宙組
傭兵ピエール
満天星大夜總会


2003年6月6日
於・東京宝塚劇場



 戦争に生きた聖女ジャンヌ・ダルクと、恋人ピエールの悲恋の物語・・・だと思っていたら、ずいぶん趣が違っていた。源義経が大陸に渡って、チンギスカンになったという話くらい、思いきり史実を離れた、大団円の物語。

 傭兵隊隊長ピエール、和央ようか。態度悪い、ガラ悪い。本当にこういう役は、たかちゃん似合う。「服だけでなく、中身もいただこう」って、いきなりジャンヌを道端に押し倒して、なんて荒くれ野郎。でもこういう役の時のたかちゃんが、格好いいと思う。二日酔いでベッドに大の字で寝てるシーンとか、最後捕まった時のふてくされた態度とか、たかちゃんでなければ、さまにならない。

 ジャンヌ・ダルクの花總まり。前回、「おまえの首は私のもの!」なんて恐ろしいことを言っていた人と同じとは思えません。純粋というか、天然ボケというか。ピエールに押し倒されたとき、「私は生娘なのです」と言い放ったのは、「あの娘を堕としたら、私をさしあげましょう(仮面のロマネスク)」と同じくらいの衝撃を受けました。「純潔をあなたにささげます」は、真珠夫人かと思った。傭兵野郎つかまえて未経験だのなんだの、ちょっとやりすぎの感じ。
 甲冑を着て男役さんの中に混ざると、華奢で少女のようだった。

 傭兵仲間たちは、みんな荒くれ野郎だけど、元気でにくめない。ロベール(水夏希)は、「女の指揮下で働けるか!」なんて言ってたけれど、最後は女の力で出世してるし。そう言えば水ちゃん、オスカル様やってたっけ(=女の指揮官)。
 トマの伊織直加。見てないけれど、可愛い女の子の役やってたなんて思えない、男らしさでした。
 腑抜けになったピエールを下剋上したトマ、仲間を売り渡したロベール、そんな野心を秘めているようには見えないのに、と毎回しっかり騙されました。特にトマ、にわかシェフ殿の時だけ別人みたいだった。直ちゃんの専科になってからの芝居が好きだったので、退団がもったいない。

 ジャンヌの替わりに火あぶりに処せられてしまったカトリーヌ、華宮あいり。目立つ役だけど、最後の公演で女役っていうのは、ちょっとかわいそう。大団円の犠牲者だし。きれいだし、すごい迫力あったからいいのだけれど。
 ラ・イールの椿火呂花、わざと低い声を作っていたこともあって、ちょっと活舌悪くて、言っていることが聞き取りにくかった。

 満天星大夜總会。「マイ・ネーム・イズ、はなちゃ〜ん!」にはちょっとびっくり。あのアイドルドレスが似合うのは大したものだけれど、花ちゃん、さすがにこういう役はそろそろどんなもんでしょう。
 芝居では休演していた彩乃かなみ。残念に思っていたら、ショーは出演していました。のどを痛めていたのかな?パレードでも歌ってなかったから。かなみちゃんは、またも魔王みたいのに襲われていた。トップコンビのデュエットダンスのバックで、ソロで歌う直ちゃん。さよならの歌っぽくて、とても感情入っていました。