**ここから先、暗い話になっています。彼らの死について触れています。
  当然、聖奈の想像の産物で、実際する彼らとは全く関係がありません。
  不快を感じられる方もいらっしゃると思いますので、注意して先にお進みください。
  読後感の責任は取れませんので、ご了承ください。** 























傷付きたくなかったから。
傷付けられる前に傷つけた。
そしたら、僕の周りは傷付けられた人ばかりになって、
もう誰も傷付くのを見たくなくて
だから、自分で自分を傷付けた。
傷付ける前に、自分を傷付けた。
僕が自分で傷を付ければ、もう誰も傷付かずに済むから。





そんな行為にもいつしか慣れ、痛みも感じなくなった。
そして、僕は自分を傷付け続けた。
人に傷付けられるより、ずっと楽だった。
ずっと、ずっと楽だった。
もう今では何も感じない。
もう誰も傷付けずに済む。
もう誰からも傷付けられずに済む。
だから僕は今日もナイフを持つ。
体に、心にそれを付きつけ、仮面を被り傷を隠す。
血も涙ももう出ない。
もう、何も感じない。







「やめろってば!」
振り向いた顔に力はなかった。
握ったナイフも簡単に手から滑り落ちる。
輝いていたオーラがいつしか歪み始めた事に気付いていた。

「返して。」
差し出された手に傷があった。
「嫌だ。」
「返してよ!」
「嫌だ!」
「返して!!」
掴みかかってきた手の意外な強さに驚く。
「嫌だ!お前が傷付いている所なんてもう見たくない!」
「傷付いてなんかいない!!」
「じゃあ、その血は?その涙は?それは何なんだよ。しっかりしろよ!」
「しっかりしてるさ。」
冷静すぎる声が怖かった。
「もう誰も傷付けたくない。傷付けられたくない。その為に、仕方ないだろ?」
何が「仕方ない」だ。この状況にまるでふさわしくない言葉に冷静さを取り戻す。
「もう誰もお前のことを傷付けたりしない。」
「いいんだ。僕はこれでいい。」

自分の名前を呼ぶ声に完璧な笑顔で応える。
気付けば仮面を身に纏い、輝くオーラと共に部屋を出て行った。
掴もうと伸ばした手をすり抜けて、僕の元を離れていった。

壊れつつあるその姿に、誰も気付こうとしなかった。
差し伸べては払い除けられる手をどうすればいいか分からなかった。
もう誰も傷つけないことを、みんなが守ろうとしていることを、伝える術がなかった。

そして、僕は一人残された。





君は結局最後まで人を傷付けたね。
傷付けたくないと思うばかりに、かえって人を傷付けたね。
君を守れなかった僕は、
君に頼ってもらえなかった僕は、
これからどうやって生きればいい?
横に君がいないのに、どうやって前に進んでいけばいい?
君以外誰も好きになれない僕は、これからどうやって人を愛すればいい?
この償いをどうやってして貰おう。
思いつくままに列挙し、僕は微笑みながら君の後を追う。
君の血が僕と混ざる。
これでやっと一緒になれるね。
もう誰にも邪魔されない。
君は嫌がるかもしれないけど、僕は君を独り占めしよう。



そして僕は君を想う














2006.11.15UP
何故かたまに凄く暗い話が書きたくなります。
別に自分の精神状態がなんかとかそういうわけではありません。
いたって元気なのに、とめどなく暗い話を書きたくなります。
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SMAPファンに55のお題
thanks to「Wish Garden」植木屋様
http://www.geocities.jp/wish_garden_new/odai/00.htm
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