宙組
白鷺の城
異人たちのルネサンス


2018年12月6日
於・東京宝塚劇場

 「白鷲の城」
 和もののショーというよりはストーリーダンス。  妖狐・玉藻の前と、彼女に魅せられた陰陽師・安倍康成。 出会い、輪廻、長い時を経て再会した2人の物語。

 陰陽師と妖狐の話は多少は知ってる。 葛の葉姫の話は昔歌舞伎で見たし、殺生石は那須で見た。 京都の晴明神社にも行ったことあるし、ぬ〜べ〜の玉藻も好きだ(これは関係ないか)。 なんだけど、芝居としてはちょっと分かりにくかった。 元ネタ知らないと、本当に難しいかも。

 真風の最初の桜の衣装が綺麗で、舞台全体が絵巻物みたいに華やかです。 これが安倍康成なのかな? その後、唐では皇帝みたいに豪華な衣装の陰陽師で、戦国時代は殿より殿っぽい佇まいの軍師。 最後は白鷺城で妖狐を討ち取ろうとするけど、前世の記憶がフラッシュバックして、玉藻の前と共に命を落とす。 素敵なんだけど、どうにもマカゼらしくないというか、単に白塗りに見慣れてないだけかもしれないけど。

 唐で出会うのは楊貴妃?調べたら、妲己とかいう傾国の美女がいたらしい。 星風まどかは妖艶って形容詞とは無縁のタイプだから、男を惑わすとか妖狐とか似合わない。 怜美うららだったら良かったのにと、今更ながら残念。

 もう1人の妖狐、葛の葉。松本悠里はもうさすがに無理がある。 相手役の愛ちゃんがマザコン?婆コン?って感じで気の毒に見えてしまった。 安倍晴明は孫にしか見えないし。

 綺麗っちゃ綺麗なショーだったけど、何かが物足りない。 ストーリー性が強いショーだったから、白塗りじゃなくても良かった気がする。

 「異人たちのルネサンス」
 レオナルド・ダ・ヴィンチの物語・・・というか、フィクションの恋物語。 時の権力者ロレンツォ・デ・メディチを滅ぼそうと画策するグイド司教は、メディチ家にカテリーナという美女を送り込む。 彼女はレオナルドの幼なじみで、お互いに惹かれあっていた。 政治的な陰謀に巻き込まれ命を落としたカテリーナを、レオナルドは1枚の肖像画に描き込む。
 ダ・ヴィンチってゲイじゃなかったっけ?とか、生物学的な意味での人間には興味を持っていても人を愛するイメージはないとか、 いろいろ想像するダ・ヴィンチとは違うので、あくまでフィクションとして見てました。

 レオナルド・ダ・ヴィンチ、真風涼帆。 格好はいいのだけど、いまいちつかみきれない。 ラブロマンスが似合ってないのか、静かな役だから感情移入できないのか。 途中飛行機の模型を作るくらいで芸術家らしいシーンもないし、出番の割に印象に残ってない。

 カテリーナ、星風まどか。 女の色香でロレンツォを虜にしたとは思えないので、天使のような清純さが良かったのだろうってことで。 (個人的に天使は少年だと思うのだけど。) レオナルド同様、何だかいまいちつかみきれない。 モナリザの謎を秘めたほほ笑みっていうより、暗いイメージしか残ってない。

 ロレンツォ・デ・メディチ、芹香斗亜。 絶対的な権力者だけど、たぶん悪役ってわけじゃない。 ファンなら格好いいと思うのだろうけど、個人的にキキは別に好きじゃないので、ふ〜んそうかって感じだった。 この人は新しい愛人作って、たくましく君臨し続けると思う。

 グイド司教、愛月ひかる。 メディチ家を滅ぼすために画策する黒幕。 とにかく格好良くて存在感あって、愛ちゃん最高です。 レオナルドとカテリーナのラブロマンスより、ロレンツォvsグイドの争いの方が印象に残った。

 ジュリアーノ、桜木みなと。 あまりの当て馬っぷりが気の毒なくらい。 この人もとくに好きじゃないから、まあいいか。

 工房の仲間たち、宙組イケメンズ。 和希そら@クレディは元気いっぱいで、蒼羽りく@ボッティチェリはかなりタラシだった。 せっかくのイケメンたち、もっと個々の見せ場があったらよかったのに。 アンサンブルでわちゃわちゃしてるだけで、もったいなかった。

 全体にトーンが暗くて、途中まったり眠くなってしまったけど、ラスト教会のシーンでやっと盛り上がってきました。 ステンドグラスが綺麗で、最近のセットは見ごたえあります。 モナリザってあんなに大きくないよね、なんて突っ込み入れたらダメでしょうか。
 ショーも芝居も、やりたい方向性は間違ってないと思うのだけど、何かあと一歩違うというか物足りないというか。 微妙でした。
 フィナーレナンバーはとても素敵でした。 そら君がルイ・ルカゼ引き連れて銀橋渡るところから、女役はべらせたマカゼに、最後男役の総踊り。 やっぱり宙組はこれじゃないと。