宙組
カサブランカ


2010年1月15日
於・東京宝塚劇場



 カサブランカには、ナチスドイツの侵略から逃れるため、アメリカへの亡命を望む人々が集まっていた。 リックの経営するナイトクラブは、亡命のつてを探す人、カジノで資金を稼ごうとする人、亡命を手伝って儲けようとする人たちで、毎夜賑わっていた。
 そこに、リックの昔の恋人イルザが現れた。 イルザとは結婚の約束までしていたが、彼女は理由も告げずに姿を消してしまったのだった。 忘れようとしていた想いが、リックの中によみがえる。 だが、イルザは夫とともに亡命したいので、協力してほしいとリックに頼む。

 リック、大空祐飛。影のある大人の男。きっと似合いの役だろうと思っていたけれど、本当に格好良かった。 2人で過ごした日数を数えていたり、最後にイルザが着ていた服の色まで覚えていたり、ありえないほどの執着っぷりなのだけれど、その心の弱さが逆に魅力的なんですね。 「君の瞳に乾杯」の台詞よりも何よりも、最後イルザのために身を引くところが、言いようがないくらいに格好いい。

 イルザ、野々すみ花。すみかちゃんは、可憐な役とかスタイリッシュな役は微妙だったけれど、演技力のいる大人の女は絶妙です。 心から愛しているのはリックだけれど、尊敬し信頼している夫ラズロを裏切ることはできない。 運命のいたずらって酷だな・・・と思わずにはいられません。

 ラズロ、蘭寿とむ。反ナチスの指導者で、投獄されても拷問されても屈せず、自分の理念のために働き続ける男・・・ という人物設定の割に、穏やかな大人の男でした。 ギラギラした革命家でない分、信念がしっかりしているんだろうとか、イルザを優しく包み込むような雰囲気があるので、イルザもラズロを捨てられないんだろうとか思えるのだけれど、 個人的にはもうちょっと熱い血潮が流れている感じが見たかった。 熱い蘭とむって、個人的に大好きなので。

 ルノー大尉、北翔海莉。収賄、汚職何でもありの日和見主義の警視総監。 うまく自分が出世できて儲けられるなら、ナチスの言うことも聞くけれど、別に本気でナチスのために働くつもりもないし。 結構嫌なヤツだと思うけれど、北翔くんは上手くコメディにまとめていました。コメディ上手ですよね。

 ナチス将校の悠未ひろ。 出てきた瞬間に、大物悪役オーラを発していて、さすがです。 悠未くんの悪役(それも、社会的地位の高い大物)は、右に出る人いないです。

 ラストの飛行場シーンは、映画から抜け出てきたような雰囲気でした。 最後去っていく祐飛くんのトレンチコート姿がさまになっていて、背中の哀愁が何とも言えません。
 原作が昔の映画なので、全体にテンポがゆっくり過ぎると思うところもあって、1本ものでなくてもよかったような気もしました。