![]() |
花組
愛と死のアラビア Red Hot Sea 2008年7月21日 於・東京宝塚劇場 |
![]() |
オスマン・トルコ支配下のエジプト。イギリス兵トマス・キースは、戦争捕虜として囚われていたが、狙撃の腕前を買われて特別待遇を受けていた。トマスは、ベドウィン騎馬隊の指南役として暮らすうち、エジプト太守の息子トゥスンと篤い友情をはぐくみ、アラブ人たちとも理解しあうようになっていく。 だが、ある日決闘を行い、トマスは捕らえられてしまう。イギリスの戦友ドナルドや、トゥスンとの友情、砂漠で出会った娘アノウドへの愛に満たされて、恐れることなく処刑を受け入れる。 トマス・キースの真飛聖。最近白いイメージが強くて、ちょっと物足りない。トマスは、腕は立つけれどおごらないとか、敵国人を理解しようとするとか、好青年なのは確かだけれど、捕虜になって自分の国が恋しくないわけはないだろうし、もう少し影があってもいいのに。特にラスト、あんなにあっさり死を受け入れるというのが、作り物っぽくて何だかなぁ。死を受け入れたと言っても、やっぱり心残りがないはずないし、未練を残しつつ笑って処刑を待つ・・・なんて方が好みなんだけど。 アノウドも、今まで色恋っぽい話のひとつもなかったのに、急に「死んでも愛し続けるから、今宵一晩妻になってくれ」なんて言われて、彼が死んだ後どうしろと?アノウドに対して同情はしてても、恋愛感情を持っているように見えなかったし。囚われの身で、真っ白で豪華な衣装も、ちょっと違和感。 トゥスン、壮一帆。トマスとトゥスンの男の友情が、このストーリーのメインっぽかった。壮君は、今回も爽やかな好青年。お母さんにも「やさしすぎる」と言われるくらいで、トマスが大好きなのは分かるけれど、一応太守の息子なのだから、最後トマスが囚われたとき、そんなに感情のままに嘆き悲しまなくても。人の上に立つ立場にある人間は、ひとりの人の命より、政治的おもわくを優先させなくてはいけないこともあるのよ。 イブラヒム、大空祐飛。兄弟と言っても、トゥスンとは違って、冷静沈着な切れ者。トマスの処刑を聞いて、お父さんの立場も充分分かるけれど、それでもひとこと言わずにいられないとか、できればトマスを逃がしてやりたかった気持ちもあるけれど、立場的に耐えるしかないとか、祐飛くんのおさえた演技が格好いい。ひげとボルドーの衣装も似合っていて、出番は少なかったけれど、一押しです。 ドナルド、愛音羽麗。トマスの傷の手当てを、服の上からしていた人。ラスト白い軍服でトマスの前に現われたとき、豊太郎(@舞姫)かと思いました。トマスが、友人を置いて自分だけ故郷に帰ることに罪悪感を感じないでほしいと言うシーン、懸命に平常心を保とうとしているみわっちに、うるうるしてしまいました。 アノウドの桜乃彩音。ウーマンリブの女性とか、男を惑わす女とか、最近の役は全然彩音ちゃんにあっていなかったので、こういうけなげな昔ながらの娘役はあっていました。自分のピンチを救ってくれたトマスに、感謝と愛情を感じるのは自然な流れだけれど、トマスがアノウドに惹かれているようには見えなかった。無理にラブロマンスを入れなくてもよかったのに。 ナイリ、桜一花。太守の娘として、わがまま放題に育てられたからといって、ここまで気が強くて可愛げのない娘もありえないでしょう。いつもキュートな一花ちゃんなのに、本当に憎々しかった。最後、政略結婚でイギリスに嫁ぐことが決まったとき、これだけわがまま三昧だった娘が、文句ひとつ言わないのはさすがだけれど、その後出番がないので、どうなったのかが気になる。 ムハンマド・アリ、星原美紗緒。途中ずっと目をかけてきたトマスに、急に冷たい仕打ちをするのはどうして?と思ったけれど、星原さんを見て納得。太守だから、仕方なかった。さすが専科さんの存在感。 原作は知らないし、宝塚風にアレンジしてるのは承知だけれど、ラストのラブシーンがとってつけたよう。大恋愛ものだったらラブシーンで幕でもいいのだけれど、今回の場合は、トマスの処刑シーンを見るトゥスンとイブラヒムの様子とか、出国するドナルドとか、婚礼衣裳のナイリとか、もっと他に見たかった。 プロローグは、とにかく豪華でした。ピラミッドが開いたら、眼が描かれているセットもすごい。 副題に「高潔なアラブの戦士となった」とあるけれど、アラブの戦士にはなってないと思う。アラブ戦士の指南役にはなってたけど、彼自身はあくまで捕虜だったし、改宗したわけでもなかったし。話の途中で終わってしまったような、半端な印象が少しします。 ショーは、夏! 帽子にサングラスの祐飛くんが格好いい。かもめと海のナンバーも好きでした。引き潮のシーンは、情景が浮かんできます。浜辺での殺傷シーンは、ちょっといただけなかった。漁に行って死んでしまうとかならまだしも、なぜ争う必要があるの?フィナーレは、衣装も雰囲気も目新しかった。 |