今年の冬は暖冬だなんて、誰が言ったんだ。
昼間、首を竦めて通りを歩いた人達が、身を小さく丸めて眠る夜。
昼間の寒さを知らない男は殊更夜の冷え込みに震えていた。
右側を下にして感じる寒さは寝返りを打ってみても変わらない。
温かい場所に行こうかとも思うが、たった30秒の移動さえ勇気がいる。

思い悩む事、5分。寝付けない自分に気合いを入れる。

「よしっ!」




代謝がいいのか、冬でも冷え性とは無縁の男はベッドに入る事30分。
既に熟睡していた。
が、いきなり素足に当たった氷の塊にさすがに目を覚ました。

「うわっ!」

自分に何が起こったのか確かめようと寝ぼけ眼をこすると、目に入ったのは茶色
の小さなぬいぐるみ。が、触ってみると堅かった。

「中居〜」

恨みったらしい声は安眠を妨害されたのだから仕方ない。

「あ〜。あったかい」
幸せそうな声は、一気に眠りの世界の入口に立ったらしい。

「さみぃんだもん。いいじゃん、ベッド広いんだし。それじゃあ、お休み。」

そういうと猫のぬいぐるみは身を丸くして眠りについた。

ふとももに手を挟んで眠る小さな体を包み込み、遅れてたまるか、と木村も夢の
世界へ旅立った。

抱き抱えたまま寝たら、幸せな夢が見れるかな。