底抜けに明るいハッピーコメディ「TOP HAT」の裏は、アンニュイなゴシックホラーでした。
久しぶりのパリに戻ったオクターヴは、先にパリに帰った姉アンブルと共に下宿屋に身を寄せる。 幼いころ自殺したとされる父だが、真相は母と再婚した叔父や母による殺害だった。 そう確信しているオクターヴは、復讐を胸に秘め、機会をうかがっていた。 下宿に住むヴァランタンにそそのかされ、オクターヴは1人の男を殺害する。 そこから忘れていた過去、父の死の真実を知ることになる。 3人のエリーニュス(咲乃深音、芹尚英、三空凛花)、復讐の女神らしいけど、亡霊とか登場人物の良心の呵責と言ったイメージのコロス。 白塗りに血染めの衣装がインパクト強くて、ある時は晩餐のテーブルの下から、ある時は主人公の病床の枕元で、妖しい雰囲気をかもし出していました。 劇場のダンサーや屋敷の使用人として現実社会にもかかわってくるし、ダンスも見事で引き込まれました。 オクターヴ、アンブルの姉弟は、復讐に燃えるって感じじゃなくて、もっと内向的と言うか哀しみにとらわれてるって言うか。 結局2人で肩を寄せ合って生きていくしかない、業を背負ってる悲しさを感じました。 それは叔父と母も一緒なんだろうけど。 オクターヴの永久輝せあ。 育ちの良さそうなお坊ちゃんだけど、周りとは打ち解けない影がある。 本当は復讐なんて無縁の穏やかな暮らしが似合いなのに。 ひとこちゃんの爽やかなイメージが陰湿になりすぎず、ちょっと甘えた感じも絶妙でした。 姉アンブル、星空美咲。 銀ちゃんの小夏の時も思ったけど、下級生なのに落ち着いた雰囲気を出すのが上手。 オクターヴはアンブルと恋人的な関係になりたそうだったのを、「私たちは姉弟だ」とやんわり距離を置くように諭すのがいい。 いろんな業を抱えてしまった2人が、何もなかったみたいにハッピーエンドじゃご都合主義ってものです。 下宿のダンスナンバー、ノリがよくて盛り上がるのに、ものすごく退廃的。 絵具をまき散らしたような衣装に汚れメイクで、エリーニュスに続いてインパクト強い。 誰も現状に満足してるわけじゃないけど、皆がみんな立ち上がって戦おうと考えることはなくて、その場限りの楽しさを見つけて暮らしている。 その中から世の中を転覆させたいと考える若者が現れるのも、なるほど納得です。 アナーキスト、ヴァランタンの聖乃あすか。 今までふわふわしてて男役っぽい骨太さがなくて好きじゃないと思ってたけど前言撤回。 誰だか分からないくらいインパクト強いメイクで、とてもワイルドにイメチェンして良かったです。 2幕で屋敷に押し入ったところは迫真の演技。 すごかったです。 唯一の救いが義弟ミッシェルとフィアンセの清涼感あるカップルの存在。 ミッシェルの希波らいと、表面芝居っぽく見えてしまって残念。 想像してたほど救いのない悲劇ではなくて、独特の世界観に引き込まれました。 「龍の宮物語」も独特の世界観が好きだったし、指田先生楽しみです。 フィナーレがちゃんとあったのが良かったです。 あのままラストだとちょっと重い。 |