blankets





SMAPと仕事を始めてはや3年。
名前も覚えてもらったし、挨拶もしてもらえる。
仕事以外の無駄話もたまにはするようになった。
だから、そんな立場じゃないのは分かっていたけど、心配なんてものもしてみた。
おせっかいかとは思ったが、「こっちの方が年上だし」なんて理由で小さな背中に、
世話を焼いてみたいと思った。











「中居君、寒くない?」
「いや、大丈夫。ありがとう。」

寒さに震えているくせに間髪入れずそう答えると、笑顔を作る。
それは、とても柔らかく、温かく、しかし、はっきりとした拒絶を感じた。
僕は手に持ったジャンパーをそのまま椅子に置き直すしかなかった。
少なからず、ガッカリしてその場を去ろうと向き直ると稲垣君が立っていた。

「せっかく気を使ってくれたのにごめんね。」
申し訳なさそうに言う彼は手に温かそうなマフラーを持っていた。

気になって見ていると、それをそのまま中居君の首に巻き付けた。
僕が断られたのを見ていたはずなのに、そこには何の迷いも無く、余裕と、そして、
少しの優越感さえ感じられた。

「それじゃ寒いでしょ」
「いいの!」

上から見下ろす稲垣君に、中居くんは少し子供っぽい声を返した。

「よくないって」
「これ誰の?」
「僕のだけど」
「じゃあ、いいや」

そう言うと、中居君は案外あっさりと、そのマフラーに顔を埋めた。
暫くもぞもぞと居心地のいい場所を探しているようだったが、
ちょうどいい場所を見つけると稲垣君と話を始めた。

「吾郎の匂いがする」
「だって僕のだもん」
「なんか・・・花の匂い?」
「いい香りでしょ?」
「うーん、まあな。」

話をし始めた中居君の周りには温かな空気が取り巻き始めた。
それは決して体が温まったからだけではなさそうだった。

何を話しているのか、楽しそうに、ころころと笑う二人に邪魔をしている気分になって、
その場を立ち去ろうとした時、カップを三つ持った木村君が登場した。
ぼーっと立っている僕には目もくれず、躊躇うことなく二人の輪の中に入っていく。


「はい。」
「あ、木村君。」
「おぅ、木村。」
「何?それ。」
「吾郎にはホットショコラ。中居にはココア。」

「なんで違うの?」
不思議そうな中居君と
「同じ物じゃない」
と笑う稲垣君。
「いいだろ?」
「うん。いいね。こっちの方が美味しそう」
「なんだ同じ物なのか」
中居君がたいした事ないな、と目を向けると木村君が弁解を始めた。

「違うって。」
「だって同じ物だって言ったじゃん。な、吾郎」
と中居君は取り合わない。
「聞けよ!吾郎のショコラの方が甘いの。中居のココアは甘さ控え目」
「いいねぇ」
「ふ〜ん」
稲垣君は満足そうに片手でカップを口に持って行き、
中居君は興味なさそうに、それでも両手でカップを口に持っていく。

「美味しい」
「今日、寒いもんね」
「鍋だな、鍋」
「夜?いいねぇ」
「誰んちでやる?」
「ん?お前んち」
「僕んち?やだ」
「なんでだよ」

三人の会話は尽きることを知らず、本当に邪魔しているようだったので、
すごすごと立ち去った。

なんだか見せ付けられたようで、少し複雑な気分だった。
親しくなったつもりだったけど、そうでもなかったか、なんてひがんでみたりもした。
彼らの20年近くの付き合いに、たった3年、しかも仕事の時だけの付き合いの僕が匹敵するはずもないか。
思いのほかショックを受けている自分には気づかずに、煮え切らない思いでセットを後にした。


でも、その30分後、僕は自分の器の小ささを笑い飛ばすしかなかった。
なぜなら、撮影開始を告げに呼びに行った時、カップの数は5つに増え、そこは手をかざして温まりたくなるほど
暖かい空気に満ちていたから。
少しでも妬んだ自分がおかしくて、彼らと一緒に笑ってしまった。
完敗どころか、話にもならなかった。
もう悔しいとも思わずに、彼らのそんな風景を見られる自分を誇らしく思った。




木村君が中居くんを抱え、香取君が草なぎ君を抱え、抱えられた二人が稲垣君を挟む。
カップを傍らに置き、そんな態勢で暖を取る5人。
暖かいジャンパーを貸そうとは、もう思わなかった。







2005.12.23UP
Merry X'Smap!
可愛らしいお話が出来たので、
クリスマス記念作とさせていただきます。
他人から見たSMAP話って読むのも書くのも好きです。
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SMAPファンに55のお題
thanks to「Wish Garden」植木屋様
http://www.geocities.jp/wish_garden_new/odai/00.htm
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