宙組
ヴァレンチノ


2011年8月19日
於・日本青年館



 イタリア移民のルドルフ・ヴァレンチノは、アメリカで職を転々とするうちに、ハリウッドの脚本家ジューンに見出され、スクリーンデビューすることになる。 ラテンラヴァーとして一躍名声を得たヴァレンチノ。 だが、デザイナーのナターシャとの結婚は長く続かず、ファンが望む幻影を演じ続けることにも嫌気がさしてくる。 本当の自分を取り戻すため、一からやり直そうと思っていた矢先、昔因縁のあったギャングのボスにからまれ、命を落とす。

 ルドルフ・ヴァレンチノ、大空祐飛。本名はやたら長い名前で、記憶のかけらにも残ってないけど。 どれだけ人気スターになっても、夢を持って移住してきた素朴な青年らしさが残っていて、ラテンラヴァーなんて売り文句はルディーには似合ってないんだって思えます。 平凡な家庭が欲しいだけの、母性本能くすぐる系? 黒燕尾のジゴロに、ガウチョ姿やマタドールの扮装など、きっとファンにはたまらなかったことでしょう。

 ジューン・マチス、野々すみ花。 清純な少女とか、絶世の美女とか言われると、う〜ん・・・というすみ花ちゃんですが、ジューンのちょっと垢抜けない感じとか、まじめな才女という感じは合ってました。 始めてルディーに会った日、この瞬間に恋に落ちたなというのがはっきり分かったし、芝居が上手なので安心して見ていられました。 才女とは言っても、あくまでラテンラヴァーにこだわり続けるあたり、夢見る夢子ちゃんなんだろうな。

 ナターシャ・ランボア、七海ひろき。 すらりと背が高くてスタイリッシュ。ビジュアル的には非の打ちどころのないナターシャなのに、演技がいまひとつ。 勝気で虚勢をはっているけれど、占いを信じたり、素のままの自分に自信が持てなかったり、弱い部分のある女性だと思うのに、そういう繊細な心の動きが全然見えない。 ルディーに対しても、インスピレーションを与えてくれる存在と言ってはいても、本当は愛しているというのが見えない。 いい役なのに、もったいない。

 ジョージ・ウルマン、春風弥里。 この人好き!親友とか旦那さんにするのに最高。 ぐじぐじ思い悩まないで常に前向きだし、適当っぽく見えて的確な行動をとるし、相手に精神的負担をかけないすべを心得ている感じが最高にいい。 いい人なんだけどね・・・で終わりそうなタイプなのに、格好いいし。 最後ルディーの死を見送ったあとのモノローグが、静かに心に残ります。

 ナジモヴァ、純矢ちとせ。 大女優というよりは、変なおばさん風。 わがまま放題言っていてもヒロインに使われるくらいなのだから、ビジュアル的には洗練された感じでいいと思うのだけど。

 ギャングのボス、ジャックの悠未ひろ。 1幕はちょっとギャグっぽかったけれど、2幕は迫力満点。 ギャングたちのダンスナンバーは格好よかったです。

 DJジョニー・マンデル、鳳樹いち。 軽妙なノリがいい。一人でしゃべって場を盛り上げなくてはならない役がいい感じ。

 フィナーレの男役さんのナンバー、黒燕尾に1輪のバラを持って、これぞ宝塚!な格好よさでした。