冬物語中村富五郎

 歌舞伎役者、中村富五郎(春野寿美礼)と藤川伊左衛門(瀬奈じゅん)。親友なのに、おさちゃんたら、麻子ちゃんが自分の奥さんに横恋慕したと勝手に思いこんで、あろうことか人情沙汰になって、息子を殺してしまう。奥さんは幽閉し続けるわ、生まれた娘も不義密通の子と思い込んで捨てさせるわ、おさちゃんたら何て酷い。でもその愛憎が、おさちゃんの繊細な演技と、迫力ある歌声で、心に響く。嫌な男なのではなく、かわいそうな男だと思った。麻子ちゃんが、おさちゃんを裏切るわけないでしょう。16年後も全然年とって見えないのは、まあ仕方ないか。
 麻子ちゃんの歌舞伎メイクがマンガチックでかわいい。秀之助の彩吹真央。日本ものがよく似合う。女装おさちゃんの十六夜も、美しくて。せっかく見目麗しい2人なのに、歌舞伎風の演出は、ちょっとまどろっこしかった。吉次の麻園みき。しっかりした芝居でよかった。
 おさんが生きていたというのは、興ざめ。大体どうやって16年も隠れてたんだか。富五郎の思いこみで妻も子もなくしたけれど、最後は子供たちがもとのさやに収めた、という方が無理がなくていいと思う。ラストが違っていたら、この作品はマイ・バウベスト3に入っていただろうな。
マノンロドリゴ
 スパニッシュが文句なしに格好いい。タイトルロールのマノンを演じた彩乃かなみ。男を手玉にとるふしだらな女という感じはしなくて、ルックス的にも清純な感じ。そのマノンを愛するロドリゴ、瀬奈じゅん。情熱的というか、純粋と言うか、そこまで一人の女を愛するとは。この先は破滅しかないだろうと思うけれど、「未来なんて君にやる。今を僕にくれ」なんて言われたら、破滅しても幸せだったのだろうと思う。こんなに激しく愛されたら、娘役冥利につきるでしょう。
 マノンの兄レスコーに蘭寿とむ。悪の道の水先案内人というか、この人さえ現れなければロドリゴはもう少しまっとうな人生を歩めたのでは。でも、何か憎めない明るさがあって、悪者という感じがしない。登場人物の中で、一番ラテン系。なんで最期の言葉が「ロドリーゴ」なのかが不明だけど。
 ロドリゴパパの磯野さん、いい味出してて、専科さんがいると芝居がしまります。
 
VIRTUAL GUY!
 プロローグの007のオープニングのようなセットも、セクシーなダンスも、何もかも最高。らんとむ、園加、一花、のどかの4人が、皆選りすぐりのダンサーだし。麻子ファンにはたまらないショーです。
 

カナリアラブロー

 悪魔学校の卒業課題が、人間界で一番はじめに出会った人間を不幸にすること。この人間たちが、皆個性的。ターゲットに選ばれた大鳥れいのアジャーニは、宝塚のトップ娘役さんなのに、ホームレス。負けん気が強くて、ガラが悪くて、いわゆる娘役さんの可愛らしさじゃないんだけど、なんか可愛い。芝居も上手いし、表情も豊かだし。
 匠ひびきの悪魔ヴィムが、振りまわされっぱなし。チャーリーも、こういうコメディができるんだ。歌がちょっときびしいかな。他の人が上手いから。大マジメではずしてるのが、面白い。
 人間代表、春野寿美礼のラブロー神父。どこまでも天然キャラで、脱力するほどの天然ぶりが、次は何をしてくれるかと、出てくるとわくわくしてしまう。2役のジュールは、ラブローと対極のキャラで、一粒で2度美味しいオサちゃん。蘭寿とむのディジョンも、前半のぶちギレキャラと、後半の犬キャラの豹変ぶりが面白い。
 子悪魔ウカの瀬奈じゅんは、ず〜っとチャーリーにくっついていて、いい役。元気があっていい。アニキになついてるのが、かわいい。
 ラストどうなるのかと思ったけれど、そういうオチがつきましたか。ヴィム、今度の学生生活は肩凝るぞ〜。
 
ミケランジェロ(新人公演)
 愛華みれの本公演では、一体何がやりたいんだか、全然分からなかったミケランジェロ。蘭とむ君の新人公演を見て、何か分かったような気がします。
 もてあますほどの非凡な才能と情熱を、自分でも抑えきれないミケランジェロ。コンテッシーナが嫌いなわけではないけれど、作品に没頭するといっさい周りが見えなくなってしまう。コンテッシーナも、そんなミケランジェロに少しでも近づきたい、少しでも彼と同じ空気を感じたいと思うと、自分をギリギリまで追い詰めるしかなかった。
 メンドリーニの園加ちゃんも野郎っぽくて、いい感じ。
 蘭とむ君の新人公演にかける無我夢中の情熱が、ミケランジェロにぴったり合って、本公演よりずっと感動できました。挨拶の号泣がまたかわいい。
 
琥珀色の雨にぬれてシャロン
 東京公演では、代役でしか見られなくて、それはそれで悪くなかったけれど、やはり本役のほうがぴったり。クロードの匠ひびき。不器用なほどにマジメで、一途な男というのが、キャラクターにあってる。オサのクロードは、若いがゆえの迷いという感じだったけれど、チャーリーのクロードは本当に純粋な人。みどりちゃんと並んだときも、青年クロード、背伸びしてますというのではなくて、よくお似合いだった。トレンチコートが似合って、大人の男。
 春野寿美礼のルイ。若くて、背が高くて、マスクもよくて、軽いノリで、まさにジゴロ。こんないい男をふるなんて、シャロンったらなんと贅沢な・・・。ま、ちょっとガラ悪いけどね。クロードとルイ、思ったとおり、これだけ印象の違う2人だと、見ていて面白い。ルイの「またはないのさ」という台詞、軽いだけのジゴロじゃなかったんだなぁ、とちょっと好きなシーン。それと、ルイとシャロンの「セ・ラ・ヴィ」という歌が好き。チャーリーとあすかちゃんも歌ってたけど。
 これでチャーリーがさよならだと思ってみるからもあるけれど、ラストは結構感動した。それにしても、特にチャーリーのファンだったわけではないけれど、やっぱりチャーリーのトップ作品、1回は見たかった。。
 
風と共に去りぬレット・バトラー
 スカーレット編とバトラー編を、うまくミックスして、見やすいストーリーになっていた。ご婦人方のベタなシーンがなければ、もっと良かったのに。
 轟悠のレット・バトラー。一路時代に見て、クラーク・ゲーブルに匹敵するのは、この人しかいない!と思ったものだけれど、やっぱり男らしくて格好いい。マイ・ベスト・レット。瀬奈じゅんのスカーレット、見る前はあの男らしい麻子ちゃんが?と思ったけれど、なかなかかわいいスカーレットだった。いかにも作ったっぽいしゃべり方がスカーレットらしくて、勝気で自分が全てなところも、あっていた。スカーレットUの遠野あすかとも、キャラクターが似ていてよかった。
 湖月わたるのアシュレ。骨太な演技のわたるくんが、華奢なイメージのアシュレ?と、麻子スカーレット同様思ったけれど、こちらもよかった。素朴で飾らない印象で、背が高くて、格好いいアシュレだった。わたる君も、檀れいのメラニーも、現実離れしたマイペースな感じ。予想に反して、皆イメージに合っていた。
 
月の燈影
 危険な江戸の川向こうで、かたぎに暮らすことのできない人たちの人情もの。彩吹くんが身を持ち崩したならず者という設定は、合ってないんじゃないかと思ったけれど、実はやさしい人だったのね。もっとやさぐれた風でもいいくらいだけど。
 幸っちゃんを探して川向こうにやって来た次郎吉のらんとむ君。素直で明るくて、とてもいい人。また犬なのね。喜の字にかんざしを渡そうとしているシーンがほほえましい。くるみちゃんも気が強いのだけど、しっとりした感じがいい。
 お互いのことばかり考えて、結局次郎吉の方が死んでしまう。ラストシーン、2人の友情が最高潮。なんとか江戸に連れて行こうとする幸蔵と、崩れ落ちていく次郎吉が悲しい。けど、ねずみ小僧にならなくてもいいじゃないよ〜!ってちょっと思った。
 

あかねさす紫の花中大兄皇子

 以前雪組で上演されたときは、大海人皇子が主役だったけれど、今回は中大兄皇子が主役になっていた。どうみても中大兄の方が格好いい役だから、このほうがストーリーとしては分かりやすい。
 ただ・・・比べるつもりはないけれど、以前の中大兄皇子が轟悠。宝塚随一の男らしさ。オサちゃんには、そこまで傍若無人、問答無用な雰囲気はないな・・・。その分、クールに装ってるのだけれど、本当は皇子といっても1人の恋に悩む男という感じで、とても人間らしかった。
 大鳥れいは、堂々として美しい額田女王。花總の額田ほど、2人の男に翻弄されている感じは少なくて、もう少し自分の意思があった気がする。瀬奈じゅんの大海人は、額田のことで頭がいっぱい〜。一路真輝はさすがトップさん、兄上の強引さに押されていても、やっぱり包容力あったんだなあ。
 中大兄皇子が主役だから、若干脚本が違っているのはいいとしても、ラストは雪組バージョンの方が格好よかった。花組のは、なんか説明っぽい。
 
NAKED CITY
 彩吹くんは上手いのだけれど、ハイエナのようなパパラッチというには、ちょっとお上品な感じ。影のある大女優のデイジー、あすかちゃん本当に上手。こういう一見華やかで、でも中はボロボロみたいな役は、ぴったり。マフィアの矢吹翔は、もうこれ以上に悪役キャラははないでしょう。逆に、愛音羽麗がそんな悪役!?という印象。
 ビリーとデイジーは惹かれあいながらも、デイジーが自分のために危険にさらされているニコラのもとに帰っていくのがいい。