フランシス

月組
薔薇の封印

2003年12月19日
於・宝塚大劇場

リディア


BGM*ヴァンパイア・レクイエム

 
 何年かぶりに、ムラに出かけました。駅も街も、日比谷とは違って独特の雰囲気。プチミュージアムでは、シニョール・ドン・ファンの衣装が展示してあるのを見たり、東京にはないお店を見たり、芝居の前後だけでも楽しめて、やっぱり本場はいいなあ。

 薔薇の封印は、トップスター紫吹淳の退団公演。大好きな男役さんだったので、退団するのは残念でならないけれど、最後にバンパイア役なんて、ぴったりだったと思う。
 愛する女性と共に生きるためにバンパイアになったフランシス(紫吹)。けれど恋人は殺され、長い時の流れを一人生きることになってしまう。バレエ、タンゴ、いろいろなダンスシーンが沢山あって、ダンス好きには嬉しい。

 4部構成。プロローグの現代から、中世→ルイ王朝→ナチスドイツ→現代と時代が移り変わる。オムニバスは結構好きなので、楽しめた。ただ、現代から過去を回想するというのは、宝塚の好きな手段みたいだけれど、個人的には、バンパイア総踊りのプロローグ、中世→ナチスドイツ→現代の3部構成にしてほしかった。ルイ王朝は、バレエを見せたかったのかもしれないけれど、ストーリーにはほとんど関係なかったし、その分、薔薇の谷でフランシスとリディアが仲睦まじいところを見たかった。

 リディアの映美くららがとても可愛くて、その後ずっとフランシスが想い続ける女性なのに、2人のシーンが少なくて残念。悪の心を宿したミハイル彩輝直が、本当に悪役らしい。かなり迫力のある悪役なのだけれど、「心が弱い」と言われるのがよく分かる。それにしても、世界中に散らばった薔薇を集めて悪の心を封印するという設定、犬夜叉を思い出す・・・。

 時は流れてルイ14世の御世。ルイ14世の霧矢大夢にバレエを躍らせるために、このシーンを入れたとしか思えない。きりやんのバレエは本当に上手だし、復帰してよかったと心から思えるのだけれど。
 ダンスで女性を失神させるフランシス。私も失神させてもらいたい。ルイ14世は、きりやんだからだろうけれど、お笑い部門も担当。微妙に似合わない国王の衣装も、私的にはツボ。
 王弟フィリップ、大空祐飛。本人は、兄貴は太陽、俺は月とひがんでいるけれど、見た目に関しては、祐飛くんのほうがよっぽど派手。それと、「太陽が沈んだまま二度と昇らなければ、月こそが王♪」と歌っているけれど、太陽がなくなったら月も光らないんだよ。
 月船さららの小姓アンリ。ハスキーな声が、本当に変声期の少年みたい。若づくり、がんばってます。可愛い顔して、結構おませ。オーバーアクションで、きりやん共々お笑い担当。月組の芝居は、こういう息抜きの出来るシーンがあって、シリアスになりすぎなくて好き。

 1幕目は、場面が途切れ途切れなイメージだったけれど、2幕目のナチスドイツと現代は、登場人物がつながっていて、感情移入して見られた。

 ナチスドイツで、フランシスが出会った女性ポーラ(映美)。今までえみくらの保護者にしか見えなかったりかちゃんなのに、今回はちゃんと恋人同士に見える。2人でバンパイアごっこをしてふざけているところとか、マントをフランシスに見立てて歌うところとか、「一夜だけでも結ばれたい♪」なんて結構きわどいことも言っているのだけれど、全然あざとくなくて、純粋に恋している感じがかわいい。可愛いというだけじゃなくて、1作1作、本当に芝居が上手くなっていて、今回は感動しました。
 シャンデリアの上で愛を語るのが、とてもほほえましい。ここの「私のバンパイア」のデュエットが好き。愛し合っているからこそ別れを選ぶというのが、切なくて、心温まる。家でこの曲を口ずさんでいると、涙が出てきます。リディア一筋だったフランシスだけれど、ここに来ていい女性に知り合えてよかったね。えみくらちゃんの笑顔は、周りを明るくしてくれます。
 カイザー中佐ことミハイルが、フランシスに和解を申し出るシーン。口ではいいことを言っていても、いかにも悪巧みしているようにしか見えない。さえちゃんも、かなり芝居が上手くなったと思う。エミールの祐飛くんも、普通の黒燕尾姿なのに存在感があって、谷ちゃんが組替えした後、どんどん存在感が増して格好いい。

 現代にうつるまでのダンスが、とても不思議な感覚。オペラグラスをはずした途端、スクリーンに毛沢東のどアップが映っていたのには引いてしまった。
 そして、プロローグと同じ現代。これが「LUNA」そのもの。古代遺跡を舞台に、若いダンサーのグループが歌い踊る。マッドなドク(LUNAと同じく、嘉月絵理)が天才のDNAならぬ、バンパイアの秘密を研究しようとする。ウラヌスのブライアン社長は、今回はさえちゃんか〜。私が見たときは、りかちゃんではなくて、ガイチさんだったけど。「デジャヴかもしれない。」(byサラ)そこまでデジャヴにしなくても・・・。

 ミハイルの、マイケルとしてジェニファー(映美)に見せるやさしい恋人の顔と、世界征服(!)を企む悪の顔とのギャップが怖い。
 きりやんのクリフォード、自分は2枚目だと信じているけれど、またもお笑い担当。元気になってくれてよかった。でも、あまり無理はしないでね。
 ガラスの中で冷凍されていくフランシスが色っぽくて、ドキドキ。ジェニファーとの会話で、フランシスの声はこちらには聞こえないけれど、それがなおさら何とも言えない感じ。そのフランシスに語りかけるジェニファーが、おばあさんのことを語る時、はじめはおばあちゃんと言っていたのに、フランシスと愛し合っていたことを悟ると、ポーラと呼ぶようになったのに、優しさを感じた。
 「永遠に生きる苦しみを味わわせたくない。」「共に成長し、共に老いる歓びに勝るものはない。」というフランシスの言葉にじ〜んときた。さすがはりかちゃん、何気ないのにとても格好いい。ジェニファーが生きている限りは、フランシスも心安らかに暮らせるだろうな。「不滅の棘」とは違って、心温まるラストだった。

 フィナーレのDance with you。一人一人に心からの笑顔をむけるりかちゃんに、また感動。「僕がいたことを忘れないで」という歌詞を聞いて、忘れるわけないよ!と心の中で叫んでしまった。まだ東京が残っているので、退団するという実感は薄いけれど、東京の楽近くに見たら悲しくなるんだろうな。