忠輝

花組
野風の笛

レヴュー誕生

2003年8月28日
於・東京宝塚劇場

主水


 徳川家康に、鬼っ子と疎まれて養子に出された忠輝。自由奔放に暮らしていたが、やがて政権争いに巻き込まれていく。ストーリーは詰め込みすぎなのか、ちょっと?というところもあったけれど、途中から、そんなことはどうでもよくなってしまった。なにしろ主役コンビ(轟&春野)が格好よくて。

 幕開け、鳳凰の衣装の轟悠が、存在感のある歌声を聞かせて、さすがと思っていたら、次は大階段に紫陽花の衣装の春野寿美礼。こちらはさわやかな若衆で、どちらも全然カラーが違うのだけど、素敵。まさにダブルトップ!私は、いしちゃんもオサちゃんも好きなので、純粋にうれしい。

 轟悠の松平忠輝。和ものは十八番の雪組仕込み。自由奔放で、ちょっと悪戯な少年っぽい感じも、浅茅が宿の頃のいしちゃん健在。渋いおじさんばかりが、いしちゃんの持ち味じゃないのよ〜。いろは姫には情をかけてあげないし、戦は好まないとか言って酒のんでるだけだし、よく考えると何もしてない気もするけれど、ただいるだけで只者ではないような気がするところが、さすがいしちゃん。男だなあ。

 忠輝と兄弟のように育てられた花井主水正、春野寿美礼。父上が切腹するぞって言ってるのに、忠輝と一緒になってからかって、なんて薄情な息子。いしちゃんの悪戯っ子な軽いノリに、おさちゃんも乗って、この2人いい感じ。最近のおさちゃん、暗い役が多かったから、こういう楽しそうに笑う役が久しぶりに見られて幸せ。やっぱりおさちゃんは、笑ってこそだと思う。
 でも、さわやかなルックスのわりに思い込んだら一直線。殿のために、陰腹切ってまで直訴して。頼んでもないのに命までかけて、本当だったら迷惑な奴だろうけど、おさちゃんの熱演にメロメロ〜。格好よすぎです。今回おさ&あさはないのかと思ってたら、笛を託すシーン。主水と宗矩は、たいした仲ではないと思うのに、目と目を見つめあって遺言までしちゃって。
 いしちゃんとおさちゃんは、あれだけ仲睦まじくていい感じなのに、あくまで同士で、どちらかがどちらに依存しているっていう感じではない。おさちゃんがもっとセカンドっぽい感じになるのかと思っていたけれど、おさちゃんもトップ、いしちゃんもトップ、一粒で2度おいしい芝居だった
 あと、これはアドリブかな?というシーン。主水がふざけて切腹する真似をするところで、いしちゃんが、後ろからおさちゃんをドンと押して、おさちゃんが刀の上に転んだ。本気であせったらしいおさちゃん。主水の顔から、素の顔に戻って目ぱちくり。思わず「セーフ」と。その様子を見て、ひとしきり笑ってたいしちゃんが、「セーフというのは南蛮の言葉なのかな?」とつっこみ入れてるし。舞台上で、あんなに素になったおさちゃんを見れるなんて、ちょっと得した気分。その後忠輝も、すぐに台詞が出てこなかったし。

 柳生宗矩、瀬奈じゅん。柳生宗矩は、にこりともしなくて面白みなかったけれど、最初の傀儡師があさこちゃんらしくて、楽しそう。それにしても狂言回しの長台詞、覚えるの大変だったろうな。

 豊臣秀頼の彩吹真央。和ものは似合うし、若殿らしくて素敵なのだけれど、今回もお母さんがネックらしい。3作連続ママがらみのキャラでした。もう少し、威厳があるとよかったかも。死を覚悟した人の、吹っ切れた明るさというよりは、お気楽な殿と言う感じに見えてしまった。

 娘役は物足りなかった。五郎八姫(←漢字で書いたら読めない!)のふづき美世。相手役さんがあれだけ男らしいのだから、もう少し落ち着いた声で話してもいいと思う。らぶらぶじゃないけど、殿とは通じ合うものがあるとか、愛情が分かるから身をひくとか、表現できなかったのかなあ。忠輝のほうは、そんな感じで演じてるのに。いろは姫に言い寄られて拒む主水もずいぶん冷たかったけど。この想い隠して、と歌ってはいるのだけれど、誰に対する恋心か分からなかった。殿ってことはないよね?
 千姫(桜乃彩音)にいたっては、なんだったんだろうって感じ。ま、今回男役さんが格好いいから、いいんだけど。

 レヴュー誕生!最初から最後まで、息継ぐ暇がなかった。
 せり上がりでおさちゃん。その後は大階段を順に、いきなり羽背負ってのプロローグ。華やかな幕開け。

 白いロングコートに帽子の、ちょっと不滅の棘風男役さんたち。素敵〜!いしちゃんとおさちゃんが、見つめあいながら愛の賛歌を歌うのだけど、歌詞が妖しいわりに、全然妖しくない。男同士、正々堂々としてて。銀橋の2人も素敵だけど、舞台上のダンスも格好よくて、どこ見たらいいのやら。
 楽しいボヘミアンのおじ様たちに続いて、今回一押しの麻子ちゃんのクレアトール!ばりばりのオネエキャラが、めちゃくちゃ可笑しい。それにあのダンスナンバー、かなりハードなはずなのに、笑顔で元気に歌って踊って、すごい。あんなに怪しいファッションを着こなしてしまうのも大したもんだし、麻子ちゃんに拍手。
 爆笑から一転して、今度はクロード風トレンチコートのおさちゃん。トレンチも格好いいけど、その後のスーツ姿の男役さんのダンスが、大好き。昔の花組って感じで。

 そして、私の心臓爆発のスワンレイク。ジークフリートを妖しく誘惑する黒鳥。不敵な笑みのあさこちゃんに、心奪われるおさちゃん。本当にすごすぎる!今まさに結ばれた2人の間に、オデット姫が割って入ってきて、何てお邪魔虫なふーちゃん。このまま2人で、地の果てまでも堕ちていってほしかったのに。軍服姿の王子も、それはそれで素敵だったからいいのだけれど。銀橋には、メイク変えした麻子ちゃん登場で、本当に今回大活躍。

 42ndストリート風スター誕生も、華やかで楽しい。
 いしちゃんの歌とロケットで、やっとバクバクの心臓をおさめることができた感じ。今回、オペラで追いかけるのが大変だった。ここまでヒットなショーは、なかなかないです。