5人で歩いていると、誰か一人が遅れるときがある。
たとえばそれは、靴紐が解けたり、忘れ物をしたり。
そんな時、中居くんは決まって声をかける。
たとえばそれは、慎吾なら「置いてくぞ!」と、前を向いたまま一言。
たとえばそれは、剛なら「慌てなくていいからな。」と、様子を確認して一言。
たとえばそれは、木村君なら「先、行ってる。」と、目を見て一言。
たとえばそれは、僕なら。僕ならなんていわれるんだろう。
そんなことを考えていたら、無意識に足が止まっていたらしい。
「吾郎?どうした?」と前方から声が聞こえてきた。
あ、なんて言うかな?声の主に注目していたら、
「ほら、来いよ。」と自分の隣に空間を空けながら一言。
その後、中居くんは、ちゃんと追いついたか確認している。
たとえばそれは、慎吾なら横目でチラッと見て。
たとえばそれは、剛なら「来た?」って誰かに聞いて。
たとえばそれは、木村君なら目と目をあわせて。
たとえばそれは、僕なら。
ちゃんと、自分の隣に来るまで見ていてくれた。
人によって随分違うな。そんなことを考えていたら、無意識に口に出していたらしい。
「そりゃそうだろ」横から声が聞こえてきた。
「慎吾に慌てなくていいなんていったら、いつまででもゆっくりしてそうだし、
剛に先行ってるなんて言ったら、すっげー不安そうな顔しそうだし、
吾郎に置いてくぞなんていったら、やらなきゃいけないことやらないままで走ってきそうだし。
木村なら、来るまで待ってなくても平気だろうし。」
「ま、一応リーダーだからな。それくらい使い分けてるっつーの。」
そう言って、中居くんは笑った。
でも、それぞれ不満はあるようで、
たとえばそれは、慎吾なら「俺も、優しく言われたい」
たとえばそれは、剛なら「俺、そんな不安そうな顔しないし」
たとえばそれは、木村君なら「俺もたまには待ってて欲しいんだけど」
たとえばそれは、僕なら「もうちょっと信用してよね」
そんな不満を聞いても、リーダーは
「それぞれ日ごろの努力が必要だな」
と笑うばかりで、取り合ってくれなかった。
「あ、そろそろ着くぞ。」
5人で堂々と歩く事なんて、めったに無くて。めったにどころか、ありえなくて、だから、リーダーは嬉しそうに
「ほら」
と指差すけれど、みんななんとなく気分が盛り上がらなかった。
「遠回りしようぜ」
と言い出したのは木村君で、
「いいね」
と即答で乗ったのは慎吾。
「時間はどう?」
とやっぱり不安顔になってるのは剛で、
僕は、
「たまにはいいんじゃない?」
って賛成した。
「何言ってんだよ」
とリーダーはすでに目的地への一本道に入っていた。
僕らは別の道に足を進めていて、1対4の構図に、中居くんは少し困った顔をした。
その後、諦めた顔になったのを見逃さずに、僕らは一斉に呼んだ。
「「「「中居(くん)、早く!」」」」」
中居くんは一気に笑顔になって、僕の肩を叩きながら横を走り抜けて行った。
「ほら、吾郎。来いよ。」
少し先で立ち止まって、同じ言葉を僕にかける。
待っている笑顔に向けて僕も足を踏み出した。
2005.12.8 UP
殿下お誕生日企画 二本立てです。
前から思っていた事をお話にしてみました。
同じ状況でも、当然メンバーによってかける声が違うんだろうな、って。
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SMAPファンに55のお題
thanks to「Wish Garden」植木屋様
http://www.geocities.jp/wish_garden_new/odai/00.htm
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