月組
舞音
GOLDEN JAZZ


2016年1月29日
於・東京宝塚劇場



 インドネシアに赴任してきたフランス将校シャルルは、マノンと呼ばれる踊り子に入れ込み、一夜を共にする。 マノンは、一夜の遊びののちにパトロンのもとに去っていく。 マノンを忘れられないシャルルは、彼女との生活を手にするために、婚約話を断り、悪事に手を染めるようになる。 インドネシア独立運動が盛んになる中で、マノンはスパイ容疑で逮捕される。

 シャルル、龍真咲。 「マノン」の瀬奈ロドリゴや「激情」の柚希ホセは、ファムファタールな悪女だと分かってても惚れ込んで堕落していく感じがすごくよく分かったのだけど、龍くんのシャルルはすごく中途半端。 女に入れあげるほどの熱情も感じないし、自己中で周りが見えないだけの男。 いきなり女に手をあげるとか、もう本当に嫌な男にしか見えなくて、出てくるたびにイライラしました。
 「1789」の時にも感じたのだけど、龍くんはキレイに作りすぎて、逆に格好良くない。 いくら宝塚だって、ぼろぼろになる時はぼろぼろになる方が格好いいんだけどなあ〜。 その辺の感覚が根本的に違うから、私には龍くんの演技にハートを感じられないんだろうと思う。

 シャルルの影、美弥るりか。 美弥ちゃんは龍くんと背格好が似てるから、最初のせり上がりからすごくシンクロはしてたのだけれど、あまり必要性を感じなかった。
 親友クリストフ、凪七瑠海。 カチャの技量の問題かもしれないけど、こちらも影の薄い役。

 マノン、愛希れいか。 愛より金。すごく分かりやすい。 シャルルに対しては、十分な贅沢をさせてくれるから一緒にいるのであって、金の切れ目が縁の切れ目だろうと言うのは目に見えてる。 投獄中にシャルルの手紙が嬉しかったとしても、誰かあの窮地から救い出してくれて、いい暮らしを約束してくれるのであれば、シャルルのもとを去っていくことに対して罪悪感は感じないだろうと思える。 たまたま誰も救ってくれなかったからシャルルについて行っただけ。 宝塚だからって、真実の愛に目覚めたっていう無理やりな解釈でなくていい。

 マノンの兄クオン、珠城りょう。 最近2番手として急に推されているけど、そこまで激推しされる理由が分からない。 マノンを食いものにしてる悪人というのは分かるけど、それ以上の魅力は特に感じない。

 革命家のアンサンブルがよかった。
 マノンの小間使いホマ、海乃美月。 主人に情をかけてもらっても、裏切ったことに対する罪悪感は全くない。 虐げられてきた気持ちは、ちょっとくらいじゃ変わらないって言うのが、すごくよく分かる。
 革命家カオ、朝美絢。存在感があっていい。

 ラスト革命家たちが決起するところ、それまでまったりつまらないラブストーリーだったのが、緊迫感で引き込まれた。 警察長官のマギーは割とありがちな職務に忠実なキャラだったけれど、革命家の敵で悪役というふうに見えないのが良かった。 そこに、急にシャルルがおためごかし的に割って入るのが興ざめだったけど。 みんな必死で生きてるのに、龍シャルルだけは本当に上っ面に見える。

 主人公がもうちょっと熱い演技をするタイプだったら、もうちょっと違って見えたんだろうけどな〜って思いました。

 ショー「GOLDEN JAZZ」これは楽しかったです。

 プロローグはカーニバル。客席でタンバリンを鳴らす人もいて、とても盛り上がりました。
 大人なムードのジャズナンバーが格好いい。美弥ちゃんが龍くんとシンメで使われることが多くて、今回なかなかいい扱い。
 ロケットがしっかり踊る系で、衣装も華やかで見ごたえあり。

 今回一番すごかったのが、アフリカンのナンバー。 周りのダンサーもいいけれど、ちゃぴの身体能力がすごい。 こんなに鳥肌が立ったダンスは、礼音くんのカポエイラ以来だと思ったら、同じ振付家だったんですね。 振付家が一緒でも、それを踊れるちゃぴがすごいのだけど。

 場面が変わって龍くんが出てきたら、突然盛り下がった感が否めない。 もう月組トップはちゃぴでいいと思いました。
 大階段の男役ナンバー、黒燕尾じゃなくて普通にスーツなのだけど、これは文句なしに格好いいです。

 ダンス好きの私としては、今回ちゃぴのアフリカンが見られただけで満足でした。