バレンシアの領主だった父を暗殺した真犯人が、現領主のルカノール公爵だと知ったフェルナンドは、復讐を決心する。ルカノール公爵の甥ロドリーゴも、恋人シルヴィアを公爵に奪われたことを恨みに思い、フェルナンドと志を共にする。 フェルナンドには、マルガリータというフィアンセがいたが、復讐の計画を進めるうち、酒場の娘イサベラと恋仲になる。同じ酒場のラモンも、イサベルに想いを寄せていた。ラモンの妹がルカノール公爵の手下に殺されたことから、ラモンも復讐の仲間に加わることになる。復讐は成功するが、恋人たちは結ばれなかった。 フェルナンド、大和悠河。たにちゃんの持ち味は明るくて軽快な感じなので、スパニッシュ、復讐ものという濃いイメージとはちょっと違う。もともと実直で真面目な青年だというのはよく分かるけれど、逆に遊び人のふりをしているのがあまり見えない。貴族の青年だし、感情を隠していると考えるとこれでもおかしくはないけれど、何か物足りない。たにちゃんは綺麗なんだけど、芝居の深さを感じないんだな〜。 ピンクの口紅は、そうでなくても愛らしい顔立ちだから、もうちょっと男っぽく見せるために変えたほうがいいんじゃないかな。「日に焼けた」と言われる割に真っ白だし。ショーではそれでいいんだけど。 ラモン、蘭寿とむ。酒場の熱い兄ちゃん。男っぽくて熱くて、まさにらんとむのための役。喜怒哀楽がはっきりしていて、イサベラが好きというのは公言してはばからないし、気にくわない相手にはすぐケンカをふっかける。妹の復讐をとげた後、倒れているバルカを何度も殴りつけているのを見て、なんてラモンらしいんだろうと思いました。貴族の復讐じゃ絶対ありえないもの。 酒場とカルナバルのダンスシーン、うめちゃんと2人スパニッシュが決まっていて、すごく格好いい。このシーンのためだけでも、また見に行きたいと思います。ラモンとイサベラは、名実ともにエル・パティオの看板ダンサーです、はい。 フェルナンドとロドリーゴに説得されても、「命がおしい」と言って復讐に手を貸そうとしないところとか、貴族の館に行ったときに、妙に変なテンションになって舞い上がってるところとか、まわりが皆シリアスなので、息抜きできる笑いを作ってくれるのがいい。ニコラ(落陽のパレルモ)とキャラがかぶるかと思ったら、全然違いました。 イサベラがラモンの腕に飛び込んでくるシーンは、とても切ないです。自分のことを愛してくれていないと分かっていても、思わず抱きしめてしまう。その後歌う「瞳の中の宝石」が、本当に心にしみます。 ロドリーゴ、北翔海莉。ロドリーゴはあまり感情を表に出すタイプではなくて、冷めた目で人を見下すような雰囲気があって、貴族ってこんな感じなのかなと思えます。こういうところが、ラモンの癇に障ったんでしょうね。クールに見えて、結構思い込んだら一直線タイプ。シルヴィアとも逢瀬を重ねているし。 「瞳の中の宝石」は、この2人も歌っています。ほくしょー君は歌が上手いので、こんなしょうもない歌詞でもそれなりに聞けました。フェルナンドとイサベラが歌ったときは、歌唱力は別として、後ろに何組もカップルが出て来て踊るし、相思相愛で「愛している」を連呼するのは、古臭くてやめてもらいたかった。ラモンの場合は報われない片思いなので、逆にこの「愛している」を繰り返すのが切なかったのですが・・・ファンビジョン? イサベラ、陽月華。うめちゃんもダンスが上手いので、スパニッシュダンスが見ごたえあって嬉しいです。情熱的で大人っぽい。フェルナンドを見つめる眼差しが恋する女の目で、これを見せ付けられたらラモンもきついな〜と思います。 フェルナンドを思いっきり愛していても、やっぱり貴族とは世界が違うと身を引くのがイサベラらしい。でも、イサベラが死ぬ?友人は、フェルナンドの心の中のイサベラが死んだと言う意味じゃないかと言っていて、それなら分かるけれど、失恋で死ぬタイプじゃないでしょ。個人的には、どんなに失恋してもたくましく生きていくのが場末の娘らしくて好きなのだけれど・・・。 マルガリータ、和音美桜。清楚な感じが、主人公のフィアンセ、貴族のお嬢さんという設定にぴったり。私貴方を信じていつまでも待ってますというタイプの女の子は、個人的には重たくて好きじゃないのだけれど、フェルナンドママとの会話は、いじらしくて可愛いと思いました。待った甲斐あって、きっとフェルナンドはマルガリータと結婚するでしょうね。 シルヴィア、美羽あさひ。演技力に不足はないし、大人っぽい雰囲気もいい。何で恋人を捨てて嫌な男の妻になるかな〜って今の感覚では思うけれど、仕方がなかったというのが伝わってくる。彼女の場合は、ルカノール公爵が死んだからって、今さら都合よくもとのさやに納まるようなことも出来ないし、悩んだ末自殺したのかなとは思うけれど、やっぱり死ななくてもいいんじゃないかな。人目を避けてそのまま姿をくらますとか、出家するとか。ご都合主義で殺すのはイヤだな〜。 ルカノール公爵、悠未ひろ。無駄に大きくて(失礼)、悪目立ちすることが多いのが気になっていたけれど、こういう悪役はぴったり。おじさん専科とは違ってどこか色気があって、嫌味で、敵役のキャラクターがはっきりしていると、芝居がしまっていいです。 好きだったのが、七帆ひかるのドンファン・カルデロ。キザで格好よくって、でも泥棒。カルデロが出てくると、舞台が明るくなります。何かこのごろ、七帆君いいなあ。あんな小さなホルヘがお父さんだっていうのが、ギャグかと思うけど。 ラモンの妹ローラ、花影アリス。「NEVER SLEEP」の時もらんとむの妹役だったけれど、妹キャラではない気がする。細すぎて痛々しいし、役に合ってない。 古い作品は、やっぱりどこか古臭さを感じてしまうけれど、マントにフェンシングというアナクロなのも、宝塚でしか味わえない良さと言えるかな。歌をもう少し現代風に変えてくれると嬉しいのだけれど、オールドファンはやっぱりあれじゃなきゃって思うんでしょうか。登場人物が割とみんな役に合っていたのと、スパニッシュダンスが格好よかったので、思っていたよりずっと楽しめました。役替わりだとどうなるのかな・・・ FANTASISTAは、ひとつひとつのシーンはそれなりに楽しめるのだけれど、衣装がちょっと変。現代的でスマートなたに&うめなのだから、あんなファンタジーっぽい衣装よりスタイリッシュな方が似合うのに。ヴィーナスは、個人的に心臓爆発でした。 |