トート 月組
エリザベート


2005年4月19日
於・東京宝塚劇場
エリザベート



BGM*私だけに

 
 宝塚で5回目の上演。トップ男役、彩輝直のさよなら公演。トップ娘役不在。次期トップ男役の瀬奈じゅんが、タイトルロールのエリザベートを演じる。いろいろと話題先行の公演。さすがに5回目の再演となると、話題作りも必要なんでしょうか・・・

 一番心配していた、瀬奈じゅんの歌。娘役でも厳しいあの高音域を、麻子ちゃんに出せるのか。ドキドキしながら見ていましたが、「私だけに」のラストまで、きちんと歌いきりました!プロだから当然と言えば当然なのでしょうが、やっぱり頑張ったな〜という親心の方が大きい。
 ただ歌は頑張ってたと思うけれど、肝心のエリザベートの個性が見えない。娘役の大役を演じるのに精一杯で、役作りまで気が回らなかったのかな。普通の女性っぽかった。

 彩輝直。ビジュアル系トート。「最後のダンス」のさびの高音部分はなかなかのものだったけれど、低音部分がいつものさえこ節。ミハイル(薔薇の封印)?と思ってしまった。
 歴代トートそれぞれ個性があるけれど、私的にはさえこトートは、現われるとぞくぞくっと寒気がした。恐怖というのではなくて、悪寒がするというか。嫌なんだけど拒否できなくて、フリーズしてしまう感じ。

 今回一番いい役だと思ったのが、初風緑のフランツ・ヨーゼフ。ノーブルで、押しが弱くて、線の細いイメージが強かった歴代フランツ。(全員とは言いませんが。)がいちさんのフランツは、包容力があって、大人の男。耳に心地よい歌声で、若いシシィが、この人にだったらついて行けると思っても不思議はない。
 結婚式のシーンで、取り乱すシシィに向かって言う「皆が見ている。皇后らしくするように」という台詞も、今までのフランツにない優しい口調だった。軟弱な優しさでない、大人の男の包容力ある優しさ。いいなあ。

 霧矢大夢のルキーニ。出てきた瞬間から、イタリア人!歌も芝居も上手いから、安心して見ていられます。狂言回しの役回りも、堂に入ってて適役。
 2幕キッチュのアドリブは、銀橋から客席をず〜っと見渡して、さらに見渡して、やむを得ずといった風にカメラを向ける。「20年若くないと」みたいなことを言ってました。

 ルドルフ、大空祐飛。ビジュアルは思い切り好みです。声もあってる。きりやん同様、はまり役だと思う。
 子ルドルフ、彩那音。声質もルックスも子供らしくなくて、あまりぴんとこなかった。「ママどこなの」のシーンでは、今まであった台のようなセットがなくなって、柱だけ。とても孤独な感じがして、この演出は好きです。大人になってからも、同じように柱に寄りかかるポーズをするのが、とても印象的でした。

 エルマーの月船さらら。すごく熱演してて、感情もとても伝わってくるのだけれど、やっぱりアンサンブルの1人。エルマーはもっと若い年次の人が演じているイメージなので、ちょっともったいない気もした。
 「ミルク」の場面で、民衆が全員銀橋に出てくる演出になっていた。2階席からだと、舞台がからっぽに見えて、迫力が全然ない。1階席だとすごく迫ってくるように見えるのだろうけれど、2階席から見ている人のことも考えて欲しいなあ。

 ゾフィー、美々杏里。恐い。はっちさんは権力争いしている感じだったけれど、美々さんはまさに姑だった。
 嘉月絵里のマダム・ヴォルフも上手。えりちゃんは何を演じても上手なのだけれど、女役もいい。本当に役者だと思います。

 全体の印象。脇を演じている人たちは、役にはまっていた。突出して誰かがすごいというのではなくて、全体のバランスがいい。ただ主演2人が・・・。ひどいわけではないけれど、これといって特筆するような個性的なイメージがなくて、芝居の流れに乗せていっただけという感じがした。