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花組
エリザベート 2003年1月28日 於・東京宝塚劇場 |
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BGM*愛と死の輪舞 |
エリザベート観劇7回目、うち宝塚だけでも4バージョン。もういい加減エリザベートも見尽くしたかと思っていた。
が!前言撤回。雪星宙のいずれとも違っていて、舞台の完成度もかなり高いものでした。 一応これがお披露目なはずの春野寿美礼。私的には、オサトートは最高に気に入りました。 歌唱力と妖艶さに関しては、一路トートにひけをとらず、麻路トートとは路線は違うけれど、躍動感のあるトート。 すらりとした容姿、低く伸びる歌声。椅子に座って足を組む、それだけの動きでも、妙にエロティックな妖しさ。 そしてなにより、男らしくて、人間味あふれる(死神なんだけど)魅力。 シシィがフランツ・ヨーゼフに書面を渡して最後通告するシーン。 この後、トートはシシィを招くが、はっきり拒否されてしまう。そこで、ぐっとこらえて、最敬礼して部屋を去るトート。 そしてドアをバタン!本当に、怒りの限りをこめて、叩きつけるように閉めて出ていった。閣下かなりプライド傷つけられて怒ってる、という感じ。 それからしばらく、壁によりかかったまま微動だにしないトート。初めての失恋に落ちこんでいる。 これが、子供っぽいのではなくて、大人の男らしくて格好いい。次に続くミルクのシーンが、シシィの仕打ちに憤ったトートが、民衆を貧困に追いこんだようにも見える。 貧血で倒れたシシィにすげなくされて、閣下2度目の失恋。人間風情に2度も煮え湯を飲まされたトート閣下は、シシィに対して、素直な恋愛感情なんて持てません。 ルドルフを亡くしてトートにすがるシシィを、冷たく突き放す。 これまでのトートが、なんですがるシシィを突き放すのか分からなかったけれど、オサトートはよく分かった。 自分をこんなにむげに扱ってきたシシィを、あっさり受け入れてなるものか、死を恋焦がれるまで愛さない限り、苦しみ続けろ、という感じ。これが本当に男らしくて。 さらに、シシィの前や黒天使の前では、絶対に弱みを見せない。 ひとりになったら、失恋の痛手で壁に張りついて動けなくなっても、見ているものがいる前では、かなり虚勢を張っている。 こんなに感情豊かで、男らしい上に、妖艶で、すっかりお気に入りです。 エリザベートの大鳥れいも、さよならにふさわしく、美しかった。 正直言って、今まで上手とは思ってもきれいと思ったことはなかったのだけれど、今回のみどりちゃんは輝いていた。 心配していた少女時代も、無理なく可愛かったし、後半は本領発揮の実力派。みどりエリザは、気が強いとかきついというのとは少し違う、芯のしっかりした女性だった。 トートが誘惑しても動じないし、ヒステリックになることもなかった気がする。みどりちゃんの持ち味の落ちついた感じが、いい雰囲気に出ていた。 フランツ・ヨーゼフの樹里咲穂。これまでの皇帝がノーブル路線の人が多かったので、庶民的な皇帝にならないか心配だったのですが、結構いい味でていました。 若い頃のフランツが、シシィに見せる笑顔。樹里ちゃんは本当に楽しそうに笑うので、人間味あふれる皇帝という感じがする。 そういうフランツだから、公務の為に無理して自分を押し殺しているのが見えて、後半ニコリともしないのが痛ましいくらい。シシィを愛しているのがよく分かるフランツだった。 皇太后ゾフィ!ただでさえ爽やか路線から程遠い夏美ようが、よりにもよってゾフィとは。 さぞ迫力のあるゾフィだろうと思っていたが、予想に違わぬインパクトだった。シシィに対しても、嫁姑の争いとか、無作法な皇后をしつけようとかいう以上に、 宮廷での覇権を争そっているように見えた。ゾフィが、宮廷でただひとりの男と評されるわけが、はっちさんのゾフィを見ていると分かった気がする。 ルキーニも難しい役だと思うが、瀬奈じゅんが想像以上によかった。 ダークなキャラクターのリカちゃんやわたる君ですら、ルキーニではどこか物足りなさを感じたのに、アサコちゃんがこんなに濃いキャラを出せるとは、感動。 アサコルキーニは、トートがとても好きらしい。手先につかわれているというより、トートに心酔しています、というのが見える。 最後の証言のシーンで、トートと同じ振りを踊るルキーニが、嬉しそうだった。最近、トップ&2番手コンビいうのが薄れつつあるので、オサ・アサコンビは貴重です。 2幕はじめのアドリブも、なかなか辛口で爆笑でした。美女を探して会場を見渡すのだけれど、ダメだ、という風に首を振る。 やっと見つけて三脚をセットしながら、「そこの貴女ですよ。照れる歳じゃないでしょ!」なんて言ったりして。アドリブが楽しいと、次見に行くのが楽しみになります。 ルドルフの彩吹真央は、思った通り安定した演技だった。 闇が広がる、私が一番好きなナンバーなのですが、トートもルドルフも、ルックスも役にあっているし、歌も上手だし、とても満足でした。 トートがキスするところも、何とも妖しげでいい。 今回あえて難をつけるとすると、マデレーネ(舞城のどか)のお色気が足りないこと。 シシィを愛しているフランツなのに、思わず迷いが出てしまうほどの魅惑的な女性でないと。あと、病院訪問のシーンで女官(鈴懸三由岐)が泣き崩れるのがわざとらしく感じた。 あそこは、変に芝居しない方が真実味があると思う。 ひとりひとりのキャラクターがしっかりしていて、全体のまとまりもよくて、今まで見た宝塚版エリザベートの中で、一番気に入ったかも。 |