花組
近松・恋の道行

2012年5月26日
於・日本青年館



 ストーリー1
 真面目一筋で生きてきた茶碗商の跡取り息子、嘉平次。 遊女おさがに入れ込み、身請けの代金を作ろうと金策するが、旧友・長作に騙され、追い詰められて心中する。

 一つ屋嘉平次、愛音羽麗。 ありえないくらい世間知らずと言うか、常識知らずと言うか、騙されて可哀想と思うより、見ていて腹が立ってきました。 真面目一筋で生きてきた男が、一度道を踏み外すと修正がきかない典型。 こんな男に人生かけてみようと思ったおさがは、見る目が無いとしか言えない。

 汝鳥さんの父親の深い愛に感動しました。 お父さんの気持ちを踏みにじって、本当に嘉平次はバカだ。

 長作、瀬戸かずや。 お人好しな嘉平次から大金を騙し取るワルなのだけれど、嘉平次がバカすぎるのと、あきら君が立ってるだけで格好いいのとで、つい応援(?)したくなります。 目立ついい役でした。

 ストーリー2
 小弁は赤穂浪士の妾の娘だが、今は身を持ち崩し遊女をしている。もと家臣の清吉は今でも小弁を慕っているが、身請けする金子も用意できず、心中しようとして未遂に終わる。

 清吉、華形ひかる。清吉も、嘉平次に劣らずヘタレ。 周りの人の尽力でハッピーエンドになったけれど、こういう情けない男ばかり。 生きるのは大変なことなのに、どうしてすぐ現実から逃げようとする!?

 もう1人現実逃避している近松門左衛門の息子・鯉助、春風弥里。 父親が偉大すぎて、自分の未熟さを知っているけれど、認めたくない。 父の金で遊興三昧、小弁が自分になびかないと知って口から出まかせを言ったことで、小弁と清吉が心中事件をおこす。 ちょっとからかうだけのつもりが大事件になって、そこまでワルでもないので、どうしたらいいか分からない。 お蝶の腕の中で泣き崩れている時の色気とか、最後笑うしかないむなしさとか、みーちゃんの演技には感動しました。

 ストーリーに難点はないし、演じている人にも文句はないのだけれど、なんか宝塚を見ている気がしませんでした。 もうちょっと宝塚らしい魅せ場が欲しいと思ってしまいました。