宙組
ホテル スヴィッツラ ハウス


2021年4月12日
於・ブリリアホール



 オランダ貴族の父とバレエリュスのダンサーを母に持つロベルトは、表向きはイギリス外交官を名乗っているが、実はスパイを摘発するスパイキャッチャーだった。 第二次世界大戦が激化する中、ロベルトは任務遂行のためにスイスのホテルにやってきた。 ホテルではニジンスキー救済のチャリティバレエの興行が予定されていた。 コードネーム「ウイリアムテル」とは誰なのか。 ロベルトは、バレエ団のメンバーが怪しいとにらみ接近する。 そして、オーディションを受けにきたニーナと出会い、親しくなっていく。

 最初はスパイものっぽい感じなのかと思って見てたら、だんだんバレエ興行の方がウェイトが重くなってきて、最後は割とご都合主義な大団円。
「こんな息苦しい時代だけど、自分が愛するものを大切に」
「こうして舞台に立てることが何よりも幸せ」
 景子先生のメッセージは嫌というほど伝わりました。

 ロベルト、真風涼帆。 三つ揃いのスーツ、コート、帽子。 立ってるだけで格好いい、これぞ宙組男役の真骨頂。 なぜビリヤード?なぜ机に腰掛ける? かつての誠実で不器用そうな真風はどこに消えた? どこか影のあるいい男。設定が、演出が、存在が、全てあざとすぎる(褒めてます)。 いきなり女たらしこんで、色気ダダ洩れで、もうありがとうございます。 こんなハニートラップなら引っかかってもいい、むしろ引っかけてくれと思うファンはたくさんいるでしょう。

 ニーナ、潤花。 特別強烈な印象を残す娘役じゃないけど、破綻ない演技にトーシューズも履いて、好演してました。 夢を持った前向きな女性って言うだけだと鼻につくけど、ちゃんと嫉妬心も持ち合わせてて、そんな自分が嫌になったり。 新しい娘役トップになって、良かったです。

 エーリク、瑠風輝はジャーナリストって言ってるけど、ロベルトの部下? 役としては若くて真面目ってくらいの印象だけど、真風と一緒にいることが多くて、真風以上の等身の良さに眼福です。

 子爵夫人の万里柚美、そうか専科になったんだ。 息子が戦死して、精神的におかしくなってしまった人。 最初ただの感じの悪いお婆さんかと思ったら、そんな背景があったんですね。 精神を病んでいても、貴婦人のたたずまいはちゃんと残ってるって、さすが柚姉。

 以下はネタバレ注意な面々。

 劇団のパトロン、クラウスナーの芹香斗亜。 キキの演技は、正直もうちょっとやりようがあるだろうといつも思う。 出番は多いのだけど印象に残らない。 特に最後、脚本がご都合主義なのは仕方ないとしても、自分がやったことの重大さに気がついてほしい。 シンドラー気取りなのはいいけど、貴方のせいで大勢の人が亡くなった。 柚姉のように残された家族もつらい思いをしている。 アルマとの関係にしても、何も伝わってこない。

 アルマ、遥羽ららはクラウスラーの恋人? 大人の色香でアルマにしなだれかかってると思ったら、実は忘れられない男がいた。 イギリス大使館員にハニートラップかけるのは分かりやすかったけど、アルマに対してもラヴィックに対しても同じようなしなだれかかり方で、そこはもうちょっと違いを見せてほしい。 そういう女かと思ってしまう。

 振付家ユーリー、桜木みなと。 宝塚には、芸術家はオネエっぽく役作りしなければいけない決まりでもあるのかな。 他の男役が割としっかりした身体してるから線の細さが目立ってしまうし、ジョルジュだっけ?いちゃついててそっち方面を匂わせてるんだけど、それいるかな?

 最後は甘々なエンディングで、第二次世界大戦とかスパイとかハードなバックグラウンドは何だったんだろうって感じです。 途中からニジンスキーへのオマージュにすり替わってて、優希しおんがいないことが何とも悔やまれます。 劇中劇のバレエナンバー、彼女で見たかった。
 とりあえず真風を堪能するのに最高の作品でした。