シニョール・ドン・ファン

月組
花の宝塚風土記
シニョール・ドン・ファン

2003年7月18日
於・東京宝塚劇場

BGM＊ドン・ファン～愛の放浪～

　和もののショー。和ものはよく分からないのだけれど、彩輝直の阿国が妖艶で美しかったのと、映美くららが和装が似合って可愛かった。洋装と和装では、ずいぶんイメージが違う。

　シニョール・ドン・ファン。ファッションデザイナー、レオ・ヴィスコンティの華麗なる女性遍歴。謎のブラックメールが届くけれど、身に覚えのありすぎるレオ。イタリアのリゾート地で起こる、サスペンステイストな、複数の男女の物語って、｢ガラスの風景｣と同じ設定！？しかもトップでないカップルが結婚してるし。

｢ガラス｣と全然違うところ。主役のレオ（紫吹淳）が、とても目立って格好いい。プレイボーイで自信家で、デザイナーズブランドの服を着こなして。ケンゾー、ベルサーチ、ゴルチェと、今までいろいろデザイナーズブランドの衣装はあったけれど、今回初めて、衣装が生きた気がしました。あんなに派手な衣装を着こなせるなんて、さすがりかちゃん。そして、濃い～！私好みのりかちゃんです。女性をとっかえひっかえして、ジョゼッペの意見なんて全然聞いてないようでいて、実は心の奥には不滅の棘が・・・（違う）。心の傷を隠すために女性遍歴を重ねているんだか、本当に女好きなんだかよくわからないところも、りかちゃんならでは。

レオのお相手たち。まずは、現恋人、パトリシア（紫城るい）。飾らない、元気なキャラクターが可愛い。レオの気をひくために、倒れるまでダイエットしてみたりするのだけれど、うじうじしていなくて、いい感じ。こういう女の子は、とても私好み。田舎のボーイフレンド、フィリッポ（月船さらら）となら、肩肘はらずにうまくいくだろうな。

昔の恋人、ローサ・ヘミング（美原志帆）。大女優だけれど、ピークはすぎたかな、というのが分かる。レオと自由な恋愛を楽しんでいた、と大人の女のふりをするけれど、やっぱり自分だけを見てもらいたいというのが、女の本音でしょう。スティーブ（大空祐飛）になら全てを任せられそう。妙に濃いマネージャーだけれど、しっかりしてて、いい人っぽそうだから。

次のターゲット、カトリーヌ（城咲あい）。あんまり印象残ってない。

思いっきり昔の女たち。｢はじめての女です！｣が決り文句の夏河ゆらさん・・・もう分かったから。怖いから。幕前にずらっと並んだ女たちの中に、エヴァやナタリーに似た人がいたような。

そしてジル（映美くらら）。昔の恋人にどこか似ていて、気になってしかたのないレオ。でも、恋愛感情ではない。ルックス的にも、年齢的にも、りかちゃんとえみくらではいまいち釣り合いがとれていなくて、どうしても妹か、下手をすると保護者に見えてしまうから、今回の設定は私的にはよかったと思う。

ジルの恋人、セルジオ（彩輝直）。トップさしおいて、トップ娘役とめでたくご結婚。ジルの行動に不信を覚えながら、いつか心を開いてくれると待ち続けた、白いイメージの青年。さえこちゃんのカラーとは全然違うけれど（←妖艶系）、彩輝史上最高に白い青年を演じていたと思う。そして、さえこ＆えみくらは、結構似合っていたかな。・・・とは言っても、最後ウェディングのシーンは、まわりの小芝居ばかり見ていて、ご両人はほとんど見ていなかったのだけれど。

レオの片腕、ロドルフォ（汐風幸）。派手ではなく、でも存在感があって、屈折しているようでいて、嫌な奴でもなく。今までの幸ちゃんは、割と地味目キャラだと思っていたので、今回が一番格好よかった。退団する人は、パワーが違うと言うけれど、そんな感じ。

レオの秘書、ジョゼッペ（北翔海莉）。本役はキリヤンだったのが、休演による代役。レオの尻拭いをさせられ続けて、大変～と言いつつ、あまり大変そうに見えない。さらっと演じていたので、登場人物多い中で、あまり邪魔にならず、程よい役回りだったように思う。大役大変だったろうけど、北翔流ジョゼッペとして、悪くないのでは。キリヤンだったら、きっともっとくどいんだろうな。

　サスペンスだけれど、あまり必要なかったのでは？ロドルフォが１０年前に出したブラックメール、それがもとでマリーが死んだところまではまだいいのだけれど、ジルがそれを根にもってレオを脅すっていうのは、逆恨みっていうんだよ～！レオが悪いんだと思って恨むのは勝手だけど、殺そうとしなくても。何不自由なさそうなレオが、触れられたくない過去を持っているというのは好きだし、寡黙そうなロドルフォが、実はレオをねたんでたというのも、ありだと思う。でも、いきなり銃はやめましょう。

ラスト、カップルたちを見守るりかちゃんが、花嫁の父のようと言うか、暖かい眼差しだった。無理にえみくらちゃんとカップルにしなかったところが、今回は大成功だと思う。りかちゃんも思いきりキザってくれたし、満足。