僕は伝書鳩


「ちょっと、中居君、聞いてよ!吾郎ちゃんムカつくの!僕がさ、木村君と喋ってるのに、メールしてくるの!
 僕が目の前にいるのにだよ!ムカつくよ。」
「で、木村はそれにいちいち返すんだろ?」
「そう!!ムカつくよね?!」

怒りを一気に爆発させた慎吾は、中居の顔を見て、自分がしくじったことに気付いた。
目が笑っていない中居の笑顔を久しぶりに近くで見た気がした。

「ムカつくよな?目の前にいる奴と喋れっつーの!それをさ、寝てる間も「夕刊みーる」「夕刊みーる」ってうるさいっつーの!」

それ、「You’ve got a mail」だよっと突っ込むこともできずに慎吾は固まっていた。


「お前さ、それがムカつくんだよな?」

有無を言わさぬ視線で慎吾は中居に捕らえられた。

「う、うん。」
「じゃあ、言って来いよ!目の前でメールされるのムカつくって!」
「う、うん。」
「ほら。」

早く、と顎でドアを指差され、慎吾は色んなところにぶつかりながら、なんとか廊下までたどり着いた。

「全く!吾郎ちゃんのせいだよ。もう、やめてよね!」

まっすぐ木村の元へはいけずに、とりあえず吾郎の楽屋に寄った慎吾は怒りをぶつけた。
なぜか、自分まで怒られた気になって怒りは倍増だ。

「意味が解らないよ。慎吾はそういうところがあるよね。」
「あー、ちょっと、待った、待った。何、冷静に聞いてるの?」
「だから筋道立てて話さないと。英語勉強するのもいいけど、キャッチボールSMAPとかだって、意味が伝わらないこと多いよ。」
「もう、いいから、とにかく!」
「だから、なにがとにかくなのかわからないって。人の貴重な休憩時間をつぶして、意味無く騒ぎ立てるのやめてくれるかな?」

今日の吾郎はご機嫌斜めのようだった。

「ああ。もういいよ、分かったよ。」
「本当に?じゃあ、何がわかったの?言ってごらん」
「・・・・・・」
「ほら。」
「もういいってば!」

叫んで吾郎の部屋を飛び出した慎吾が行った先は剛のもと。

「ちょっと、つよぽん聞いて。」
「何?」
「中居くんにさ、」

話し始めた慎吾は、すぐに剛によってさえぎられた。

「それってさ、早く木村君のところに行ったほうがいいんじゃないの?」
「そりゃそうだけどさ、でもさ、つよぽんだったら行く?」
「うーん。」

考え出した剛の後ろに吾郎が顔を出した。

「そりゃ、早く木村君のところに行くべきだね。」
「ひとごとだと思って。」
「木村君には、一言中居くんからの伝言だって伝えればいいだけじゃない。うまく言えれば慎吾は何も怒られずに済むんだし。
 だけど、それを伝えないでいてごらんよ。なんで伝えないんだって、中居くんに怒られるよ。」
「・・・そっか。さすが吾郎ちゃん。」
「うん。」
「じゃあ、一緒に行って。」
「やだね。」
「だよね。」
「早く行きなって。木村君に睨まれる方がマシだって。なんたって、中居くんには黒い羽が生えてるんだから。
 それにしても、恋人の前でメールして怒らせるなんて木村君もまだまだだな。やきもち焼く中居くんも可愛いけどね。
 あ、ちなみに、自分で解ってないみたいだけど、慎吾が怒ってるのもやきもちでしょ?」

吾郎は自分の言葉にくすっと小さく笑うと、頑張って、と手をひらひらさせながら自分の楽屋に戻っていった。


「わけが解らないよ」

呟きながら、木村を探していると、いつものように前室にいた。元気のない慎吾に気づくと、声をかけてくる。

「慎吾、どうした?」
「木村君。あのさ。」
「何?どうしたんだよ。」
「あのさ・・・」
「あ゛?」
「中居くんの事怒らせた?」
「はい?」
「人が目の前にいるのにメールするなって伝えとけ!だってさ。」
「・・・・・・」
「僕は伝えとけって言われたから伝えただけ。じゃね。」
「慎吾!」
「え?何?」
「やきもち焼き!って伝えといて。」
「ええ!嫌だよぉ。」
「なんでだよ。行って来いよ。」

「つよぽーん。吾郎ちゃーん。」

慎吾の泣き声が廊下に響いた。


 






2006.5.31UP
パソコンの中を見ていたら発見しました。
おそらく、去年の国立ライブ後に書いたものなのでしょう。
日記には書いた気もしますが、せっかくなのでUPします。
【書きかけの物を完成させようキャンペーン】第一弾です(笑)