パリに現われたアルマンドとジョルジュは、詐欺師仲間。万博に乗じて一儲けしようと考えていた。ホテルで出会ったエッフェルが、世界一の鉄塔を建てたいという夢を語るのを聞いて、この計画を軌道に乗せ、建設資金を持ち逃げする計画を立てる。着実に資金は集まり、塔は完成するが、結局2人は儲け損なっておしまい。 内容が薄くて、大劇場でこれだけ大掛かりにやる芝居じゃない。詐欺師2人の掛け合いは楽しいし、芸達者な人が多くていいのだけれど、それだけに役不足でもったいない。ボケだとか何とか人を馬鹿にしたような台詞がないのと、人が死んで変な愁嘆場がなかった分、植田作品としてはましだったけれど、もう本当にいらないよ〜。 冒頭随分長いショー。ストーリーと全く関係ないのだけれど、話の内容が薄いので、変に引き延ばされるよりはよかった。万博についての説明台詞が延々と続いたのには、うんざり。別にそんなに詳しく説明しなくても、過去2回成功したから、今回も成功してほしいっていうひと言で充分なのに。 アルマンド(瀬奈じゅん)&ジョルジュ(大空祐飛)。同期で仲がいいのが役にもしっかり現われていて、呼吸もばっちり、ほほえましくて、見ていて嬉しくなる。祐飛くんが甘えた弟分の役をするのって、珍しい・・・というか、記憶にある限りはじめてな気がする。クールでちょっとすねてる祐飛くんも素敵だけど、こんな風に甘ったれな祐飛くんも可愛い。 麻子ちゃんは、苦悩する青年役もいいけれど、やっぱりこういうさらっとしたコメディが似合う。この2人が愛せるキャラだったのがよかった。 ギスターブ・エッフェルの霧矢大夢。学者バカ風な不思議キャラなのだけれど、芸達者なきりやんなので、役がしっかりこなれていてわざとらしく見えない。いつも思うのだけれど、きりやんってなんでこんなに変幻自在に演じられるんだろう。夢を語るときの浮世離れした感じとか、好きな女の子に告白しようとドギマギしてるところとか、びしっと正装してるのに中身はあいかわらずのところとか。 そしてこの男性3人から愛されるミミ、彩乃かなみ。可愛らしい女の子なのだけれど、添え物っぽくて個性がない。ラストの別れのシーンも、とってつけたようで。大した詐欺をしたわけじゃないのだから、アルマンドがパリに残っても問題なさそうなのに。 遼河はるひ、ロルボン財閥の御曹司。なんか・・・わざとらしい。きりやんのエッフェルも変わった存在感だけれど、きちんと存在感があった。まあきりやんと比べるのは酷だけど、もうすこし役を深めて、上っ面だけでない演技が出来たらよかったのに。 レオニード未沙のえる、エレノール出雲綾は、さすがの実力者です。延々と続く説明台詞も、わざとらしい台詞も、全部ほどよくコメディのスパイスを効かせて、うまく聞かせてくれました。未沙さん、たきさん、きりやんの3人がいなかったら、この作品すごくつまらなくなっていたでしょう。 幕前のベタな歌や台詞は、やっぱり存在していました。もうちょっと小洒落た演出は出来ないんだろうか。出来ないんだよね。街の若者たちも、たとえば作業員だったり、みやげもの売りの娘だったり、もうちょっと衣装や雰囲気を変えれば、わざとらしくないと思うのだけれど。 祐飛くんのジョルジュが、ジュリアン・ジャッケの実子らしいことを台詞の中で言っていたので、最後何かおちで出てくるのかと思ったら、何もなかった。詐欺がばれて皆につるし上げられるけれど、ジャッケの息子だっていうことに嘘はなかったし、エッフェル塔も完成したし、まあいいかの大団円っていうほうがよかったな。結局アルマンドって誰?というままだったし。お気楽コメディでもいいけれど、せめてそれくらいはきちんと描いてほしかった。そして、無理やり麻子ちゃんとかなみちゃんを引き離すほどの必然性はないのだから、ハッピーエンドがよかったな。 ショーは、楽しめました。麻子ちゃんが踊りまくって、幸せ。往年のハリウッド映画風のダンスシーンは、洒落ていて素敵でした。アラビアンな衣装は、あまり似合わない。やっぱり麻子ちゃんは、都会っぽいのが似合うのね。 園加ちゃん、ダンスが上手いのは前から承知だけれど、大活躍でした。みっぽーとのデュエットも見ごたえあった。きりやんのジャンプ、アチチュードでジャンプするヤツ、なんて言うの?すごく滞空時間が長くて見とれてしまった。 はるひ君、宙組時代はもっといけてると思ってたけれど、ダンスも歌もちょっとまずいよ。せっかく上背あって格好いいのだから、芝居ともどももっと頑張れ! |