長すぎた春



テレビで中居が話していた。自分は騙されやすいんじゃないかと。その見極めができないと。

「お前、誰にそんなに騙されてるんだよ。」
俺の問い掛けに中居は即答した。
「木村」
それが嘘か本当か俺には見抜けなかった。

「何焦ってんだよ。」
固まってる俺を横目で見ると中居は意地悪そうに笑った。
「思い当たる節があるんだな。」
「ちげーよ」
思いの外、力無い声が出て、驚いた。
「ほら、あるんじゃん」
ケラケラと笑う中居が笑いにしていいのだと伝えていた。
「ちげーよ!そんな事言ったら、中居だって騙してるじゃん!」
「いつ?俺がいつ騙したよ!」
「ほら、そうやって可愛い顔する!性格は可愛くないのに」
「なんだよ、それ」




それ以上、会話が続かず黙ってしまった。




「本気にすんなよな」
「別にしてねえし」
「ふーん、ならいいけど。」
「なんだよ」
「木村、俺に悪いとでも思ってるんだろ」
「……」
「俺の事、裏切ったとか思ってるんじゃないの?」


何も言えなかった。
言い返さない事で俺の気持ちが中居に伝わってしまう事が分かっていたのに。
気付かれずにいたかったのに。


「哀れまれてるなんて俺、最悪じゃん」
「そういう意味じゃ!」
「分かってるって。分かってるよ」

そういうと中居はフッと軽く笑った。いつからそんな笑い方をするようになったのかとびっくりする程、大人な笑い方だった。
距離を感じさせる笑い方だった。

「そんな事気にするようなちっちぇ男じゃいけないんだよ。木村は。俺の木村拓哉伝説壊すなよ。」

明るさを装う中居を見て、お互いの胸の内に決して抜けない刺を感じながら生きていくのだと、この時改めて感じた。


それでも…


「好きだよ、中居」
「……」
「……」
「俺も」
「……」
「俺も、好きだったよ。木村」


中居がどんな顔をしてその言葉を言ったか俺にはわからなかった。


季節は春を越え夏を迎えようとしていた。





2007.5.16UP
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ってわけではないのですが、もったいぶっててもしょうがないので・・・。
かれこれ、2年ほど前に冒頭部分が思いついたまま、
お蔵入りしそうだったのでうsが、ひょんな拍子に日の目を見ることができました。
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SMAPファンに55のお題
thanks to「Wish Garden」植木屋様
http://www.geocities.jp/wish_garden_new/odai/00.htm
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