「4月からドラマ決まったんだ。」 楽屋の中に2人残されてそろそろ30分。手持ちの資料から目を離さない中居に声を掛ける。
「ふーん。何役?」 中居は興味なさそうに下を向いたまま。その様子に腹が立ったわけではないけど、少し罠を仕掛けてみる。
「レーサー役。」 中居がはっとしたように顔を上げる。ほら、ひっかかった。
「ふーん。」 そんな顔しときながら、平気な声を出したって無駄だよ。取り繕ったってムダ。
「バイク。」 中居の耳が一言も漏らすまいと集中している様子を確かめる。
「じゃなくて車だけど。」
「ふーん。」 心臓バクバクしてるに違いないのに平気な顔をするのが気に入らなかった。
「今年の誕生日どうする?」
「・・・・・・。」
「中居っていつもそうだよな。」
「何がだよ。」 自分の非難する声に、やっと表情を変えた。
「会いたい、会いたいって言ってるくせに、実際に会える日が近づくと怖気づくんだもん。」
「んな事!」
「無いって言えんのか?じゃ、今年は中居仕切ってよ。自分で連絡してさ。」
「・・・・・・。」 唇を噛みしめる中居にため息をつく。
「少しは信じれば?」
「・・・・・・。」 目だけで先を促される。
「森が待ってないわけないじゃん。」
「あいつにだって色々あるだろ。」
「色々あって忙しい中居だって会おうとしてんじゃん。俺たちってそんな?そんなすぐ切れちゃう仲?辞めたらおしまい?」
「・・・・・・。」
「なぁ?んなわけねーだろ?」
「もう9年だよ。もう9年たつんだよ。」
「この間あったのいつだよ。」
「え?」
「この間、6人で、会ったのいつだよ。」 一言一言区切って言う。少しでも中居の胸に響きますようにと願いながら。
「・・・・・・。」
「9月9日だろ?あん時、何も変わってなかったじゃん!俺ら6人昔のままだったじゃん!いい加減、自分にも自分らの友情にも
 自信持てよ!悔しくなるよ、そう言うの見てると。森が可哀相。」
「・・・・・・。」
「みんな、2月19日空けてんだからな。ちゃんと連絡取れよ。」

冷たく言い残して部屋を出た。いつも助けるのばかりが愛情ではない。
傷つけたいわけではなかった。ただ、背中を押してやりたかった。
もっと、自分も周りも信じて欲しかった。
でも、どこかで将来の自分達を見ていたのかもしれない。
SMAPという鎖が切れたとき、もう一緒にいられなさそうで、それが怖かったのかもしれない。
 
俺の想いが伝わったのかどうかはわからないが、一週間後の同じ楽屋、中居が近づいてくる。

「連絡したから。」 少しふてくされた口調だ。
「2月19日、予定入れんなよ!」
「分かった。」 そういいながら、油断している中居に手を伸ばす。
「よくできました!」 どうせキャップで隠れて見えなくなる髪だ。思い切ってぐちゃぐちゃにする。そうすることで自分達が浄化されるのを
知っている。

2月19日は晴れていた。
待ち合わせの場所へと向かう中居は、助手席で少女のような顔をしていた。
期待と不安の入り混じった少し紅潮した顔。
でも、それは他の4人も同じかもしれない。
家を出た兄弟が久々に帰ってくる。昔の仲間との再会。大切な人との大切な時間。

「森君、元気かな?楽しみ〜!」 素直に感情を表すのは慎吾。
「森君、すぐ怒るからな。」 どこか緊張しているのは剛。
「彼も31か。」 ポーズを決め、外を眺める吾郎はそうすることで自分を落ち着けているのだろう。
助手席が気になる俺は、ただ興奮していた。6人で集まる事の楽しさは十分知ってる。

「あ、いた!」 指定の場所で待つ姿をいち早く見つけたのは慎吾だった。窓を閉め切っているのに、その声が届くかのように大きな声
で名前を呼ぶ。
「相変わらず、足、長いね。」 と感心するのは剛で
「慎吾、うるさいよ。呼んだって聞こえないよ。」 と言いつつ、一生懸命手を振っているのは吾郎。
少し幼い笑顔を浮かべた中居に安心して俺は車を寄せた。
「一斉に出るなよ。」 普段なら中居が言うようなことを後ろに向かっていい、
「ほら。」 と助手席を促す。
スモークガラスのバンに気付いた森は、昔と変わらない笑顔を向けた。
「森、乗って。」 中居が声を掛けるのと同時に吾郎がドアを開ける。
「みんな、久しぶり!元気?」 そう言いながら森が乗り込むと、車内は見事に年順の並びとなった。

「森君、お誕生日おめでとう!」 吾郎が言いなれた風にさらりと言うのに、
「吾郎、お前フライング!」 と中居が噛み付く。
「そうだよ!後で、みんなで言うんでしょ?」 と慎吾もそれに乗るが
「お祝いの気持ちなんて言いたくなった時に言えばいいんだよ。」 と吾郎は取り合わない。
「「なんか、それムカツク〜!」」 2人同時にそう叫ぶと、手まで同時に伸ばした。勿論狙うのは弱点の髪の毛だ。
「ちょっと、やめてよ〜。」 さっきまでのキザな姿が一変する。
「もう、森君、この人たちになんか言ってよ。」 助けを求められた同級生は
「てゆーか、剛!お前も参加しろよ。」 と矛先を変える。
「え?いきなり怒らないでよ。」 と剛は閉口しつつも、どこか嬉しそうだった。それを見逃さないのは中居で、
「やっぱりお前Mだな。」と攻める。
「ちょっと待ってよ。今日は森君の会でしょ?」 と焦る剛に救いの手を差し伸べるのは、親友慎吾ではなく、同じ中間管理職の吾郎だっ
た。
「森君はSだったよね。」 

昼間っからそんな話かよ〜!と突っ込みたくなるが、盛り上がっているので止めておく。
5人の会話を聞きながら車進めるのは快適だった。
そのうち、声が一つ減ったと思ったら、口の中にガムが押し込まれた。
「悪い。一人で運転させて。」 中居のそんな様子が可愛くて、その頭に手を伸ばした。
「気にしてないって。いいから話してな。」 そう言うと、中居は笑顔で、話の輪へと戻っていった。

買い物をしてから慎吾の家でパーティーをするという今日の予定の中では最大の難関が近づく。

「中居、そろそろだけど、誰が降りる?」
さすがに6人で買出しに行くわけには行かない。
「お前と森で行ってくれば?」
主賓の森に買出しに行かせるのはおかしかったが、それが一番だと思った。
いつから聞いていたのか、吾郎、剛、慎吾もそれに賛同し、中居が、
「じゃ、森、行こ。」 といった事で決まった。

「何買えばいい?」 と言う森の声に、それぞれ勝手なものをあげる姿はいつになっても変わらない。
苦笑する森に、
「野菜もちゃんと買って来いよ。」 と伝える。
「分かった。とりあえず、中居ちゃんが変なもばっかり買わないように注意するよ。」 森のこの言葉に中居は口を尖らせる。
「頼むわ。」
「頼むね。」
「頼んだよ。」
「リーダーを宜しく。」
それに5人が続いたものだから頬まで膨らませていたが、それはすぐ弾ける笑顔に変わった。


車内から2人の様子を伺う。一緒にいるのが嬉しくてたまらない。中居の顔は素直にそう言っていた。
いつも見せ付けられている背中を、森には一切見せようとせずに、手でも取って歩きそうなほどだ。
地に足が着かない、というのはこういう事かと思ってみたりした。

「羨ましい?」 吾郎が後から声を掛けてくる。
「まさか。」 必死に隣に寄り添う姿がいじらしくて、そして実は少しかわいそうだと思っていた。
「やっぱ中居はいまだに寂しいのかもしれないな。」 口を付いて出た言葉を3人に聞かれた。
「僕たちがいるのにね。」 剛は少し寂しそうに答えたが、吾郎は冷静な意見を出してきた。
「でも、それってみんなそうでしょ?今に満足してないなんて事はないけど、森君がいたらと思う時だってあるじゃない。」
「森君のことも、6人だったSMAPのことも大好きなんだから当然だよ!僕も後で森君に甘えちゃおう!中居君が独り占めなんてずるい
もん!」
「じゃあ、僕も!」 後が騒がしくなって車内のムードも一気に変わった。
「木村君はさ、中居君のことばっかり心配しすぎなんだよ。きっと君自身だって森君としたい事や、話したいことがいっぱいあるでしょ?
」 こういう時、もっともな事を言って来るのが吾郎らしい。
「今日は森君の取りあいだね。」 静かに盛り上がっているところもらしかった。

そうこういっているうちにでこぼこコンビが戻ってくる。
「海老パン作ってもらうんだ〜」 と自慢げな中居の言葉に
「「「じゃあ、俺は〜」」」 と3つの声が重なる。
「俺はね〜」 自分の声もそこに重ねた。
「駄目だよ。俺が最初に約束したんだから!」
「そんなんずるいよ!さっきから中居君ばっか一緒にいるじゃん!」
「じゃんけんしよう!じゃんけん!」
「年齢順だろ!」
「また、そうやって年上ぶる〜!」
「僕ら、同級生だもんね、森君。」
「そんなん関係ねえよ。」
「ちょっと、森君。」

五方向から騒ぎ立てられ、最初は面白がっていた森も、メンバーだった頃の勘が戻ってきたらしい。

「うるさい!うるさい!俺、お客様なんだからみんなが作ってよね。」
「だって、森君のが食べたいじゃん。」
「何甘えてんだよ、剛。」
「え?また僕?」

低レベルな争いは、家についても、料理を始めても終わらなかったが、6人で小突きあいながら料理を作ったりする。
そんな時間が一番楽しかった。

「あ、木村君が餌付けしてる!」
「ずるい!中居君、森君からも貰ってたでしょ!」
「餌付けってなんだよ!」
「どうして中居くんばっかり特別なの?」
「やっぱり可愛いと得だよね。」
「可愛いって言うな!」


パーティーとは名ばかりの会になったが、一緒にいる、ただそれだけでよかった。 


そこに5人がいてくれれば、そこに6人でいられれば、ただそれだけでよかった。








2005.3.15 UP
HAPPY BIRTHDAY TO KATSUYUKI
危うく1ヶ月遅れになるところでした、
森君のお誕生日記念です。
6人だった過去があり、5人でいる今がある。
それはいつまで経っても変わらない事実。
そのことを6人もファンも大事にしていければいいと思います。

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SMAPファンに55のお題
thanks to「Wish Garden」植木屋様
http://www.geocities.jp/wish_garden_new/odai/00.htm
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