「中居」 前を歩く背中を呼び止める。
「ん?」
「買い物行こうぜ。」
「ん?うん。」 不思議そうな顔をしつつも、素直に頷いた。
「何?何か買うの?」 かしげている小さな頭にはキャスケット。正直、かなり可愛い。
「内緒。行くぞ。」 テンションが上がる俺に中居も笑顔でついてくる。
「何か買ってもらえんのかな?」 可愛い事を呟きながら少し後ろを歩いてる。
「♪恋人はサンタクロース」 結構上手に歌っているな。と思っていたら、突然腕を絡ませてきた。
「♪背はそんなに高くないサンタクロース」 あの・・・今日お持ち帰りしていいですか?
「なーんてね。」 お転婆な笑顔で顔覗き込んでくる。
「抱きしめていい?ここで。」 思わず真顔で聞いてしまった。
「駄目。たっくんやらしい。」 腕絡めてまま言われると・・・。
思わず立ち尽くしそうになった俺とは逆に、スキップのような足取りの中居。
赤いダッフル着てたらもっと可愛いのにな。でも、今日は前に良く着ていたブランドを久しぶりに着ている。
やっぱり似合うよな。裏地のチェックが覗いてるのが可愛い。


車に乗ってからも中居の可愛らしさは抜群だった。
なんか、カバンをごそごそかき回してるな、と思ったら、
「あーん」 甘いキャラメルが口に入れられた。てゆーか、今、中居の指まで食っちゃったよ。
「指まで食べんなよ。腹減ってんの?」 からかうように見つめられても、どうしたらいいか困るから。
「おいちい?」 なんで赤ちゃん言葉なんだよ。
「え?う、うん、うまい。」
「ね、それでさ。どこ行くの?」 今度はガチャガチャとCDをいじくっている。
「どーこだ。」
「めし?」
「ぶー。」
「海?」
「もう夜だから。」
「山?」
「違うだろ!つーか、買い物行こうって言ったじゃん!」 頭をはたくと、黒いキャスケットがちょっとずれる。
思わず噴出した俺の目に目的地が見えてきた。
「残念でした。答えが出る前に着いちゃいました。」
「え?あそこ?何?」 何でも売ってる大型店を目にして、まだ答えが分からずにいる。
「着きました!行くぞ。」 中居は人ごみの多さにキャスケットを深く被りなおす。本気で顔が隠れるから凄い。
「迷子になるなよ。」 一声かけると、コートの袖をちょこんと掴んできた。ショーウィンドウに映る二人。ちょっと良すぎる光景。
カメラ回しといてくれればいいのに。
警戒してるのか、口を聞かなくなった中居。
「ばれたって、俺が守るから。」 この言葉はさすがに口にせずに飲み込んだ。


「着いたぞ。」 目的のフロアに着き、声を掛けると、ずっと目を伏せていたらしい中居の顔が上がる。
まずは、目がまん丸になる。口も大きく開き、そこから徐々に驚きの顔が笑顔になっていく。
輝くような笑顔、弾けるような笑顔って言うのはこういうののことを言うんだろう。
「ツリー。」 女の子顔負けの笑顔だ。
「プレゼント貰って喜ぶのが苦手」なんてとんだ嘘つきだな。
「いいよ、どれでも。」
「え?」
「好きなの買ってやるよ。」 顎で指し、かっこよく決めてみる。中居はまだ乙女の顔の最中だ。
「白いツリー。」
「どれにする?」 首に手を回し、後ろから抱きしめる。
「うーん。」 左右に揺れながら悩む中居。後ろから見てるのは勿体無いかも。
首に回した俺の手を掴んで、悩んでる中居って可愛すぎる。
「たっくん、どれがいい?」
「だって、ヒロ、白いツリーって言ってたじゃん。」
「うん。ね、大きいのでもいい?」 そんな風に見つめられて、駄目なんて言えるわけない。
「いいよ。」
「じゃ、これ!」 中居が指差したのはちょうど背丈ほどのツリー。
「よし!オーナメントは?」
「オーナー?メン?」
「オーナメント!飾りの事!」
「ああ!星だろ?リボン、キラキラ、りんご、サンタ・・・」 中居は次々と手にとっていく。
「ちょっとヒロちゃん!」
「ん?」
「多すぎるから!」
「駄目?」 だからそんな顔して首かしげて見つめるなって。
「や、いいけど、いいけど。」 がんばれ、俺!
「いくらツリー大きくてもそんなにいらないと思うぞ。」
「ふーん」 口尖らせて拗ねるなってば!
「一年に一種類ずつ増やしていくとか。」 我ながらいい提案。中居も気に入ったようで、それいいね、とパッと顔を上げた。
が、
「じゃあ、今年は・・・・・・。」
とまた悩みだした。
「やっぱ、リボンにしようかな・・・。でも、星・・・。」
しょうがないから手助けしてやる。
「てっぺんの星は特別だからOK!」
「じゃ、星とリボン!」
「よしっ!」
本当にこの光景、ビデオ回しとけばよかった。
なんて邪なことを考えている間、中居は無邪気に梱包されていく様子を見ている。
そんな目で見たら店員さんドキドキするからやめろよな。


「木村の車で来てて良かったな。俺のだったら入らない。」
上機嫌な中居を乗せて家路につく。


リビングで早速ガサガサと中から取り出している中居を尻目に、探し物を開始する。
どっかにしまったんだけどな。絶対あるはずなんだけど・・・。
「あった!」 見つけたそれを手にリビングに急ぐ。


「ひーろーちゃん!」
「ん?」 振り返り俺の姿を見ると、パリで見せた照れ笑いとは違う満面の笑みを見せてくれた。
「今から、クリスマスのお飾りをします。」 マヤヤ風にビデオカメラに向かって話しかけてくる。
「このツリーは、たっくんが買ってくれました。」
「いいサンタさんですね。」
「そうですね!」 「いいとも」風だ。
「ヒロちゃんは何をあげるんですか?」
「それは内緒です。」
カメラ越しの俺との会話が続いたが、ツリーが大きくなかなか扱いづらいと分かると
「交替!俺撮る人!木村飾る人!」 とパッとビデオを取り上げた。そして、
「たっくん!たっくん!手ぇ、振って!手、振りなさい!」 といつかの仕返しをしてくる。
しょうがなく、苦笑いしながら振り返すと、
「32歳でーす」 と続ける。
「はい、さっさとツリーを出して下さい。大きいから気をつけてください。」
「はいはい。」
「はいは1回。ちゃんと時々こっち見ろよ。背中しか映ってないぞ」 全く・・・。
「中居が動けばいいだろ。」
「やーだね。ほら、たっくん、こっち見て!」 可愛いけど、憎たらしい。
「じゃあ、今からリボンをつけて行きます。」 
「あ、俺、それやる。はい、木村、ビデオ。」 思わずあっけにとられる。小悪魔め。
「お前ね・・・」 そう言ってる俺の手に、ビデオを持たせると、自分はさっさとツリーの前に行く。
「どこにつけよっかな。」 悔しいけど、可愛くて、ビデオを回す。それが分かっていて可愛くしてるのだろうからムカツク。
それに気付いたのか、中居がパッと振り向いた。
「一緒にやろ。」 小さな頭がカクっと横に倒れ、大きな目が下から見上げる。


負けた。


ビデオを置き、そばに行く。
「はい」 と手渡されるリボンを次々とつけていく。
バランスよくつけると、大きな星が一つ中居の手に残った。
「つけて。」
「中居がつけなよ。」
「届かないから、木村つけて。」
「抱っこしてやろうか?」 からかいながら言うと、
「いいですぅ。結構ですぅ。」 と口を尖らせながら言ったりするから、面白くなって、ひょいと抱き上げた。
「うわ、何、や。」
「さっさとつけろ。」 ジタバタしていたものの、最終的には手を伸ばし、丁寧に星をつけた。
「できたよ。」 甘えた口調で伝える。俺に抱かれた体勢で言ってるってわかってんのかな?


結局、中居はその日、ずっと可愛いままで、今日がクリスマスならいいのに、と思うほどだった。
買い物途中の中居が撮れてないのは、本当に惜しいけれど、切ってから置いたはずのビデオのスイッチが
きれてなかったおかげで、2人でつけてる映像も、中居が抱えあげられてる映像もちゃんと映っていた。
これが、一番のクリスマスプレゼントかもしれないと思うけど、中居からもしっかり貰うために言わないで置こう。


まだクリスマスには少し早い日。当日はもっといい一日にしよう。


                                                     






2004.12.29UP
クリスマス過ぎてからUPする私をお許しください。
でも、今日雪降ってるし・・・。
とにかくバカップルをと思って、書きました。
一応「うたばん」での白いツリーが欲しい発言を受けて。

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SMAPファンに55のお題
thanks to「Wish Garden」植木屋様
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