under the sunshine


その日SMAPを連れてやってきたのは、都内某所の高級ホテルだった。
「ホテルの中で撮るんだ。」
宣伝するものが分かっているがゆえに、中居さんが不思議がったが、向かう先は、ロビーを越えたその先。
「すげー。気持ちいい!」
前方から香取さんの歓声が聞こえている。
「日に焼けそうだけど、爽やかでいいね。」
「そうだね。」
こちらは稲垣さんと草なぎさん。
「中居も早く来いよ。」
と呼ばれ、中居さんは足を踏み出し、その大きな目を細めた。

さんさんと日光が降り注ぐプール。
そこが今回の撮影場所だった。
掃除が行き届き、白いタイルに空をうつした青い水が映える。
ようやく眩しそうにしていた中居さんの眼が慣れた頃、
「衣装替えお願いします!」
スタッフの声が響いた。
早くも足を浸していた4人も立ち上がる。
「ほら、中居、気持ちいいぞ。」
そう言って中居さんの頬を挟んだ木村さんの手は水で冷やされ、心地よいのだろう。
どこか、テンションを上げるタイミングを失っていたように思えた中居さんは、それをきっかけに笑顔を見せ、
「早く着替えようぜ!」
と声を掛けた。
立ち尽くす中居さんの様子が気がかりだったので安心した。
これが噂の2人のコンビネーションか、と思ってみたりもした。

5人がいったん室内へと戻ると、海外のリゾート地のように見えていた場所も、
ただのホテルのプールへと戻ってしまった。
時計を見ながら準備を進める。
5人が出てきたのは、目で見なくても、耳で聞かなくてもすぐに分かった。
照明が付いたのかと一瞬思ったほどのオーラだった。
イメージにあった服に着替えメンバーは更に楽しそうにしているが、やはり中居さんだけ少し沈んでる。
気になって様子を伺っていると、少し拗ねたような声が聞こえてきた。

「なんか、俺・・・。」
「なに?」
「俺、この恰好やだ。」
「なんで?」
不満そうなのは木村さん。
「可愛いよ、中居君。」
禁句を言ってしまったのは草なぎさんで、
「あーあ。」
と稲垣さんが声には出さずに顔をしかめた。
「水平さんみたいでいいよ。」
木村さんがフォローにならないフォローをし、ますます凹んだ中居さんの恰好は、
黒のカプリパンツに、黒白のボーダーのタンクトップ。頭の上にはキャスケット。
膝丈できゅっと絞られているパンツは可愛らしいし、タンクトップにはイカリのマーク。
黒地のキャスケットには白のラインが入っていて、確かに衣装さんは水兵さんをイメージしたに違いない。

「まあ、マリンルックというよりは水平さんみたいかもね。」
更に中居さんをどん底に押しやった稲垣さんは、黒の細身のパンツに合わせた白のサマーニットが爽やかだ。

「吾郎ちゃん、暑くないの?」
という香取さんは。左肩部分を外した白のオーバーオールに黄色のタンクトップ。
「お前の方が暑そう。」
と稲垣さんは黄色のタンクトップに顔をしかめた。

「吾郎は、絶対着ない色だもんな。」
そういった木村さんは、
「あ、上2人お揃いっぽくない?」
と香取さん言われ、表情を緩めた。
白いパンツに、広めに開いた肩の部分に金のボタンが3つ付いたボーダーのTシャツという木村さんの衣装は
確かに中居さんと同じ「水平さん」のようで可愛らしかった。
「木村君が白いパンツってなんか珍しい気がする。」
「あんまりない雰囲気だよね。」
「みんな、なんかちょっといつもと違っていいんじゃない?」
稲垣さんの言葉にみんなが納得しそうになったとき、
「剛、お前あんま変わんないな。」
すっかり静かになってしまっていた中居さんがやっと口を開いた。

「そうだね。でもこのジーンズ、いいやつだよ。」
草なぎさんは衣装のジーンズが気に入ったらしい。上には真っ青な空が描かれた白いTシャツを着ている。
「剛が着てるTシャツの空よりもいい空だな。」
木村さんの言葉に5人全員が空を見上げた。
そろそろ、撮影の開始だ。

「これから撮影始めますんで、よろしくお願いします!」
「「「「「お願いしまーす」」」」」
5人が揃っていい顔になってきたので、挨拶もそこそこに撮影に入ることにした。

「あ、旨そう。」
スタッフが持ってきた食べ物に、香取さんがすばやく反応する。
「プールの脇に食事、飲み物、椅子など並べますので、適宜動いていただければ結構です。
で、随所で今回宣伝していただくこの炭酸飲料を飲んでください。
カメラ寄るので、その時だけでもいいですし、カメラが来てなくても飲んでもらえれば、きちっと押さえますので。」
真剣な5対の視線が注がれる。
「あと、別撮りでも撮りますが、乾杯してるシーンが撮りたいんです。」
「ペットボトルなのに?」
最初に質問してきたのは稲垣さん。らしい発言だ。
「それは5人で?それとも分けるの?」
落ち着いた声は中居さん。
「ペットボトルでしていただきます。なので、盛り上がってる感じを出してください。
人数は5人での1ショットは確定ですが、後は自由にやってもらって結構です。」
「分かりました。他には?」
「あとは、SMAPらしくしてもらえればこっちで自由に撮りますので。」
「分かりました。」
代表して答えた中居さんの言葉に4人が頷いた。
「じゃあ、回します。」
声を掛けると、てんでばらばらに5人が動き出した。

いち早くバーベキューセットの元へと駆け寄ったのは香取さん。
「焼けちゃうよ。」
とパラソルの中に避難したのは稲垣さん。
早速ペットボトルを手に取り、カメラに笑顔を向けたのは中居さんで、木村さんは、
「吾郎、せっかくなのに勿体無いって!」
と稲垣さんを日差しの下へと引っ張り出そうとしている。
「つよぽーん。」
と呼ばれた草なぎさんは香取さんの元へと寄っていく。
ペットボトルを持った中居さんはそのままプールに足を浸し、水と戯れている。
足をバタつかせるたびに水と光が飛び散りキラキラと輝く。
「中居。」
声を掛けられ振り向いた中居さんの頬に冷えたペットボトルがくっつけられる。
「ちべっ!」
声にならない声が一瞬聞こえたが、すぐにはじける笑顔に変わって
「かんぱ〜い!」
まず1枚目の絵が撮れた。

「なんか食おうぜ。」
木村さんが手を引っ張り立ち上がらせる。
「焼きそば♪」
その肩に手を掛けながら中居さんが答える。
テーブルの周りに5人が集合した。
「何が旨いの?」
「このテリーヌ、なかなか美味しいよ。」
「やだ、そんなん。」
一言で稲垣さんを切り捨てる。
「ま、中居君には勿体無いかもね。」
さりげなく言い返す稲垣さんに少し驚いた。
「中居君はこれでしょ?焼きそば。」
香取さんに言い当てられ。中居さんは面白くなさそうに口を尖らせた。
「なんだよ!見当違いな物言ったら怒るくせに!」
「でも、なんかやだ!」
「ほら、中居、えび。」
今度は木村さんがバーベキューコーナーから海老を持ってきて機嫌をとる。
「うん、いる。」
中居さんが手に取った所で、
「「「「「「かんぱ〜い!」」」」」
5本のペットボトルが重なり合った。

「あれも旨そう、これも旨そう。」
と飛ぶ回る香取さんを尻目に、稲垣さんは
「立ったままってちょっとね。」
と椅子に座る。
「これ、美味しいよ。」
と差し出され一緒になって飛び回っているのは中居さんで、草なぎさんは稲垣さんと喋りに行く。
木村さんはさっき中居さんがいた場所で足をプールに浸している。
「気持ちいい〜!」
と、そのまま寝そべった木村さんは太陽のまぶしさに目を細め、
「駄目だ。サングラス。」
とスタッフの元へと寄っていった。
「今日はサングラスはナシでお願いします。」
スタッフの声が聞こえてくる。

中居さんと香取さんは乾杯を繰り返し、
「じゃ、僕らもしようか。」
と稲垣さんと草なぎさんも少し照れながらペットボトルを重ねた。

プールのそばでは、
「入ってもいい?」
と香取さんが片足を突っ込み、中居さんに突き落とされそうになって慌てている。
「ちょっと!やめてよ!ひどいよ、この人!今、見た?」
抗議する香取さんは、
「今日は中には入らないで下さい。」
と言うスタッフの声に、
「ほら、リーダー、聞いた?」
と詰め寄る。
「ちげーよ。お前が怒られてんだよ。」
と余裕の表情の中居さんに対し、香取さんは
「違うよね?中居君に言ったんだよね?」
と必死にスタッフに聞いている。やはりいくつになっても「弟」と言った所だろうか。
そんな中居さんは、、
「中居君、乾杯。」
と突然稲垣さんに振られて慌てている。
「なんだよ!いきなりくんなよ!」
「いいじゃない、別に。」
「てゆーか、本当に入っちゃ駄目なの?気持ちよさそうなのに。」
残念そうなのは木村さんで、草なぎさんは今、食べる事に夢中になっている。
そこに駆け寄ろうとする香取さんを見て
「「食べ過ぎだって!」」
と中居さんと木村さんから同時に声が飛ぶ。
「僕ももう少し食べよう。」
稲垣さんが二人に加わって下3人での乾杯となった。

中居さんはパラソルの中に移動し、ビーチチェアに寝そべった。
「うう〜っ!」
気持ちよさそうに伸びをすると、
「やばい!マジ寝そう!仕事中に寝るなんてありえない!」
と騒ぎ出した。
「寝たら確実に撮られて流されるな。」
木村さんがそうからかう。
「やだ!それは嫌だ。ありえない!」
中居さんはますます騒ぎ、なんとか目を覚まそうと自分で自分をつねり、
「いった〜!」
などと叫んでいる。
「確かに中居の寝顔がCMで流れるのは嫌だな。」
と横で呟く声が聞こえ、
「もし、撮ったら僕たちにだけ見せてね。」
と、いつからいたのか稲垣さんがそれに合わせる。
中居さんは相変わらず騒いでいて、香取さんと草なぎさんも
「どうしたの?」
と集まってくる。
「中居が寝そうなんだって。」
「寝ちゃえば?」
「じゃ、みんなで寝ようよ。ほら、椅子5つある。」
「やだよ。」
「遊び疲れて眠るSMAPって言うのもありかもよ。」
「寝顔は見せたくないの!曲ないの?曲。」
中居さんが提案してきた。
「CMで流れる曲があんだろ?それに合わせて踊ったり動いたりっていいんじゃない?」
それが別撮りで撮ろうとしていたものと同じだったので、相変わらずの鋭さに感心しながら、喜んで曲をかけた。
「この暑い中踊るの?」
閉口したのは稲垣さんと香取さん。
「別にきっちり踊らなくてもいいんでしょ?」
「はい。そのverはまた別の日を用意してますんで。」
「ほら、テキトーでいいんだよ。」
中居さんと木村さんは既に曲にノッテいて、草なぎさんはその二人とパラソルの中の二人を見比べ困っている。
「吾郎さん、慎吾。」
少し困った声で呼ぶと、二人も諦めて出てきた。
いつの間にか、ただのおしくらまんじゅうになっていたけど、また数日後かっこよく踊ってもらうことになるから、
別に構わなかった。
「暑い、暑い。」
と言いながら、押し合いへしあい冷えたペットボトルを手にして飲むといういいカットも撮れた。

楽しそうに遊ぶ5人を見ながら、
「OKです。」
の声を掛けるのが勿体無くて、結局時間が許す限りカメラを回してしまった。
そして、最終的には疲れて眠る中居さんの顔も押さえられたが、これはやはりCMで使うのはためらわれた。
勿論、それを眺める4人お顔もお蔵入りだ。

出来上がった作品を見て、
「はじけすぎてない?俺たちよりもさ・・・。」
と後輩の名を上げたり、
「あの頃みたいじゃない?」
と昔の番組名を出されたり、メンバーからは苦情じみた声も聞かれたが、結局は
「可愛くていい」
という多くの視聴者の声をもらえ、売れ行きも上々だった。

中居さんがTV用に見せてくれた笑顔を1個も使わなかったことが少し勿体無いような気もするが、
メンバーに向けられた飛び切りの笑顔には到底適わなかったから仕方がない。
木村さんがかっこよく歌を口ずさんでいる横顔も素晴らしかったが、子どものように手足を大きく動かしながら
歌っている姿を選んだ。
パラソルの中から光る水面を見てまぶしそうに目を細める稲垣さんもかっこよかった。でも、結局、大きな肉を
口いっぱいに頬張る香取さんを優しく見守るところを使った。
スタッフに気遣い、優しく微笑む草なぎさんの顔も使いたかったが、音楽に合わせて体を動かしているうちに
飛び出したジャンプ姿―中居さんに「ご機嫌だな」と言わせた姿―がCMで流れた。
香取さんがかっこよく決めたポーズも使おうか迷ったが、最終的には「おいしい〜」とリアクションを求められ、
作った顔とそれに噴出すメンバーの顔にした。

かっこよく踊るverとのギャップもよかったらしく、いい作品となったことを誇りに思う。
夏の間しか流れない事が惜しいが、その分いっぱい流してもらうことにしよう。





2005.5.20UP
thanks to Maiko
爽やか過ぎるほど爽やかなCMが見たいという
友達の意見から出来たお話です。
実際の中居さんに仕事中に寝るなんてことは
天地がひっくり返ってもないでしょうが、
聖奈の想像と言うことでお許しください。
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SMAPファンに55のお題
thanks to「Wish Garden」植木屋様
http://www.geocities.jp/wish_garden_new/odai/00.htm
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