ファントム

花組
ファントム

2006年9月15日
於・東京宝塚劇場

クリスティーヌ


 オペラ座の地下に住むファントムは、クリスティーヌの美しい歌声に魅せられ、独自に歌のレッスンを行う。クリスティーヌに嫉妬するカルロッタが、クリスティーヌの初舞台を妨害したことにファントムは憤り、クリスティーヌを地下深く連れ去ってしまう。ファントムの悲しい過去をクリスティーヌに語る前支配人、キャリエール。クリスティーヌを助けようと、ファントムを追うシャンドン伯爵。最後ファントムは、クリスティーヌに抱かれながら、息をひきとる。

 宙組に続いての上演。前半、ファントムとキャリエールの場面が増えていて、最初から親密な関係にあるのが分かるようになっていた。黒天使のようにまわりにはべっていたのが、実はもと浮浪者で、食べさせてやらなければ死んでしまうなんて台詞があったけれど、現実的すぎて嫌。格好いいからいてもいいのだけれど、エリックの孤独を際立たせるには、せめて実体のない存在にしてほしかった。

 ファントム=エリック、春野寿美礼。もう正直おさちゃんには飽きてきているのだけれど、劇場に響き渡る歌声はさすがです。
 たかちゃんのエリックは、もっと透明感があるというかドライというか、オペラ座に住む怪人という神秘的な感じがしたけれど、おさエリックは、キャリエールとのシーンが追加されていたこともあって、どこまでも人間っぽい。少年っぽさでは、たかちゃんの方が無理なく役に合っていた。おさちゃんは、子供のように暴れたかと思うと、急に大人っぽかったり・・・
 彩音ちゃんに向けるまなざしは、優しかった。恋しているというよりは、母親の面影を重ねて、誰かの愛が欲しいだけかなとも思ったけれど。パパはずっと長いことそばにいて気を使ってくれて、10人以上の従者が常にいて、ママが自分をいとおしんでくれていた記憶もあって、クリスティーヌもやさしくて、花ファントムは宙ファントムほど哀しく見えなかった。

 クリスティーヌは、今回トップ娘役おひろめの桜乃彩音。とにかく初々しい。歌姫の設定なので、ちょっと自信なさげに音を探りながら歌うのが気になったけれど、役のイメージはあっていた。もう何年か先にトップ娘役に就任したら、舞台姿ももう少し堂々としてよかったのだろうに。
 エリックの素顔を見たときも、宙ファントムのときのように悲鳴をあげて逃げ去るなんていう酷いことはせず、固まって思わず逃げ出してしまっただけだったのがよかった。彩音ちゃんの持ち味が上手く出て、素直でやさしいクリスティーヌに好感持てた。

 キャリエールは、彩吹真央。気弱そうで、このパパでは息子を閉じ込めておくことしか出来ないだろうな。銀橋芝居は、樹里ちゃんのような熱っぽさはないけれど、穏やかなやさしさで包み込むような感じ。いつでもエリックを見守っていて、エリックもその愛情を感じていて、この場面ではじめてお互い口に出して確認しあっていて、切なさ以上に暖かさを感じました。

 シャンドン伯爵、真飛聖。前作から連続お貴族様の役が、本当に格好いい。貴族の衣装がよく似合っていて、やっぱり貴族はルックスが重要だと感じてしまいました。女の子たちに声をかけていても、さらりと爽やかなので嫌なプレイボーイには見えないし、クリスティーヌを助け出すと強い決心で歌っても暗い印象にならなくて、どこまでも貴族らしい。シャンパンの王様、素敵でした。

 アランの夏美よう。カルロッタの出雲綾。この夫婦は、かなりツボでした。オーバーアクションで軽そうなはっちさんが、楽しい。胸の花もいい。カルロッタも、悪役のはずなのだけれど、どこか憎めない。カルロッタが死んだ〜って嘆いているアランが、とてもかわいそう。

 芝居のプロローグのダンスナンバーがよかった。エトワールの季帆ちゃんの歌がとても綺麗。彩音ちゃんに文句はないけれど、おさちゃんと季帆ちゃんのデュエットだったら、さぞ聞きごたえがあっただろうな〜とちょっと思ってしまいました。