シドニー 花組
二都物語


2003年10月28日
於・日本青年館
ルーシー


 生きる意味を見失ったシドニーが出会った女性、ルーシー。彼女の幸せのためには、自分の命をかける価値があると、ルーシーの夫の身代わりとして死を選ぶ。

 プロローグなし、フィナーレなし、台詞メインの暗い舞台。特に1幕、シドニーが酒場でクダをまいているシーンと、同じくシドニーがルーシーに告白するシーン。動きもなく、ず〜っと台詞ばかりで、少し飽きた。歩き回ったりして、メリハリつけてもよかったんじゃないかと。それと、シドニーが生きていても仕方がないと思うほどの、何が過去にあったのか、全然描かれていなくて分からなかった。長台詞を減らして、それを入れてもらいたかった。

 シドニー・カートンの瀬奈じゅん。1幕ではやる気なさそうにぐで〜っとしてて、お願い笑って!と思わずにはいられなかった。あさこちゃんの笑顔が好きなもので。ルーシーのストーカーやってるし。2幕に入って、ルーシーのために命を捧げようと決心してからのシドニーは、深酒もせず生き生きしていた。最後ギロチンに向かっていくところは、吹っ切れたような笑顔さえ見せていて。愛する人のために自分の命を捧げるんだ、という思いつめた感じではなくて、何の価値もないと思っていた自分でも役に立つことがあるんだ、という喜びすら感じられた。
 白いマントと、黒いマントが素敵だった。マントをひるがえして、雑踏の中を歩き回るシーンに惚れ惚れ。マントの似合う男役さんって、いいですよね。
 シドニーとチャールズが瓜二つだという設定だけれど、あさこちゃんとゆみこちゃん、全然似てない。あさこちゃんとおさちゃん(それに水ちゃん)、昔は見分けられなかったころもあったけれど、この2人はタイプ違うからなあ。仕方ないことですが。

 シドニーが命をかけたルーシー、桜乃彩音。ふんわりとした口調で、おだやかなお嬢さんという感じ。もう少し包み込むような包容力があるといいけれど、大抜擢なのを考えると、まあこんなものでしょう。

 チャールズ・ダーネイの彩吹真央。シドニーが陰の人ならば、チャールズは陽。ルーシーはチャールズと一緒になったほうが幸せだ、とシドニーが思うような、正しくて明るい人生を歩む人。・・・だと思うのだけれど、ゆみこちゃんのチャールズは真面目すぎて、魅力を感じなかった。亡命したり、何度も裁判にかけられたり、貴族社会と自分の理想の間で悩むこともあるだろうけど、それでも陽のあたる人生を生きている明るさがほしかった。チャールズ亡き後、ルーシーを見守るという方法もあったのに、あえて自分の命を捧げてもチャールズを生かそう、とシドニーが思ったのは、チャールズにそれだけの魅力があったからだろうと思うのだけれど。

 今回、脇が芸達者だった。
 侯爵夫人の梨花ますみ。甥がなんと言おうと、貴族は絶対的な存在ですという揺るがない信念。逆に、テレーズの水月舞は、貴族はみんな悪だから、情け容赦なく処刑する。それぞれの立場を考えると、どっちも分かる気がする。ドファージュの矢吹翔は、渋くて存在感がすごい。アニキと呼ばせていただきます。本当の男性かと思ってしまう。
 バーサッド、真丘奈央。嫌味な感じがうまかった。最後、シドニーが連行されていくときに、やじ馬に静かに見送ってやれ!と一喝するところがよかった。
 暗い役が多い中で、ストライバーの悠真倫と、ジェリの華形ひかるが明るくてほっとした。パンフレットを見たら、ジェリ=ロリーの用心棒となっていたけれど、用心棒だったの?部下だと思ってた。パリが危険な状況になっている、なんて真剣な話しているときに、端でけんだまして遊んでいるような用心棒はいないって。可愛かったけど。