ヴィットリオ

花組
落陽のパレルモ
Asian Winds!

2006年1月24日
於・東京宝塚劇場

ロドリーゴ


 2回目の観劇。感じたことは、ほぼ1回目と同じでした。今回は時系列に感想文。

 プロローグの戦闘シーン。イタリア軍の朱とモスグリーンの衣装と、フランス軍の赤青白のトリコロールの衣装の対比が、宝塚らしくて綺麗。そして、ダンスシーンの迫力。熱い想いが伝わってきます。

 モンデーロ村での再会は、うって変わって明るいムード。大きな改革を望んでいるわけではない、ただ仲間が幸せに暮らせればいい、そんなニコラたちの優しい気持ちがあふれている村。でもヴィットリオは、そんな故郷でも本当の居場所とは思えない。父に捨てられた悲しい少年時代を、アンリエッタに笑いながら語るのが切ない。
 サン・ベネディクトの祭が楽しそう。プロローグと同じ人たちとは思えない。ニコラたちには、いつまでもそのままの笑顔でいて欲しかった。

 アンリエッタに、ヴィットリオを愛していると告げられたロドリーゴ。ロドリーゴが、本当にお貴族様で格好いいんです。まとぶん、正統派のルックスで、貴族の衣装もよく似合って、マントをひるがえす様子が誰よりもさまになっているし。「私には貴女の心が見えない」という台詞が好き。(カフェブレイクで、まとぶん本人もこの台詞をあげていました。)熱い思いをたぎらせるニコラたちの愛とは違って、もっと奥深くて激しく現われないのだけれど、しっかりアンリエッタを愛してるのが分かる。
 その割りに、ヴィットリオとアンリエッタの愛が見えないのだけれど。ヴィットリオはあまり感情を表に出さないタイプで、奥深く気持ちを燃やしている感じはするけれど、ふーちゃんはもっと愛してますオーラ出してほしい。台詞だけ上滑りしてる。

 別次元の2人、ヴィットリオFとジュディッタ。愛し合っているのがすごくよく伝わってきます。ゆみこちゃんの天真爛漫な優しさは、不安を抱えているジュディッタには心強いでしょうね。あすかちゃんも、相手への愛には何の不安もないけれど、愛し合っているからこそ別れるべきという、複雑な心境の表現がとても上手い。

 ついに動き始めます。ニコラたちのマチルダ誘拐。家族を殺されて我慢の限界を超えた、こうするしか他に方法がなかったという、ニコラの切羽詰った気持ちが伝わります。マチルダに対しても、あくまで優しいニコラ。ヴィットリオに対して、激しく語る様子が心に響きます。そして銃殺。もうこのシーンは、うるうる。こんなにも仲間や家族に慕われていたニコラが、なぜ命を落とさなければならなかったのか。せめてこの無念、貧しい人たちにも生きる権利があるという思いを、ヴィットリオに引き継いでもらいたいです。(でもラスト、完璧忘れてるんだよ〜。)

 アンリエッタは、亡くなった母の願い、貴族としての責任を捨てきれず、ヴィットリオに別れを切り出します。ジュディッタと似たような状況なのだけれど、やはりふーちゃんには引き裂かれるつらい想いが感じられない。ここは、本当に演技力が必要とされると思うので、芝居上手な女役さんで見たかった。涙なくしては見られないシーンになったはず。

 その後の幻想シーン。幼いヴィットリオの前で、母親が投身自殺するところ。季帆ちゃん上手。ニコラの最期と2本柱で、涙涙のシーンです。それに続くおさちゃんの歌声が、また切なくて。
 ヴィットリオ&アンリエッタ、ヴィットリオF&ジュディッタのデュエットに、母フェリーチタの歌声が重なる。前回季帆ちゃんのマイクの調子が悪くて、途切れ途切れの音声だったので、今回初めてきちんと聞けました。きれいな歌声が、一層狂気を引き立てる。

 そして、絶対に納得できないラストシーン。確かに、ヴィットリオは父親や貴族を恨んでいたわけではないようだけれど、自分が貴族の仲間入りして大団円ではないでしょう。あんなに熱い想いを託して死んでいったニコラたちを、忘れてしまったの?ヴィットリオには、公爵の申し出を断ってもらいたかった。少なくとも、貴族の仲間に入るのならば、その場で亡くなった故郷の人たちの無念を語って、新しい時代を作る宣言のひとつもしてもらいたかった。身分違いの恋に正気を失い、亡くなった母の無念。故郷を想って亡くなった、ニコラたちの無念。それを背負って生きてきたヴィットリオなのに、急に性格変わってしまったようで残念。
 貴族らしいプライドと男らしさを持っていたロドリーゴも、普通に物分りのいい青年になって去っていったのが物足りない。ひと悶着しろとは言わないけど、何かあっさりしすぎ。

 人種差別のない国に行って、2人の生活をおくろうというヴィットリオFとジュディッタのラストは好きです。信念を曲げないところは曽祖父譲り。でも、無理やりことを荒立てずに、2人の幸せを最優先させるというのが、ゆみこちゃんの持ち味と上手く混ざって、いい感じでした。愛されている演技というのが存在するんだと痛感した、今回のあすかちゃん。専科に行っても、素敵な女役さんとして活躍してもらいたいです。

 ふーちゃんの演技とラストシーンさえなければ、途中は好きでした。

 ショー。モンゴルと上膳如水は、本当に好き。基本的にらんとむビジョンなのだけれど、今回まとぶんも目が行きました。同じシーンに出ていることが多くて、しっかりは見られなかったのだけれど、いい感じ。大人っぽくセクシーなさおたさんのダンスに、男らしい骨太な園加ちゃん。元気なパワーをもらえるらんとむ。この3人の並びも見納めなんですね。花組の好きな人がバラバラになってしまった・・・。