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宙組 2001年7月28日 |
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BGM*愛あればこそ |
宝塚と言ったらベルサイユのばら、ベルサイユのばらと言ったら宝塚、という程、この作品は宝塚とは切っても切れない関係。
原作は長編の大作なので、誰を主軸に持ってくるかで作品のストーリーも随分変わってくるけれど、今回は「フェルゼンとアントワネット編」。
フランス王妃マリー・アントワネットと、スウェーデンの貴族フェルゼンのかなわぬ恋と、オスカルとアンドレの恋、
それにフランス革命も上手くからんで、原作に近い雰囲気に仕上がっていました。 私が今まで見たベルばらも、実は星組のフェルゼンとアントワネット編で、日向薫がフェルゼン、紫苑ゆうがオスカル、 そして麻路さきがアンドレでした。3人とも長身で、特にねっしーさんは立っているだけで絵になる、まさにフェルゼンのイメージにぴったりだったのを覚えています。 ただ、作品そのものが、原作から大きくはずれた描かれ方をしていたので、原作のベルサイユのばらそのものが大好きな私は、かなりがっかりしたのも事実でした。 今回、歌はアントワネットが歌う「ガラスの城」という1曲が、新しく増えていたほかには、基本的には全て同じものでした。 やはり、宝塚のベルばらには「愛あればこそ」はじめ、お馴染みのテーマソングは欠かせませんね。 とても細かいことですが、フェルゼンの歌う「愛のおびえ」で、「愛が欲しい とこしえの、強い強い 愛が欲しいのよ」というフレーズ。 ちょっと女言葉っぽいと思っていたら、今回「欲しいのだ」に変わっていて、胸のつかえが取れました。 脚本も大幅に手直しされていました。まず、ジャンヌがいなくなっていた。 原作のジャンヌは、貧しい庶民の暮らしが嫌で、どんな犯罪に手を染めてでも貴族の生活を手に入れる、かなりインパクトの強い女性なのが、宝塚オリジナルでは、 そうして貴族の生活を手に入れた上、王妃の寵愛までうけるという設定で描かれていた。 いくら若い頃のマリー・アントワネットが世間知らずで、楽しいことばかりに目をむけている王妃だったとしても、悪女むきだしのジャンヌを寵愛するという設定は無理がありすぎ。 ジャンヌの扱いはかなり気になっていたので、今回存在そのものをなくしたことで、かなりすっきりとした作品になっていました。 それから、ジェローデル。前作のジェローデルは、貴族と袂をわかち、民衆の側につくと決心したオスカルを責めていた。 でも原作のジェローデルは、オスカルを愛するがゆえに身を引いたほどの男性。何があっても、ほんの一瞬でもオスカルを責めることはありえない。 今回、そのシーンは削除されていました。惜しむらくは、ジェローデルがオスカルを愛しているということをあらわすシーンがなかったこと。 あの身を引きましょうのシーンは、かなりツボなのに・・・。さらに、オスカルがフェルゼンを愛しているというシーンもなくなっていて、 さすがにそれくらいは残しておいて欲しかった。 前作のなかで、一番気に入らなかったのが、決戦前夜オスカルがアンドレの愛を受け入れるシーンでの、オスカルの台詞。 オスカルが突然女言葉になるなんてありえなさすぎて、思い切り白けていました。 ここは、男言葉を話すオスカルのままだからこそ、女性としての弱さや可愛らしさが現われるのだから。今回、変わっていて本当によかった。 オスカルとアンドレは役代わりで、私が観たのは彩輝直アンドレ、水夏希オスカルだった。
最初ルックスから、甘い顔立ちの彩輝くんがオスカルで、すっきりした顔立ちの水ちゃんがアンドレのほうが似合うんじゃないかと思っていたけれど、
実際見てみると、案外合っていました。 バスチーユのシーンも、この2人がよかった。彩輝アンドレは死んで行く悲しみよりも、オスカルを愛している喜びに溢れていた。 目の前でアンドレが死んでいくのをただ見ているしかない水オスカルは、悲痛な絶叫を繰り返すだけ。 このシーンのオスカルは、本当にただのひとりの女性で、見ている私もうるっときた。アンドレの死後、戦闘の指揮をとるオスカル。 あんなに泣いていた人が、こんなに簡単にふっきれて闘えるんだろうかと、これまで不思議に思っていたけれど、水ちゃんのオスカルは、不自然な感じがしなかった。 フェルゼンの和央ようかは、前回のねっしーさん同様、細身の長身で、立っているだけで絵になる、まさに貴公子だった。 淡々としていて、自分の恋で精一杯、それがフェルゼンの役作りなのか、たかちゃんの持ち味そのままなのかよく分からないけれど、 若干アントワネットの花ちゃんに圧されている感じがした。特に馬車を駆ってパリに向かうシーンは、フェルゼンの見せ場のはずが、ちょっと迫力不足。 見た目の美しさは、とくにフェルゼンのような貴公子には必要不可欠で、立ち居振舞い申し分ないのだけれど・・・。 花總まりは、晩年の落ち着いた大人のアントワネットを上手く演じていた。 この人には、もう何の心配もないけれど、子供達にかける母の愛情、国民を前にした女王の威厳、フェルゼンの前でみせる女性の可愛らしさ、どれも無理なく自然に現れていた。 相変わらずお衣装もゴージャスで、わっかのドレスを着てすべるように歩く様子は、感動もの。 ラスト断頭台の階段を登っていくアントワネットは、最後の最後まで威厳に満ちていました。 |