宙組
パラダイス・プリンス
ダンシング・フォー・ユー


2008年11月28日
於・東京宝塚劇場



 モダンアート界のプリンスと称されるスチュワートは、子供の頃からの夢であるアニメーション作家になることをあきらめられず、単身、西海岸オレンジカウンティのアニメーション会社に就職する。そこで出会ったキャサリンが、厳しい現実にも屈せず、画家になる夢を追い続けているのを知り、2人は惹かれあう。
 スチュアートを呼び戻そうとするプロデューサーのアンソニーの妨害を乗り越え、スチュワートとキャサリンは夢をかなえ、ハッピーエンド。

 軽いラブコメ。個人的には、仕事としてモダンアートの作成をしながら、趣味でアニメーション作家を手がければいいのではないかと思うのだけれど、真面目で世間知らずなお坊ちゃんのスチュワートは、そんなことは考えつかなかったのでしょうか。実力も人気もあるアーティストなら、自分のわがままだけで、ファンや世話になった人たちの思いを踏みにじっちゃいけないでしょ。

 スチュワート、大和悠河。苦労知らずのお坊ちゃんが、自分の夢を語るというのが、たにちゃんにはぴったり。パーティには当然シャンパンで、バッグは全て一流ブランド。一生懸命生きている庶民って、いいもんだなあ〜なんてセレブな発言が嫌味にならないのは、さらりと明るいたにちゃんならでは。

 キャサリン、陽月華。彼女も、カラリと明るい現代っ子。初登場のショートパンツ姿が、健康的で可愛い。

 アートプロデューサーのアンソニー、蘭寿とむ。ナルシストな実力派なのは分かるけれど、あそこまでやられると、ただのギャグにしか見えない。他の登場人物がどこにでもいそうな雰囲気なのに、アンソニーだけ異次元。アンソニーの言っていることは、結構まともなことだと思うのだけれど、あの風体で変な人に見えてしまう。
 秘書2人、いい女風のヴィクトリア(美羽あさひ)といかにもその道風のシャルル(悠未ひろ)の両方をはべらせていたけれど、彼はバイ?悠未くんは、かなりかなりなりきっていました。濃い役は、十八番ですね。

 ラルフ、北翔海莉。垢抜けない脳天気なオタクっぷりが堂に入っていました。実は金持ち息子だった・・・と言っても、やっぱり最後まで垢抜けないままの田舎ものというのが、憎めないオチ。

 主役同士の愛が実ってハッピーエンドは宝塚的にはよくあるけれど、子供が生まれて、日常生活の一幕で終わるのは珍しい。TVドラマのようなお話でした。