今日、草彅さんに食事に誘われた。
いつも一緒にいるとは言え、あんまり夜の食事は一緒にしないので、少し緊張する。
どこに行くんだろう？
こっちが提案するべきなのかな？
嫌いなものとか言っといた方がいいのかな？
他のマネージャーさん達はどうしてるのかな？
聞いてみようかな・・・。
でも、みなさんは、もう担当して長いしな・・・。
「あ、吾郎さん？こないだのモツ鍋屋さん、行こうと思うんだけど、電話番号教えて。」
あ・・・そこに行くつもりなのかな？
よかった、好きなもので。
ちょっと暑いけど。
「うん、うん。お願い。じゃーね。」
「あのね、吾郎さんに前に連れて行ってもらったモツ鍋屋さんに連れて行ってあげるね」
「あ、はい。ありがとうございます」
「凄いおいしくてね。また連れて行ってって何度も言ってるのに、連れて行ってくれないんだよねぇ。」
「はぁ。稲垣さんも忙しいですからね。」
「ま、そうなんだけどさ」
稲垣さんのお勧めなら、本当においしいところなんだろう。
いつも草彅さんが「吾郎さんが連れてってくれるところはおいしいところばっかりなんだ」と満面の笑みで報告してくれるから。
「場所はどこら辺なんですか？」
と聞いてるうちに、草彅さんの携帯が鳴る。
「おっ、吾郎さんだ！早いなぁ。」
と、電話に出た草彅さんの顔がどんどん変わっていく。
「え？本当に？よかった。吾郎さんにも来てほしかったんだよ！」
「うん！うん！！ホント。よかった。嬉しいなぁ。」
「うん。じゃ、後でね。ばいばーい。」
凄く嬉しそうな顔は、ピンクに上気している。
本当に嬉しいんだろうな、と思ってみていたけれど、これって・・・
「あの、僕、邪魔じゃないですか？」
「え？どうして？」
「いや、稲垣さんと２人の方が楽しいかと。」
「うーん。でも、今日は３人で行こうよ。」
「あ、はい。」
いいのかな？
本当にいいのかな？
宮部さんに連絡してみようかな。
でも、こんなことで電話するなんて、悪いよね。
仕事を終えた草彅さんは浮き足立っていて、反対に僕の足は重くなる。
本当に邪魔じゃないのかな？
「あ、吾郎さん？今から出るから、うん。後でね！」
私服に着替え終わった草彅さんが車に向かいながら電話を入れている。
決してキメているわけではないのに、かっこいいその姿に、ますます気が重くなる。
きっと、稲垣さんもお洒落な格好してくるんだろうな・・・。
目的地に着いたのは、こちらが先のようだった。
稲垣さんのかっこいい車はまだ止まっていない。
と思ったら、お店に入ったら、もう中でお店の人と話をしていた。
あ・・・お酒飲むし、タクシーなのか。
目立つ格好をしているわけじゃないのに、やっぱり目だっている彼は、
草彅さんを見つけると
「あ、剛」
と片手をあげた。
キマっている。手をあげただけなのにドラマみたいだ。
「吾郎さん」
にこにこと歩み寄る草彅さんはそのまま、稲垣さんの肩を抱く。
毎週２度は会ってるのに、てゆーか３日前にあったばかりなのに、久々の再会と言った感じだ。
いたたまれない気持ちになっていると、稲垣さんがこっちを見ていた。
「お疲れ様。剛が一人で来たがってたみたいだったけど、ここでよかったの？」
「あ、はい。大丈夫です。」
そんな気を使われてしまうと困ってしまう。
身の置き場がなくて困っている間に、稲垣さんが注文をしてくれる。
「ここはね、もう、吾郎さんに任せておけば大丈夫なんだよ。」
草彅さんはすっかりくつろいでいるが、とてもそんな気分じゃない。
個室で他のお客さんの視線を感じなくて済むのが、せめてもの救いかもしれない。
こんな二人と一緒にいたら、とても食事どころじゃない。
仕事中なら、もう気にならなくなって来たのに、今はそんなことが気になってしょうがない。
そんなことを思っている間も、二人の会話は弾んでいて、
「それでさ、こないだ一緒に行ったお店でさ、秋物が入ったらしいんだけど、また一緒に見に行ってくれない？」
「うん、いいよ。そうだよね。夏で暑いとはいえ、もうお店の中は秋冬物だもんね。」
「吾郎さん、もうコートは買ったの？」
「うん。一応ね、いつものところで置いといてもらってるんだけど。」
「相変わらず早いね」
「いいものはすぐになくなっちゃうからね。でも、どうしても同じようなスタイルのばっかり買っちゃうからさ。」
「でも、似合ってるからいいんじゃない？うん。あそこのお店の、吾郎さんに凄く似合ってるよ！ぴったりだよ！」
「うん、ありがとう。」
なごやかなムードが二人を包んでいる。
緊張なんてしなくていいんだよな、と思った途端、稲垣さんにじっとみつめられた。
迫力があるわけではないんだけど、じっと見つめられると目をそらせなくなる。
「買い物とか行く？って、そりゃ行くよね。どこらへんに行く？」
「や、あの、そんな・・・」
「あんまり行かないタイプ？へぇ～。」
行かないわけじゃないんだけど・・・と思ったが、稲垣さんの目はもう違う方向に向いてしまった。
自己嫌悪に陥りそうになった時に、お料理が運ばれてきた。
それは二人が言うように、とってもおいしかった。
というか、想像を超えていた。
今までに食べたことがないほどおいしかった。
一口食べた時に、これはもう何も気にせずに食事を楽しもうと決めた。
例え、物凄くかっこいい二人が横にいようとも、
例え、その二人がとっても楽しそうに話をしていようとも、
例え、その二人が何故か見詰め合っていようとも。
ただ無心で食べていて、ふと顔を上げたら、じっと稲垣さんが見ていた。
顔色は変わらなくても、お酒が入っていつもより目が潤んでいる。
そんな顔でじっと見られては、飲んでなくても赤くなる。
「よかった。気に入ってくれたみたいで、美味しいでしょ？」
「は、はい。凄くおいしいです」
「僕たちの間に挟まれて食べるんじゃ、食べにくいかな、って心配してたんだけど、美味しそうに食べてくれてよかったよ」
「あ、はい」
お願いだからじっと見つめないで欲しい。
そう思ったけど、言えるわけがない。
「どうしたの？顔赤いよ。」
「いえ、あの」
「お酒飲んでないよね？」
そう言って稲垣さんは少し笑った。
全て見透かされてる気がしてますます恥ずかしくなる。
「あれ？どうしたの？」
草彅さんが御手洗いから戻ってきた。
「ううん。なんでもないよ。ただ・・・」
「ただ？」
何を言い出すかと、僕も草彅さんと一緒になって稲垣さんを見返す。
「僕がじっと見つめてたら、彼、どんどん顔が赤くなるから。」
「……。」
「面白くて、ちょっと虐めちゃった、ごめんね。」
「ちょっとぉ、吾郎さん」
草彅さんが抗議の声を出す。
僕に代わって稲垣さんを諌めてくれるんだと思い、やっぱり草彅さんについててよかった、と思った。
けど、
「当たり前でしょ。吾郎さんに見つめられたら誰だってドキッとするよ！」
「そう？」
「そうだよ！わかっててやってるんでしょ？もう、むやみにみんなをドキドキさせないで！」
「剛もドキッとするの？」
「そりゃ、するって。」
「へぇ、そうなんだぁ。」
二人はまた二人の世界へと入ってしまった。
どうして草彅さんは僕も誘ったんだろう。
どうして僕はのこのこと付いてきたんだろう。
どうして稲垣さんは分かってて、そういう方向に話を進めるんだろう？
もう！
本当に！！
いたたまれない！！！
どうして僕を誘ったんですか？！草彅さん！！
もう絶対に来ない！！
あ～！いたたまれない！！
2007.8.17UP
ストスマ、キャッチボールSMAPより。
つよぽんのマネージャーさんについては良く知りませんが、
なんとなく新人さんな感じで書かせていただきました。