もう抱きしめる事も許されなかった。
「抱いてキスしたら許されるとでも思ってんのかよ!」
僕の胸元から届く君のくぐもった声が聞きたかった。
「思ってるよ」
甘く囁いた日々が懐かしい。 

どうする事もできなくて、ただ無言でいた。

「勝手にしろ」
そう吐き捨てて、部屋を出ようとする君を後ろから抱きしめた。 

「ごめん。これで最後」
固まる君を強く抱きしめる。
「もう俺の事なんて想ってくれなくていい。怨んでくれてもいい。
 ただ俺がお前を想い続ける事だけは許して欲しい。」
「……」
「愛してる」

君をそっと振り向かせ、瞳から零れ落ちる涙を指で拭う。
そして最後のキスを交わす。 
間近で見た美し過ぎる君の姿が忘れられない。

君の隣に立つ事は許されても、もうその唇に触れる事は叶わない。
けれど、それで隣に居続けられるなら構わない。

「愛してる」
最後までそう伝え続けられた事を誇りに思う。

そして、これからも愛し続ける自分を許された事を幸せに思う。


愛している
これまでも。
これからも。
ずっと、ずっと。






2005.8.10 UP
これは、ずーっと持ちつづけていたお話です。
今、この時期にあげるべきか悩んだのですが、
素敵な背景画像のおかげで光が見える感じに、
最終的に出来上がって満足しています。
不快になられた方がいらっしゃいましたら、
謝ります。ごめんなさい。
♪※♪※♪※♪※♪※♪※♪※♪※
SMAPファンに55のお題
thanks to「Wish Garden」植木屋様
http://www.geocities.jp/wish_garden_new/odai/00.htm
♪※♪※♪※♪※♪※♪※♪※♪※