宙組
アナスタシア


2021年1月28日
於・東京宝塚劇場



 ロマノフ王朝最後の皇女アナスタシアが生きている。 そんな街のうわさを耳にしたディミトリは、記憶喪失のアーニャをアナスタシアに仕立てて、皇太后から謝礼を受け取ろうと考えた。
 プリンセスの冒険を支える青年と言うのがディズニー映画っぽくて、音楽はきれいなのだけど、アンサンブル芝居が多くてちょっと物足りない。

 ディミトリ、真風涼帆。 詐欺にスリ、生きるためになんでもやる町のワルなんだけど、格好良すぎ。 パリで正装して現れるところとか、そんじょそこらの貴族よりずっと格好良い。 ディズニー映画なので、どうしてもヒロイン中心になってしまうのが残念だった。

 アーニャ、星風まどか。 タイトルロールのヒロイン。劇団の愛はかなり強いみたいだけど、個人的にはやっぱり好きになれない。 以前より子供っぽさはなくなったし、役柄的にあってたのでまだ良かった。 活舌が悪くて早口のところが聞き取れないのは相変わらずだったけど。

 ディミトリと行動を共にするヴラド、桜木みなと。 美味しい役だったけど、軽いノリと線の細さが中年に見えなかった。 もうちょっとオヤジ感があると役としては面白いんだろうけど、宝塚だしなあ。 (って言うか、愛ちゃんヅラオヤジやってた・・・) ロマノフの秘宝を持ったり、電車からジャンプしたり、微妙にデジャヴ。

 ボリシェヴィキの将校グレヴ、芹香斗亜。 ヒロインに心を寄せたり、父親の件がトラウマになってたり、いろいろ葛藤があるはずなのにさらっとしてた。 キキの演技はいつも何も引っかからないので、もっと深い演技をする人が演じてくれたら印象に残ったんだろうな。

 皇太后、寿つかさ。 さすがです。 家族が皆殺しされて、アナスタシアが生きているという望みを抱くことすら苦しくなるほど、いろんなことがあった。 それが分かるから、アーニャにきつくあたってしまうところは感動しました。

 リリー、和希そら。 2幕からの登場。 出てきた瞬間、舞台がパッと明るくなりました。 歌もダンスも上手だし、全体に低体温な芸風の多い宙組生の中で、あの押し出しの強さはいいです。

 あとは本当にアンサンブルの域を出ない役ばかりで、もったいない。
 瑠風は回想シーンの皇帝。一番見せ場になりそうな最期のシーンがないから、本当に美しい場面っていうだけ。
 無駄に格好いい街のチンピラ(瑠衣とか鷹翔とか)。
 劇中劇の白鳥の湖、ロットバルト(優希しおん)。 あまりに素晴らしいバレエに見とれてしまって、芝居の方を全く見てなかった。

 舞台セットが凝ってました。 開演前の幕は風花が舞っててきれい。 サンクトペテルブルクとパリの街並み、宮殿、アレクサンドル橋、電車のセット。 最近の舞台美術の本気度はすごいです。