花組
はいからさんが通る
2020年10月22日 / 11月5日
於・東京宝塚劇場



 はいからさんこと花村紅緒と陸軍少尉の伊集院忍は、祖父母の代から決められている許嫁同士だった。 初めは決められた結婚に反発していた紅緒だが、少尉の人柄に触れるうちに心惹かれていく。 少尉がシベリア戦線に駆り出され、やがて負傷して行方知れずになったという報が届く。 紅緒は伊集院家にとどまり、家を守りながら少尉の無事を信じて待っていた。

 初演の「はいからさんが通る」を見に行ったと思い込んでいたのですが、観劇日記に残ってなくて、チケットが取れなくてスカステで見ただけだったのだと思い出しました。 舞台での初観劇です。

 柚香光くんの少尉は漫画から抜け出てきたみたいで、これ以上ないほどの当たり役。 ビジュアルも雰囲気も本当にぴったりで、文句のつけようがないです。

 華優希ちゃんの紅緒さんは、元気いっぱいで可愛くて、まさにハイカラさん。 ちんくしゃ設定になってるけど、華ちゃんの紅緒さんは普通に可愛い。 素直に応援したくなる、王道の少女漫画のヒロインです。

 狼さんこと鬼島軍曹の水美舞斗、これまたぴったり。 男らしい存在感とキレのあるダンスもいいけど、かれー君との並びがまた絶品。 シベリアでの離別のシーンなんて、ベルばらかと思うほどの見せ場だし。 見せ場も増えて、嬉しい限りです。

 蘭丸の聖乃あすか。 女装することが多いから、女の子じゃなくて女形なんだって分かるくらいの少年っぽさが欲しい。 前回より多少女々しくなくなった気はするけど、何かぱっとしない。 外様トップが長くて花組男子らしいイケメンさを学んでなかったのなら、代替わりして変わってくれることを期待します。

 ラリサ、華雅りりか。 ビジュアルは好みじゃないし、前回はべちゃべちゃして可愛げのない女だと思ったけど、今回少尉とのシーンで思わず泣いてしまった。 サーシャじゃないと分かってても、すがるしかなかったんだって伝わってきました。

 続いて役替わりの人たち。
 編集長さんは、鳳月杏に代わって瀬戸かずや。 個人的に鳳月はどうしても好きになれないので、あきらになって嬉しかった。 ロン毛は心配したほど似合わないことはなくて、男気ある編集長さん、素敵でした。 冗談社の限りなく右肩下がりのグラフとか、蕁麻疹が出て気絶するコメディシーンも絶妙だし、堅物偏屈なだけじゃないのがいい。 2幕はだいぶ端折ってたけど、それでも十分紅緒さんへの想いは通じました。

 環の音くり寿。 演技に不服はないのだけど、美伶ちゃんに比べて華がないんだよなあ。 そこだけが残念です。

 ライオン丸こと高屋敷、永久輝せあ。 出来上がってるキャストの中に無理やり突っ込んで、さらに出番も増やしたものだから、取ってつけた感が否めない。 できればひとこちゃんに蘭丸やってもらいたかった。

 牛五郎の飛龍つかさ。 たそと比べるのは無理ってものだけど、頑張って好演してた。 前回の映像見返したら、人力車はなかったんですね。

 吉次、朝月希和。 芸者の風格、大人の女な感じは良かったけど、これでトップ娘役に就任するのは微妙すぎる。

 関東大震災のシーンは、本当に劇場が揺れてるんじゃないかとドキドキしました。 照明と音響が素晴らしい。 結婚式と少尉&ラリサのシーンが上下2段に分かれて同時進行する舞台割も目新しくて良かった。
 最後女学生たちが歌いながら出てくるのが、数年前は紅緒があの中にいたのに、いろいろあったんだなって思えて感慨深い。

 今回のフィナーレは黒燕尾バージョン。 正統派花組男子って感じで、いいですね。 これからの花組が本当に楽しみです。

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 2回目の観劇。

 前回は黒燕尾の浪漫バージョンで、今回は軍服の大正バージョン。 ラフマニノフの楽曲に合わせたシルバーの軍服、フォーメーションが凝っててこれはこれでいいのですが、個人的には黒燕尾の方が花組って感じがして好きでした。 軍帽で顔が見えにくいってこともあるかも。

 前回帰宅してから初演の録画を見直したたら、ちょっとずつ違いがありました。
 少尉のシベリア出兵の流れ、紅緒が手紙を読んでるところから戦場のシーンにつながる初演の方が、スムーズで良かったと思う。 マリンカの花は重要なアイテムだから、ここは省略しないでもらいたかった。 逆に鬼島の説明セリフはいらなかった。

 ケガした少尉が何事もなかったかのようにラリサさんと話してるのがちょっとした違和感だったのだけど、初演はそこで紅緒と話すシーンが入ってたんですね。 紅緒の話し相手が編集長に変わってたけど、ここは少尉のままが良かった。

 2幕のプロローグ、新しい時代の幕開け的な歌なのに、着物姿の高屋敷が加わってるのはちょっと違う。 ひとこちゃんの出番を増やすための苦肉の策なのは分かるけど、無理やり感が半端ない。

 このあたりは初演の演出が好きだったけど、今回の方が好きだったところもいろいろありました。
 最初の女学校で先生が出てきたり、冗談社で紅緒がどたばたするところとか、コメディ色が強くなってて面白かった。 はいからさんが通るって、何だかんだ言ってコメディシーンがポイントだと思う。
 結婚式と少尉&ラリサの場面が上下で同時進行する演出、左右じゃないから一度に目に入ってくるんですよね。 これはやっぱり秀逸です。

 昔原作読んだ時から、鬼島と編集長さんはお気に入りキャラだったんですけど、どっちも期待を裏切らない。
 マイティの男らしさ、ベタベタしないやさしさ、どこまでも鬼島っぽい。 パレードの鬼島は両目開いてるんですね。 片目のままダンス踊ったりするの、大変だろうな。 そういう意味では、草履でピルエット回るひとこも大変だったと思う。
 あきらの余裕ある大人の男っぷり、これぞ編集長さんです。 そのままだと面白みのない男なんだけど、要所要所でコメディ入れてくるのがたまりません。

 そして、少女漫画から抜け出てきたみたいなかれー君の少尉。 侯爵のマント姿はため息ものです。 これぞ宝塚。 今後もかれー君には耽美系の少女漫画を期待します。