月組
HOLLYWOOD LOVER


2008年1月22日
於・日本青年館



 40年代ハリウッド。新作映画の製作発表に、主演女優のローズと、夫でプロデューサーのリチャード、そして新進イタリア人監督のステファーノがいた。ローズとステファーノは共に無名だったころ恋人同士だったが、ローズがリチャードと電撃婚約したあと、別れたきりだった。8年ぶりの再会、お互いへの変わらぬ想いを確かめ合った2人は、逃避行を約束する。
 焼けぼっくいに火がついて、手に手をとっての逃避行。夫にばれてジ・エンド。先の展開が見えるありがちなストーリーなのだけど、それが逆に、生徒さんの演技に素直に入り込めました。

 ステファーノ、大空祐飛。大人の男っぷりが格好いい。ローズに捨てられた後も、故郷できちんと自分の生きる道を見つけて成功して、ローズのことを忘れたことはなくても、それだけを引きずっていない。シニョールドンファンのスティーブみたいにキザなわけでもなく、LAST PARTYのスコットのように弱くもなくて、今までの祐飛くんの持ち味とはまた違うのだけれど、大人の魅力にあふれてました。
 これだけ大人の男なのに、ローズと再会して逃避行の約束してしまうのが、逆に不思議でした。過去には戻れないから、いい思い出だけ心に残そうって言いそうなのに。
 ローズの死を知って、バーで1人で飲んでるところ、絵になります。ラスト空港で旅立つ後ろ姿も、サマになる。

 ローズ・ラムーア、城咲あい。気の強いわがままな大女優かと思っていたら、愛し方が分からなくて、自分から幸せに背を向けてしまう悲しい女性でした。あいあいは、情感豊かな役とか愛らしい役とか似合わないけれど、素直になれなくて、感情を表すのが苦手で、でも人目をひくローズは合ってました。
 ステファーノに再会したあと、もっと激しく愛があふれてる感じがあったら、あんなに大人なステファーノが道をあやまったのも納得できるのだけど・・・。
 レセプションで着ていた、バックにバラがデザインされた赤いドレスが、とても素敵でした。

 過去のステファーノとローズの幻影は、最初はよかったけれど、ちょっと多用しすぎた感じがします。

 リチャード・ローガン、遼河はるひ。実力はあるけどワンマンで嫌味な男かと思いきや、ローズ以上に愛に飢えた、可哀想な人でした。ローズが好きなのに、ローズのためにすることが、逆にローズを追い詰めてしまう。はるひ君の、上背があって見栄えがするけれど、演技上手でないところが、リチャードの雰囲気によく合ってました。
 ローズの愛が自分には向けられていないのを知って、それでもプライドが邪魔するのか、リチャードもローズと同じく感情を表現するのが苦手なのか、両方なんでしょうけど、ローズに直接言わずに心中することを決めてしまう。痛い愛です。

 ビリー、桐生園加&マギー、花瀬みずか。地に足つけた夫婦で、この2人が出てくるとほっとします。
 園加ちゃんは、宝塚の男役さんとして格好いいとかではなくて、一般の世界でこんな人だったら幸せな結婚生活が送れるだろうな、という本当に素敵なマイホームパパっぷりを見せてくれました。第2子のくだりは、そういうオチになるだろうと思った通りの展開で、ちょっとベタだった。

 レイ、越乃りゅう。ウォルター・ローガン、磯野千尋。渋いおじさまは、やっぱり芝居には不可欠です。
 レイは、リチャードが事故を起こそうとしているのを知って、それでも黙って見送る。それ程リチャードを敬愛していたのかと思うと、何も言わないけど切ないです。
 パパ・ウォルターは、さすがの存在感。息子が暴走してるのをさとすのも説得力あるし、息子の死を嘆くのも身にしみます。

 シーラ、五峰亜季は、ステファーノを母のように見守る女性。恋愛感情は全くなさそうなのに、なんでこんなにやさしく見守るのだろうと思ったら、「昔あなたによく似た人を愛したから。」LAST PARTYのシーラと同一人物?景子先生、カルトだわ。

 映像と舞台のコラボが、洒落てました。プロローグのダンスナンバーは、舞台の上下幅を狭くして、映画のワンシーンのようで素敵でした。ラストも、ステファーノが旅立った後、紗幕にエンドロールが映し出されて、最後まで映画風。ストーリー展開はお約束どうりだったけれど、綺麗な舞台でした。