月組
Jazzyな妖精たち
Revue of Dreams


2005年11月25日
於・東京宝塚劇場



 アイルランドから移民してきた5人の孤児。パトリック(瀬奈)は議員候補。シャノン(彩乃)は童話作家。ウォルター(霧矢)は殺し屋。ティモシー(大空)は三流新聞記者。ミック(月船)は警官。各々成人して別の道を歩んでいたが、パトリックとシャノンは、子供の頃同様、妖精を信じる心を持ち続けていた。
 タイトルからほとんど期待しないで見に行ったのだけれど、微妙な作品でした。

 プロローグのアイリッシュダンスは目新しくて、これから始まるストーリーがアイルランド人の話だという気がして面白い。けれど、その後のショーはいらないと思う。どちらか1つで充分。子供たちも、個人的好みで言うといらない。
 もっといらないのは妖精たち。妖精が出てこなければ、ストーリーとしては思っていたよりはよかった。クライマックスのかなり感動のシーンに妖精たちがワラワラと出てきたときには、ドン引きだった。プロローグのダンスシーンと妖精を全部カットして、その分きちんと最後まで話を終わらせて欲しかった。あの尻切れトンボの終わり方は、あまりに残念。

 下院議員候補パトリックの麻子ちゃん。真っ正直で爽やかな青年。支持者が多いのもうなずける。麻子ちゃんの好青年ぶりは、よく似合っています。どんなに道を踏み外した仲間でも、絶対信じ続けるって、いい人すぎる。

 童話作家としてデビューしたシャノン。これからという時に、白血病で余命1年と知らされる。(なぜここで妖精!?)短い命なら、パトリックのために使いたい。こういう発想、実は好みじゃありません。相手にすごく負担でしょ。病をおして選挙活動するとか、自己満足ですごく周りの迷惑になるだけ。白血病という具体的な病名も、つい先日本田美奈子が亡くなったばかりなので、ちょっと気分悪かった。
 こういうお涙頂戴な設定は辛気臭くて嫌いなのに、かなみちゃんの演技が本当に上手くて、最後ウォルターに「命がいらないなら、私に頂戴」と言ったときには、不覚にも感動してしまった。

 殺し屋ウォルターのきりやんが、渋くて素敵だった。寡黙で感情を殺した大人の男。スーツの後ろ姿にしびれます。最後銃を取り落とすところ、かなみちゃんの演技もすばらしいけれど、きりやんも上手い。黙ってるのに、ひしひしと感情が伝わってくる。(でも、なぜここでまた妖精!?)

 ゴシップ記者ティモシー。人生なめてるというか、本当にひねくれてるという表現がぴったりの祐飛くん。パトリックのようにまっとうな生き方は出来ず、ウォルターほどの悪に手を染めているわけでなく、ミックのように更生する気もなく。中途半端な感じが、不思議に格好いい。

 さららんミックは、普通に正義の警官だった。他の人たちがいろいろ事情を抱えていたので、何か裏があるのかと思っていたら、考えすぎでした。さららんは持ち味爽やかなので、役に違和感はないけれど、他の4人ほどの仲間感は薄かった。

 妖精たち。やってる本人たちもつらいと思うけれど、見ている方はもっとつらい。よりにもよって、超上級生たちばかりだし。いいところで出てきて、一気に雰囲気盛り下げてくれるし。ハードボイルドでお涙頂戴なストーリーと、あまりに合わない。妖精役を、対立候補や警察の上官役として使ったら、もっと話の幅が広がったのに。

 その後はご想像にお任せしますというエンディングは嫌いじゃないけれど、今回はきちんと最後まで見たかった。シャノンが助かることはないとして、他の人たちはどうなったのか。マクガバンを敵に回した以上、パトリックもウォルターもティモシーも、ハッピーエンドはないかな。