「う〜ん。」 「んっく。」 ガタ ごそごそ 「はぁ〜 。」 狭い座席で眠れないのだろう。何度も寝返りをうつ音に交ざって、しまいには溜息が聞こえて来た。 「ん゛〜っ。」 「眠れないのか?」 そっとその頬に触れる。少し熱を帯びた顔がけだるげに見つめてくる。 「暑い?寒い?なんか飲み物貰うか?」 「もう!慎吾のいびきがうるさいよ。 」 「まあな。」 「なんか乾燥してるし、体はベタベタしてるし。 」 一人でじっと耐えていたのが吹出したのだろう、次々と文句が出てくる。 「大体、僕こういうの苦手なんだよ!!」 子供みたいに我が儘を言うのが可笑しくて、膨らんだ頬を突いてみる。 じっと見上げる恨めしげな目に「ごめん」と手を軽く挙げる。 「ハーブティー位あるんじゃない?」 「だってマネージャーさん起こすの悪いもん。」 黒目がちの瞳が揺れる。 「 キャラメルならあるぞ。 」 子供騙しだとは思いつつ、つってみる。 「いる?」 「うん、じゃあ貰う。」 取ろうとして身を起こし、右腕に捕まる重さに気付く。 「う〜ん。」 顔をしかめる猫を起こさないように気をつけ、左隣の猫に小さな包みを渡す。 「だいたいさ…暑苦しいんだよ。あの二人もさ… 。」 右手で弄び、食べようとしないでぶつぶつ言う姿に気付いた。 (成る程ね) 「あ〜ん。」 包みを取り上げ、口に入れる。 「え?」 「お前、やきもち?」 「何が?」 「いや。」 血統書付きの猫の機嫌が更に悪くなりそうになって慌てる。 「手、繋いでてやるから寝な。」 バラバラに座る余裕があるバスの中、前の席では、慎吾と剛がお互いに抱き着く ようにして、眠っている。そして、俺の右腕には中居が絡み付いている。 一人で座って眠れない夜を過ごす中、何か思う事があっても、それを「我が儘」 の一言では片付けられないだろう。 「 いいよ。」 とそっぽを向く手を捕まえる。 迷っていたその手が、怖ず怖ずと握り返して来た。 少し落ち着いた頃、右隣からくぐもった声が聞こえて来た。 「いいよ。あっち行ってやれば。」 「こんなんだったら、1番後ろに五人、横並びで座ればよかったな」 「てゆーか、吾郎の寝顔可愛い♪」 中居が身を乗り出して眺めている。 「久しぶりに見た。」 嬉しそうな顔で手を伸ばしていた中居は立ち上がると 「俺が向こうに行く。」 と吾郎の横に納まり、その左手を取った。 「両手に花だな。 」 満足げに頷くと 「拓哉も手放すなよ」と指示し、早速身を丸くした。 二匹の猫の寝顔をひとしきり拝み、眠りの世界へと旅立った。 「吾郎ちゃん、ずるい〜!!」 翌朝の目覚まし時計は慎吾の声で、そんな慎吾のカメラには三人仲良く手を繋いで眠る姿が納められていた。 |
2005.8.29 UP
どうやら真相はこういう事ではないらしいですが、
第一報を聞いたときに思いついたお話です。
自分としては結構お気に入りの作品になりました。
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SMAPファンに55のお題
thanks to「Wish Garden」植木屋様
http://www.geocities.jp/wish_garden_new/odai/00.htm
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