源氏物語の最終章、宇治十帖。 光源氏の孫であり、プレイボーイでならしていた匂宮は、兄弟のように育った薫が囲っている浮舟という姫君の噂を聞き、興味から忍び込む。浮舟は、薫が自分を囲っているのは、想いが届かなかった別の姫君の代替であると感じ、満たされない思いでいた。匂宮と浮舟が一夜を共にしたことを知り、薫は思い悩む。 平安絵巻としては美しいのだけれど、三角関係というほどはっきりした愛憎劇でもないし、人物関係もあやふやで、印象の薄い舞台でした。薫の母君の不義の話とか、夕霧と二ノ宮の政権争いとかいろいろ盛り込まずに、単純に匂宮と薫と浮舟の三角関係に的をしぼったら、もう少し分かりやすかったと思います。 匂宮、瀬奈じゅん。浮舟に対しては、薫の女だから興味を持っただけで、本当に恋心をいだいたのではないと思うのだけれど、宝塚的演出だとそれなりに本気っぽくもあり、分かりにくい。浮舟とのラブシーンは、それなりに色っぽかった。 浮舟、羽桜しずく。自分を押し殺して、薫の想い人だった別の姫君の真似をするのだから、もともとあまり個性のないキャラクターだとは思うけれど、それにしても印象が薄い。匂宮と結ばれたあたりでは、もう少し存在感があってもいいのに、ヒロイン抜擢に応えきれなかった感じがします。 薫、霧矢大夢。薫も、浮舟をどう思っていたのやら。本気なのか、大君の形代のつもりなのか、成り行きなのか。 薫にしても匂宮にしても、愛したり苦悩したりという感情表現が控えめで、浮舟が自殺を図らなくてはならないほど、泥沼化して見えない。王朝ものだからと言っても、もっと感情表現してくれていいのに。 目立っていたのは、小宰相の君の城咲あい。上品で何を考えているのか分からない宮中の人たちの中で、1人異質のはすっぱぶり。宝塚のヒロインタイプではないけれど、あいあいはこういう役が上手い。 芝居は退屈だったけれど、ショーApashionado!は楽しかった。 プロローグの舞台セットか衣装か分からないのは、「小林幸子みたい」という声が周りから上がっていましたが、その後のスパニッシュは、麻子ちゃんの真骨頂。格好よかった。 バンパイアのシーン。きりやんは、お耽美は余り似合わないと思うけれど、アンサンブルが美しくて、見とれていました。 バレンチノ。椿姫やアラビアもいいけれど、やっぱり血と砂。マタドール姿がこれほどサマになる人は、麻子ちゃん以外にいないでしょう。是非、本公演で「血と砂」をやってほしいです。プルミタスは、もちろん祐飛くんで。マタドールの麻子ちゃん、道ならぬ恋に悩む麻子ちゃん、祐飛くんと反目しあい、許しあいつつ息絶える麻子ちゃん。妄想爆裂です。 中詰めの女装パレード。みりお君とかまさき君とか、もともと美人だから女役が綺麗なのは当然として、以外に可愛いと思ったのが園加ちゃん。思いっきりかわい子ぶった表情が、いい感じでした。組長は怖かったけど。 カリエンテ、ラテンナンバーも楽しいし、黒燕尾もこれぞ宝塚で素敵でした。 |