ビル

月組
ME AND MY GIRL

2008年5月29日 & 6月13日
於・東京宝塚劇場

サリー


 ロンドンの下町育ちのビルが、実はヘアフォード伯爵の落としだねだと分かり、屋敷で行儀作法をしつけられることになる。初めは一緒に喜んでいた恋人のサリーは、下町育ちの自分がいると、ビルは幸せを逃してしまうと考えて、身を引こうとする。最後は、ビル卿の粋なはからいによってハッピーエンド。

 明るくて爽やかなミュージカルは、本人もずっとやりたがっていただけあって、麻子ちゃんにぴったり。ランベスウォークの客席下りは、A席の前の通路まで麻子ちゃんが来てくれて、とても盛り上がりました。麻子ちゃんとかなみちゃんの仲のよさがあふれ出ていて、これでかなみちゃんがさよならなのかと思うと、何気ないシーンでもうるうるきました。

 ビルの瀬奈じゅん。自分に正直で飾らない好青年っぷりが、イギリスの貴族社会が背景というのもあって、アーネストを思い出します。こういう爽やかな青年が、麻子ちゃんはよく似合う。下町の粗野な青年と言うには格好よすぎるのが、難点と言うか嬉しいと言うか・・・。街燈によりかかってのナンバーでは、黒燕尾があまりに素敵すぎて、どう見ても職務質問を受けるような不審者には見えない。

 サリーの彩乃かなみ。下町のガサツさが、逆に気取っていなくて可愛い。地声に近い歌声がサリーらしくて、この美声がもう聞けないのかと思うと悲しい。あごで受けるの歌は、哀しいのに笑っているサリーを見て、またもうるうる。
 馬鹿ばっかりやっているようでいて、相手のことを一番に考えているビルとサリーは、本当にベストカップルで、見ていると自然と笑顔になります。

 マリア叔母の出雲彩も、今回でさよなら。たきさんの歌声や存在感が好きだったので、専科でずっといててほしかった。未沙さんとの絶妙のやりとりとか、憎めない迫力とか、たきさんならではのいい味が出てました。

 ジョン卿の霧矢大夢。ナイスミドルですよね。貫禄があるけれど、はじけるときははじけるし、素敵なおじさまです。最初はビルとサリーが屋敷に入ることに反対していたけれど、そんな頑ななわけではなくて、いい人な感じがします。
 たきさんとは若干歳の差を感じてしまうけれど、ほほえましい感じでOK。ビルとの酔っ払いダンスも楽しい。

 ジャッキーは、城咲あい。色仕掛けでビルに迫って、これでもかと誘惑して、こんな貴族の令嬢もいるんですねえ。綺麗な脚をおしげもなく放り出して。サリー以上に、宝塚の娘役としてはギリギリ路線だけれど、あいあいはこういう役が上手い。

 ジャッキーのフィアンセ、ジェラルドの遼河はるひ。使えないお坊ちゃんという設定なのは分かるけれど、はるひ君はあまり役を消化してないというか、上っ面っぽくて、ジャッキーが演技派だったのでかみ合わない。もうちょっと、何とかならないものでしょうか。

 未沙さんのパーチェスターは、完璧に未沙さんのオリジナルキャラになってました。お屋敷の弁護士ダンスが面白い。

 ラストのパレードが、3組のカップルの結婚式という感じで、いつもの宝塚調でないのが目新しかった。ショーはなかったけれど、途中のナンバーが充分楽しめました。


 2回目は、明日海ジャッキーでした。悪くはないけど、あいあいのジャッキーが強烈だったので、マイルドな印象でした。あいあいは、いわゆる色っぽいと言うのとは違って、妙にセクシャルなインパクトが強いので、貴族のお嬢さん?という感じだったけれど、明日海くんは挑発しててもどこかお上品でした。

 ビルのおふざけの数々は、アドリブがはいってますね。今回は、「どだい(どうだい)?」を連発してました。虎の敷物に寝転んで、バタバタ泳いでたり・・・。たきさんも、笑えない場面でたいへんだな〜と思います。

 改めて見ても、きりやんの素敵なおじさまっぷりがいいです。サリーにもやさしいし、何よりマリアに対して「年期の入った軍艦のようで好き」という感覚が面白い。たきさんも、いじわる叔母さんじゃないのがいい。

 どの歌も耳に残るし、心が温かくなるいい作品でした。初演(再演?)で見た剣バージョンは、あまりに宝塚初心者だったので、ストーリー以外全然記憶に残ってなくて、比較することはできないのですが、今回のこれで大満足です。