○月○日。
すっかり見慣れた衣装を身に付け、中居さんがいち早くスタジオに下りてきた。


「中居さん、何か作りますか?」
「ん?木村に作って貰うからいい。」食材を弄びながら答えるのもいつもの風景だ。


「ああ、やっと来た。」こちらもすっかり見慣れたシェフ姿だ。
「え?何?俺の事待ってたの?」感情がすぐ顔に出るのは出会った頃から変わらない。
「腹へった」とろけた顔を凍りつかせるには十分な低い声。
「はい?」
「腹へった!早く何か作れよ」食材を弄びつつ、横目で木村さんを見つめる。結構冷たい視線で怖い。
「作って下さい、だろ」
「早くぅ。」
「ちゃんと言わないと作らない」対戦が始まった。
「・・・・・・」(むーっと)声がしそうな目力。
「なんだよ。」主役2人の視線が絡み合う。結構見ていて冷や冷やするものがある。
「おなかすいたの」中居さんが作戦を仕掛ける。
「可愛く言ってもダメ!」
「作って下さい」ちらっと時計を確認した中居さんがモゴモゴと言った。
「え?何?聞こえない」きっと聞こえているんだろう。顔がにやついている。
「聞こえてるんだろ!」中居さんが実力行使に出た。
自分より背の高い木村さんに掴みかかる様子はじゃれてるようにしか見えないけど。
「ああ、もうなんだよぉ!」嫌そうにしながら顔が緩みきっている。


結局二人はひっついて、くちゃくちゃに。今にも床に転がりだしそうで、衣装さんやメイクさんははらはらしている。
食材や刃物もある場なので、料理指導の先生も少し心配している。


「木村、馬鹿!そこ!」中居さんが甲高い声を上げた。
「え?何々?ここ?」木村さんは、得意のからかうような意地悪な視線。
「馬鹿っ!」中居さんの顔が真っ赤になる。
「そんな事言うと作ってあげないよ〜」優勢に立つ木村さんは余裕の表情だ。
「や〜だ!作って〜!」中居さんはすっかり駄々っ子状態になっている。
「だから作って下さいって言って」どうしても言わせたいらしい。
「さっき言っただろ?」
「聞こえなかった」
「じゃあ・・・」人目を気にする様子で木村さんの耳に口を近づける。
「作ってください。」
「うわっ!」耳を押さえ真っ赤になり、声を上げる木村さん。勝ち誇って見下ろす中居さん。
「わかった。作らせて頂きます」木村さんは負けを認め、頭を下げる。
「♪肉、にく〜、お肉」頭をフリフリ、木村さんに牛肉を手渡す中居さん。


可愛い。そう思ってみられていることに二人は気付いているだろうか。


木村vs中居
中居の勝ち


△月△日
オーナー服を身にまといスタジオに入ってきた中居さんは元気が無かった。
その視線の先には木村さん。少し困った顔をして近づいていく。

「木村」
「何?」目線をあげずに答える木村さん。それってスタッフに対しては絶対にとらない態度だ。
「何作ってるの?」気にしていないそぶりで聞いているが、空気がぴりぴりしてる。
「は?いいじゃん、別に。」
「そうだけど。」さすがに中居さんの声が沈む。
「そこに立たれると邪魔なんだけど。」めったに聞かない声だ。
「怒ってる・・・よね?」
「怒ってないように見える?」チラッと中居さんを見る視線が氷のように冷たかった。
「ごめん。」その言葉に木村さんは手先に向いていた視線を目だけ動かし、中居さんを捕らえた。
「悪いけど、今、そういわれて、じゃあ仲直りつってなんか作ってやる気になんてならない。」
「うん。」
「腹減ってんなら誰かに作ってもらえば。」見下ろす視線に暖かさはない。
「うん。別に作ってもらいたくて今言った訳じゃないけど。」小声で呟きつつ、中居さんが向かった先は、
厨房セットの中、木村さんの横だった。

食材を手に取り、何かを作っている中居さん。気にせず、自分の作業に没頭しているフリをしつつも、
意識は完全に隣に行っている木村さん。
よそよそしい距離をとりつつ、作業を進める二人。誰も物音も立ててはいけないような気がして、
やるべき事を放って、ことの成り行きを見守ってしまう。


香ばしい香りとともに中居さんの手元あるのは、得意のベーコントースト。
真剣な顔をしてそれを作っていたかと思うとおかしいが、それを突っ込める空気ではなかった。
出来上がったパンの対角線上に切れ目をいれ、三角になったそれを、中居さんは木村さんの口元に運んだ。


「はい。」
「なに。」木村さんの眉間にはまだ皺が寄っている。
「ごめん。」
「何?お詫び?」木村さんの突き放した言い方は余り聞くことがない。
「うん。」中居さんの声がかすかに聞こえた。
「こんなで機嫌直すの幼稚園児くらいまでじゃない?」
「うん。」
「ま、いいや、もらっとくわ。」
「うん。」


木村さんの顔が少し明るくなった事に目を伏せていた中居さんは気がつかなかった。
だから、「これくらいで機嫌直してんじゃん」と突っ込む声も聞こえず、静かに収録開始時間を迎えることになった。
今日の対戦は少し見ていて辛いものがあった。

木村vs中居
木村の勝ち 


□月□日
その日オーナーと赤シェフは一緒にスタジオに入ってきた。

「♪おーなかすいた、おーなかすいた」不思議な節回しの中居さんを木村さんが見つめている。
「でも、中居ダイエット中でしょ?」
「一日一食ダイエットだから、一回は好きなもの沢山食べていいの。」
「あっそ。で、何食べたいの?」
「肉!ステーキ!」中居さんは即答だ。
「じゃ、自分で作れるじゃん。」
「できない。木村作って。」
「なんでだよ、そんくらい自分でできるじゃん。俺、お前専用シェフじゃないもん。」完全に面白がっている。
「木村が作ったほうが美味しいじゃん!ね?」
「中居が作ったって美味しいじゃん!ね?」2人で小首をかしげあっている。
「やーだー。ね?」まずは下手に出る中居さん。
「やってみなって。」
「じゃあ、慎吾に頼む。」パッと態度を変えるのは得意技だ。
「分かったって!分かった。」とたんに慌てだすのは木村さんだ。形勢逆転。


満足そうな中居さんだったが、そこに料理指導の先生が現れた。
木村さんと打ち合わせを始めてしまう。そうなると、中居さんの我が儘も通せない。

「肉、使っていいですか?」大人の声になり聞いてくる。
「あ、いいですよ。どうぞ。」
「なんか、作りますか?」少し寂しそうな表情に思わず聞いてしまう。
「あ、いいです。じぶんでやります。」木村さんに見せてた態度の片鱗も見せてもらえないのは少し寂しい。
「こうやって食べると美味しいですよ。」ついアドバイスしてしまう。
「ありがとうございます。やってみます。」木村さんに見せていたのとは少し違う笑顔を見せれらてしまった。

作業を始めた中居さんの元にエプロンを片手に木村さんが近づく。

「衣装汚さないで下さいねってさ。」両手がふさがっている中居さんにエプロンをつける。赤と白のチェックのエプロン。
「いらないよぉ。」不自然な恰好に中居さんが嫌がっている。
「衣装さんに怒られちゃうでしょ。」と言いつつ、木村さんはやっぱり笑顔だ。
中居さんの横に立ち、二品目を作らせるべく指導を始めた。
「ステーキだけじゃ体に悪い。俺、切るから中居炒めて。」2人の共同作業が始まった。
「うん。これいつ入れるの?今入れるの?」
「全部いたまってから。サラダも食べるよな?」
「うん。ね?もう、これ出来上がり?」
「あ、よさそうじゃん!」楽しそうな2人の様子に人が集まる。


他のメンバーが覗きに来るが、2人して「あげなーい。やらなーい。食べたいなら自分で作れば?」
と小学生レベルの会話を繰り広げている。


「「できた!!」」二人の声がスタジオに響く。
「「いただきます」」わざわざセットの2階までもって行き食べている姿が微笑ましい。


いつかこの組み合わせで収録が出来ればいいのに、そこにいる誰もがそう思った。
でも、それって物凄く大変そうだな、とも誰もが思った。

木村vs中居
引き分け



2005.1.19UP
今年初アップです。
お友だちから、とっても素敵な情報を聞かせて頂いたので
それを元に作ってみました。

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SMAPファンに55のお題
thanks to「Wish Garden」植木屋様
http://www.geocities.jp/wish_garden_new/odai/00.htm
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