古代ローマ。「来た、見た、勝った。」「ブルータス、おまえもか。」世界史やシェイクスピアの戯曲で知っている人も多いと思いますが、ジュリアス・シーザー(ユリウス・カエサル)を暗殺したブルータスの物語。 王政を廃して共和制を勝ち取ったはずなのに、今度はカエサルがローマの王として君臨するつもりなのではないかと疑い、敬愛していたカエサルを葬ることを決心したブルータス。けれど、巧みな話術で市民の心をつかんだアントニウスは、ブルータスを追い詰め、最後はブルータスたちは命を落とす。 壮大な歴史ものの悲劇かと思っていたら、ストーリーは表面を追っただけで、内容は少なかった。どの歌も、「サエサルは偉い」とか「愛愛愛」とか、単純なフレーズの繰り返しばかりで、ロックオペラと銘うつほどにノリがいいわけでもなくて、古代ローマの壮大さもあまり感じなかった。 カエサル、轟悠。幕開けには、もうカエサルはローマの英雄で、アントニウスや市民たちが褒め称えるカリスマ。いしちゃんは、確かに別次元のオーラを感じるのだけれど、周りから変に浮いている印象が。芝居が大仰すぎるというのか、もうちょっと自然でいいのに。 ブルータス、瀬奈じゅん。今回主役は、やっぱり麻子ちゃんだと思う。敬愛しているカエサルを殺さなくてはならない苦悩とか、妻との愛情とか、親友カシウスとの友情とか、ストーリーがあまり深くない分、ブルータスの内面が中心だったので。 悩める青年風の麻子ちゃん。前髪が顔にかかった感じがセクシーで、ダンスも多くて嬉しい。人のよさがにじみ出ているブルータスでした。最期、「カエサル、ポルキア、カシウス、市民、私は皆に愛されていた」という感じの台詞。そのままいしちゃん、かなみちゃん、祐飛くん、組子の皆に愛されて、私瀬奈じゅんは幸せですと言っているようで、死んで終わっているのに、見終わった後清々しくて爽やかな気持ちになりました。 ブルータスの妻ポルキア、彩乃かなみ。麻子ちゃんとラブラブで、見ていて嬉しくなるカップル。最後狂ってしまって可哀想。前回(THE LAST PARTY)に続いて狂気だけれど、今回ははかなげで切ない感じでした。 ブルータスの友人カシウス、大空祐飛。はすに構えた、どこか後ろ暗い役は、やっぱり祐飛くんのはまり役。その他大勢の小者ではないけれど、1人で行動を起こせるほどの大物でもない。微妙な存在感が、とてもよかった。 ブルータスととても深い友情で結ばれているのが見える。仲のいい同期だからこその、絶妙の呼吸なんでしょうね。この2人の並びは、とても好き。 アントニウス、霧矢大夢。幕開けから飛ばしてます。北翔くんと組んでの、漫才コンビ。こういうとってつけたストーリーテラーは嫌いなはずなのだけれど、きりやんはOK。とにかく楽しい。きちんと計算したお笑いという感じで、芝居とのメリハリもあって、さすがです。 カエサルが殺されたときの卑屈な態度、まるで無能そうにふるまって、周りの油断を誘うのが、とても上手い。ローマ市民に、「ブルータスは偉い♪」と言わせたときには、思わず何て策士なんだろうと思って、感心しました。一見ブルータスを称えているように見えて、実はカエサルが暗殺されたのと同じシチュエーションを作っている。ブルータスもカシウスも、割と真っ正直な人たちなので、すっかりアントニウスの頭脳プレイに負けてしまう。そして、きりやんは本当に芝居上手で、ダンスもキレがいいし、歌も上手いし、やっぱり感心します。 オクタヴィアヌス、北翔海莉。きりやんとコンビを組んでいるのが、すっかり喰われてしまっている感じ。漫才も素人っぽいし(って素人なんだけど)、カエサルが自分の後を継がせたほどのキレモノにも見えない。なんかぼ〜っとして見える。 クレオパトラ、城咲あい。お衣装もメイクもキラキラして、とてもゴージャス。ただ、クレオパトラ=エジプトの女王という貫禄のあるイメージではなかった。カエサルに向かって、「エジプトで貴方の子供を産んできました」なんて軽そうに。もうちょっと言いようがあるでしょ。 ブルータスの母親で、カエサルの愛人、セルヴィーリアの嘉月絵里。さすがに存在感あります。ただ・・・個人的にはえりちゃんには、元老院議員の1人をやってもらいたかったな。若者の集いにしか見えない議員たちに、重みがでる気がして。 ブルータスに向かって「妻と恋愛するなんて変」というのは、昔の貴族的には普通と思えるけれど、ポルキアに向かって「妻は家で掃除洗濯していろ」というのは、とても違和感。貴族の奥様が家事はしないでしょ。家を守っているべきだという意味だと解釈はしたけれど、なんだか昭和時代の古いおじさんの発想を見てしまって、ちょっと嫌な台詞。 ショーは、キラキラしていて、とてもショーらしいショーだった。どのシーンも、セットがとても綺麗。きりやんの夢に誘う男や、いしちゃん、麻子ちゃんの宝石泥棒のシーンが好きだった。ブエノスアイレスは、できればいしちゃんではなく、麻子ちゃんを希望します。 麻子ちゃんのアドリブは、「ふづき美世さん、ぼくとダイヤモンド、どっちが好き?」でした。「そんなに笑ったら、目がなくなっちゃうよ」と、目一杯目を見開いてました。 |