Elisabeth

BGM*闇が広がる

 

宝塚雪組で初めて観てから、すっかりはまった「エリザベート」。
気がつくと、結構いろんな配役で観ていました。
キャストが違うと、同じ脚本でも全然違うストーリーに見えてくるのが面白いですね。


劇場 上演年 配役 トート エリザベート
宝塚(雪組) 1996年   一路真輝 花總まり
Theater an der Wien 1996年   Christian Venzke Suzan Zeichner
宝塚(星組) 1997年   麻路さき 白城あやか
宝塚(宙組) 1999年   姿月あさと 花總まり
帝劇 2000年   山口祐一郎 一路真輝
帝劇 2000年   内野聖陽 一路真輝
宝塚(花組) 2003年   春野寿美礼 大鳥れい
宝塚(月組) 2004年 彩輝直 瀬奈じゅん
宝塚(雪組) 2007年 水夏希 白羽ゆり

 

 宝塚(雪組)
配役 トート 一路真輝
  エリザベート 花總まり
  フランツ・ヨーゼフ 高嶺ふぶき
  ルキーニ 轟悠
  ルドルフ 和央ようか
     
 初めて「エリザベート」を見たとき、あまりに素晴らしくて、すっかりこの作品の虜になってしまいました。

 一路のトートが妖艶で、こんなトートにだったらすぐついて行っちゃうのに。銀髪に黒いお衣装が幻想的だった。静かに歩み寄って、ふっと人の命を奪っていくという感じ。
 花總はこの作品でぐっと成長した。歌も上手になって、エリザベートのソロも素晴らしかったし、洗練された美しさを見せていた。この時の白いドレスはン千万円だったとか。この後、「宙組のトップは和央ようか、宝塚のトップは花總まり」と知人をして言わしめるほどになった。ただ、この時の花總は、まだ一路についていくのが精一杯で、それが懸命に生きるシシィの姿と重なって、かわいらしかった。自分は一生懸命に生きているのに、どうして回りは分かってくれないの?という感じに見えた。
 ルキーニの轟悠が、本当に女性?というくらいの男らしさで、格好よかった。
 トートとルドルフのデュエットが素敵だった。宝塚大劇場でのルドルフはたーたんで、ビデオでしか見ていないのだけれど、ちょっと死にそうもないかな。歌や演技は素晴らしいのだけれど、やっぱりルックスも大事かも。その点、たかちゃんのルドルフは線が細くて影がある感じで、似合っていた。
 高嶺フランツ、お衣装が「うたかた」のルドルフのだった。息子のお下がりだとは・・・。

 全体を通して、トートの掌の上で転がされている人間たちの物語というイメージだった。どんなに抗っても、人は最期にはトートに連れて行かれてしまう。そのトートの手先がルキーニ。主役は、トート&ルキーニ。

 

 Theater an der Wien
配役 エリザベート Suzan Zeichner
  ルキーニ Matthias Kostya
  トート Christian Venzke
  フランツ・ヨーゼフ Leon van Leeuwenberg
  ルドルフ Thomas Harke
     
 FAXで現地のチケットエージェントと連絡をとり、はるばるウィーンまで行ってきました。1月のウィーンは雪が積もっていて、とても寒かった。その中を、マイヤーリンクまで行ったのは、結構気合はいっていました。

 テアター・アン・デア・ウィーンでは、前から3列目と言ういい席でした。言葉はドイツ語なので、言っていることは全然分からないのだけれど、日本語バージョンはそらで歌えるくらいビデオで見かえしていたので、あまり問題はありませんでした。配役を見て分かるように、主役はエリザベート、次がルキーニ。トートの出番は宝塚版より、ずっと少なかったです。お衣装も宝塚より全然地味だけれど、迫力はかなりのものでした。舞台も盆とか八百屋とか、一言で言えないくらいのハイテクで動いていて、見物でした。

 シシィは、かなり我侭できつい人だった。ルドルフが父皇帝との仲をとりもって欲しいといったときも、髪をとかしていて、ルドルフの方を見もしない。そのくせ、息子が死んでしまったら地面にころがって、狂気のように泣き叫ぶ。
 トートも負けずに激しかった。舞台の上をところ狭しと走り回っていた。その男くさいトートが、ルドルフを黄泉の国に連れて行くときに、黒いドレスを着て現われるのだから(マリー・ヴェッツェラとして)、ちょっと不気味だったけれど、迫力はありました。宝塚だったらさぞ美しかったろうに、なんでマリー・ヴェッツェラを入れなかったんだろう。
 2幕始め、ルキーニが客席から登場。キッチュを歌いながら、おみやげ物をばらまく。1階通路側に座っていた私は、しっかり手を出して、扇形のチョコをゲット。宝塚とはちょっと構成が違ってます。この後もナチス党員のシーンがあって、さすがに客席思いっきりひいて、このシーンだけは誰も拍手をしなかった。ナチはまずいと思うな・・・
 ルドルフ子供時代、さすが少年合唱団のお国柄だけあって、上手だった。本当の子役には、大人は勝てないね。
 ラストも少し違っていて、ルキーニの首吊り人形(プロローグにも出てきていた)が天井からぶらさがっていた。トートも、シシィと手に手をとって黄泉の国に行くのではなかった。らぶらぶ感は薄いかな。全体に、ルキーニが目立ってました。

 イメージとして、「エリザベート、または狂人ルキーニが作り出した物語」という副題をつけてもいいかも。

 

 宝塚(星組)
配役 トート 麻路さき
  エリザベート 白城あやか
  フランツ・ヨーゼフ 稔幸
  ルキーニ 紫吹淳
  ルドルフ 絵麻緒ゆう
     
 宝塚でエリザベートを再演。しかも麻路さきがトートと聞いて、私は不安でいっぱいになった。星組は大好きなのだけれど、まりこちゃんはどうも・・・歌唱力なら宝塚随一の一路の後に、同じ役をよりによって一番歌に疑問の残るまりこがやるとは。

 まりこのトートは、一路とは全然毛色が違っていた。アン・デア・ウィーンでのトートにも似た迫力があったし、妖艶ではないけれど、恐怖は感じさせられた。一路の静のトートとは逆で、感情をぶつけていくアクティブなトート。他のトートと比べて、唯一死の恐怖を感じた。
 あやかちゃんのシシィは、花總よりずっとしっかりしていて、アン・デア・ウィーンのシシィほどではないが、意思を持った人だった。個人的にとても気に入ったのが、ノルちゃんとあやかちゃんの子供がグンちゃんで、それが成長したらブンちゃんになる、というところ。おでこつながりというか、丸顔つながりというか、似てるよね〜。ゆきちゃんと花ちゃんの子供がたーたんって言われても、ちょっとね・・・
 フランツとシシィが出会ったときの、らぶらぶぶりが、結構かわいかった。あと、アンサンブルもよかった。紫吹ルキーニは、いしちゃんと較べちゃ酷かもしれないけど、ちょっと迫力不足。稔フランツは芸が細かくて好き。ノーブルだし。
 一番のお気に入りナンバー、闇が広がる。トートの歌がちょっと・・・。きれいなデュエットになってなくて残念。

 星組エリザベートは、皇帝夫妻が懸命に生きようとしているところに、しのびよる死の影、というイメージだった。主役はエリザベートやフランツたち、人間の方に見えました。

 

 宝塚(宙組)
配役 トート 姿月あさと
  エリザベート 花總まり
  フランツ・ヨーゼフ 和央ようか
  ルキーニ 湖月わたる
  ルドルフ 樹里咲穂
     
 正直、またやるの?と思った宝塚3回目の再演。しかも、エリザベートは雪組と同じ花總。それなのに花總、シシィのドレスを全部作り直していた。肖像画の白いドレスも、さらにグレードアップして、ため息が出るほどきれい。この人のお衣装見に行くだけでも、価値があったかも。

 姿月あさとは、大役抜擢に余裕がないのが見え見えだった。それゆえトートも青かった。初恋にムキになったり、変に強がったりする少年のような感じ。死神という迫力は弱かった。
 花總は、雪組の頃の必死さがなくなっていて、余裕が出た分、シシィが自然だった。普通に生きているつもりなのに、何がいけないの?という感じ。
 たかちゃんは、今回はお父さん。ちょっと声が高くて、印象が弱い。湖月ルキーニ、これもいしちゃんと比べるのは酷だと思うけれど、影薄かった。

 宙組エリザベートは、全体に無難にまとまっていた感じがする。主役は、あえていうならシシィかな。

 

 帝劇
配役 エリザベート 一路真輝
  トート 山口祐一郎
  フランツ・ヨーゼフ 鈴木綜馬
  ルキーニ 高嶋政宏
  ルドルフ 井上芳雄
     
 トートがはまり役だった一路ちゃんが、今度はシシィをやるというので、とても興味津々観にいった。作品はウィーン版に沿ったもので、それに少しアレンジが加わっていた。そのアレンジが、結構えげつないものもあったけれど。シシィの初夜の翌朝、ゾフィが起こしに来るシーン、いきなりベッドの布団をめくってチェック。まあ、皇后にとってまず一番の仕事はお世継ぎ誕生だし、昔の習慣でそういうこともあったとは思うけれど、舞台でやりますか。その他にも、人間、男女のどろどろしたところを盛り込んでいた。すみれコードはないとはいえ・・・

 一路のお衣装と髪型、ちょっとしょぼかった。花ちゃんは貸してくれなかったのかなあ。せめて髪型くらい、もうちょっと素敵にしてほしかった。少女時代のシシィは苦しかったけれど、さすがに歌は上手。
 トートの山口さん、歌は本当にうまいのだけれど、舞台の雰囲気に合っていなかったように思う。トートダンサーズ、トップレスの男たちがいやらしく踊るんだよ?その中で、ろうろうと歌われてもなあ。何だか、品のある閣下っていう感じで、舞台全体のカラーとは違っていた。(個人的に、山口さんにはトレーズ閣下をやってほしかった。)
 フランツ役の鈴木さん、ちょっと威厳がなかった。一路ちゃんが堂々としているだけに、普通のお兄さんに見えた。やっぱり宝塚って、皇帝とか皇后とか、非現実的な芝居はおはこだね、うまいものだ。

 正直、宝塚の方がいいと思った。アンサンブルの迫力も、ヅカのほうがあったと思う。人間シシィの物語になっていた。

 

 帝劇
配役 エリザベート 一路真輝
  トート 内野聖陽
     
 トートが役替わりで内野さんになったバージョン。内野さんはミュージカルは初めてだとかで、私より先に観にいった友人は、歌が今一つと言っていた。実は私自身、歌はよく分からなくて、よっぽど変じゃなければ気にならない。ダンスと芝居の雰囲気重視なので、内野さんのトートは、結構気に入った。山口さんのように歌いあげる、というのではなくて、とても自然に歌っていた。途中声がかすれるくらいなのが、むしろトートっぽかった。トップレスのダンサーズのダンスとも合っていたし、えげつない演出にも違和感のないトートだった。私的には、内野トートの方がおすすめ。

 

 宝塚(花組)
配役 トート 春野寿美礼
  エリザベート 大鳥れい
  フランツ・ヨーゼフ 樹里咲穂
  ルキーニ 瀬奈じゅん
  ルドルフ 彩吹真央
     
 神秘的な妖艶さを持つ一路トートとは違って、エロティックな妖艶さのオサトート。感情豊かなのだけれど、姿月トートのように子供っぽくなくて、大人の男の魅力がたっぷり。こんなに多くの人が演じているトートなのに、また全然違うトートが見られた。
 大鳥れいは、落ちついた雰囲気の美しいシシィ。樹里フランツが、普通の感情を持った人間なのに、公務の為に自分を押し殺している感じがよく出ていた。
 瀬奈ルキーニは、トートの手先というより、トートに心酔していた。轟ルキーニは別格としても、麻子ちゃんのルキーニもなかなかのもの。はっちさんのゾフィが、宮廷でただ1人の男と称されるのが分かる、卓越した迫力だった。
 歌唱力も、皆すばらしかった。

 ひとりひとりのキャラクターがしっかりしていて、誰かひとりが中心の話というのではなく、全体としてまとまっていた。あえて言うならトート。同じトートでも、雪組はトートの存在がメインだったのに対して、花はトートの感情。
 これまでの中でマイベストです。

 

 宝塚(月組)
配役 トート 彩輝直
  エリザベート 瀬奈じゅん
  フランツ・ヨーゼフ 初風緑
  ルキーニ 霧矢大夢
  ルドルフ 大空祐飛
     
 配役を聞いて、信じられなかった。エリザベートに男役、それも男っぽくて歌が得意分野ではない瀬奈じゅん!実際は、想像していたよりは立派に歌っていたけれど、やっぱり何でわざわざこのキャストにしたかは不明。

 彩輝トートは、ぞっとする妖しい雰囲気があった。ただ、それ以上の個性は感じられず。あさこシシィは、とても普通っぽくて、これといった特徴が感じられなかった。肝心の主演2人が、ストーリーに追われているだけに見えて残念。
 初風フランツは、包容力のある大人の男。歌声も心地よくて、これまでの中で一番好きなフランツ。霧矢ルキーニは、芝居も歌も上手で、安心して見られる。
 脇を固めるキャストが、皆芸達者だったのはよかった。

 月組エリザの印象は、話題作り・・・かな。周りの役者がしっかりしているので、全体にまとまった感じはある。


 宝塚(雪組)
配役 トート 水夏希
  エリザベート 白羽ゆり
  フランツ・ヨーゼフ 彩吹真央
  ルキーニ 音月桂
  ルドルフ 凰稀かなめ
     
 宝塚2順目のエリザベート。これだけ再演を繰り返すと、自分の中で役のイメージが固まってしまうし、作品そのものを楽しむのでも、生徒さんの持ち味を楽しむのでもなく、どれだけ自分のイメージに近い演技をしてくれるかを見ている気がします。
 トートの水ちゃん、ビジュアルは最高に素敵なのだけれど、演技は普通っぽい。白羽シシィは、大人っぽくて落ち着いているので、シシィというより晩年のアントワネットのよう。
 彩吹フランツと音月ルキーニは、さすがに上手。ゾフィーの未来優希が怖かった〜。最強の姑。

 主演2人は役に合ってない感じだったけれど、全体としてはビジュアル系でした。



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