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愛と青春の宝塚 2008年12月5日 |
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フジテレビで放映されたドラマの舞台化。 第2次世界大戦中、宝塚の舞台では、トップスター嶺野白雪を中心に、華やかなショーが上演されていた。宝塚に憧れて入団してきた少女たちは、戦争が激しくなると、舞台に立つことも出来なくなる。戦地に慰問に出かけたり、女工として働かされたりする日々。辛いことばかりの戦争が終わると、宝塚は次の世代に受け継がれていく。 舞台メイクはどうするのかと思っていたら、ずっとナチュラルメイクでした。でも、そのナチュラルメイクのまま舞台衣装を着ていても、全く違和感なく男役に見えるところは、さすがのキャリアです。 嶺野白雪ことリュータンは、湖月わたる。リュータンというと、ドラマで紀香ちゃんの華やかな女優オーラと、きっぷのいい大阪弁のイメージが強かったのですが、わたるくんのリュータンもあてがきかと思うくらいにぴったりでした。 下級生たちが稽古しているところに、綺麗に着飾って現われて、嫌味なくらい「私がトップスターよ」と見せつけるのだけれど、どこか憎めない雰囲気。結局は全員すき焼きに連れて行っての大盤振る舞いで、すき焼きソングで「肉♪」と歌う姉御っぷりが、わたるくんの大らかさにぴったり合ってました。 タッチーが爆撃の中にいると知って、思わず助けに行ってしまうのも、恩着せがましいとうんざりするけれど、さばさばしていて嫌味がなくて、本当にいい人。 以前と変わらない格好いい男役姿も、普段の自然な姿も、ギリギリのところで頑張っている姿も、どれも違和感なく素敵で、リュータンって(わたるくんが、かもしれないけれど)本当になんていい人なんだろうと思ってしまいました。わたるくんにあまりにぴったりだったので、りかちゃんのリュータンが想像つきません。 橘息吹ことタッチー、彩輝なお。リュータンの華やかさにむかついて靴を投げつけたひねくれっぷりはよかったけれど、入団してからが、私の好みには合わなかった。男役なのに妙にナヨナヨしてるし、いつまでも陰気で、リュータンに「私の次はあんたしかいない」と言わしめるだけのオーラを感じない。ストーリーの中で、ヒロインはリュータンかもしれないけれど、美味しいとこ取りなのはタッチーなのに・・・。 入団テストのときに、身なりは汚くても、思わず目をみはるバレエの才能があるという設定を考えると、タッチーの役はダンスの上手い人にやってもらいたかった。 星風鈴子ことトモ、星奈優里。最初男役を目指していたけれど、自分に脳腫瘍があることを知って、残された短い時間の中で、夢だったトップの座をつかむために娘役に転向。自分にも他人にも厳しいところが、優里ちゃんの硬質な雰囲気に合ってはいましたが、逆に似合いすぎて、きつい人という印象が残ってしまいました。 トモが息を引き取る間際、リュータンが抱きしめて、今舞台で拍手をあびているように思わせてあげるのが、リュータンの優しさ全開。テレビドラマでは、本当に舞台上で息をひきとっていたけれど、それ以上に切なくてリアルで、涙ボロボロでした。 紅花ほのかことベニ、映美くらら。鈍くさくて、垢抜けないけれど、どこまでも明るくて憎めない子。後輩に持つなら可愛いでしょうね。そもそも、よくベニが宝塚に入団できたと思うけれど。 えみくらちゃん、体当たりの会心の演技でした。飾りっけなくて、一生懸命なベニも、えみくらにぴったりはまっていたので、るいるいが想像できない。 演出家の影山航、石井一孝。背が高くてがっしりしているので、わたる君と並んでいてもサマになります。 影山先生がリュータンの役を演じたシーンでは、やっぱり本当の男性が演じるリアルさは、違うもんだなと思いました。リュータンが、いちいち先生の演技に感動して、最後フォールインラブするのが、本当に笑えます。男役リュータンの顔を至近距離で見て、一瞬ひるむ先生も可笑しい。すっかり舞い上がって、恋する乙女モードになったリュータンが、次の瞬間、渋い男役に戻って舞台に立っている変わり身の早さも、さすがです。 影山先生はタッチーが好きだったらしいけれど、こんなに一途で飾り気のないリュータンを知ったら、リュータンを選ぶのは当然でしょう。焼け野原でプロポーズするのが、よかったね〜と素直に思えます。 速水中尉、本間憲一。テレビの中村トオルの白い軍服姿の印象が強くて、あの格好よさが忘れられず、申し訳ないけれど、感情移入できませんでした。タッチーとのラブシーンも、さえちゃんの演技が好きでなかったこともあって、いいと思えず・・・。 ラストは、幸せそうなリュータンと影山先生の見守る中、タッチーを中心としたもんぺ姿の生徒たちのダンスナンバー。宝塚の美学は、こうして次の世代に引き継いでいくこと。わたるくん自身、そうやって次の世代に引き継いでいったし、いろいろなところで、本物の生徒さんが演じるリアリティを感じました。 ドラマで見たときは作り物くささを感じていたので、それ程期待していなかったら、爆笑と感動のとてもいい舞台でした。休憩込み3時間半の長い舞台に、さらに短いショーがついて、お得感いっぱいです。 私が見に行った日は、湖月、彩輝、星奈の3人のアフタートークもあって、音楽学校時代のいろいろな話が聞けて、本当に盛りだくさんでした。客席には、稔幸も来ていたらしく、すっかり星組ムードでした。 |