雪組
20世紀に乗って


2019年3月22日
於・シアターオーブ



 舞台演出家兼プロデューサーのオスカー・ジャフィは、興業で大コケして、借金まみれになっていた。 最後の望みをかけて、ニューヨーク行きの豪華列車20世紀号に乗り込む。 そこに映画界の大スターで、かつての恋人リリーが乗り込んでくるという情報をゲットしたからだった。 オスカーは、リリーに出演を承諾してもらい、さらには彼女とのよりを戻そうと試みる。

 古いブロードウェイ作品だと聞いていたので、もしかしたら古臭くてつまらないんじゃないかと余り期待せずに見に行ったら、予想を裏切る面白さでした。

 シカゴからニューヨークに向かう豪華列車。 始発駅のシカゴで、頬に傷のある男(by望海風斗)が通り過ぎる。それだけなんだけど、客席には笑いが起きてた。
 本役のオスカー。 ひげのダンディなオジサマなのだけど、最初のアルカポネのイメージを引きずってると見事に裏切られる。 いや良い意味で。 だいもんはコメディよりシリアスのほうが上手だと思うんだけど、真面目ゆえの可笑しさがいい具合にはまってる。 なかなか登場しないと思ったら、まさか電車の窓にへばりつくとは想像もしなかった。

 オスカーの部下、オリバーの真那春人とオーエンの朝美絢。 オスカーに振り回される役なんだけど、実際はこの2人が舞台を動かしてる感じで、グイグイ来て面白い。 まなはるが芝居上手なのは知ってるけど、あーさがね。 こんなにコメディも行けるとは。 サンジュストと同一人物とは思えません。

 一番ぶっ飛んでたのがブルースの彩風咲奈。 登場シーンから何か変な奴だと思ってたら、想像以上に変な奴だった。 自意識過剰のイケメンばか。 マスコミの前でいちいち出しゃばってポーズ取るところから始まって、自分のポートレートを壁に貼るところとか、ドアに挟まれて何度も頭ぶつけるところとか。 急に腕立て始めたり、のけぞるところの腹筋背筋なんかもすごい。 とにかく体張ってて、捨て身の演技が凄いです。

 リリーの真彩希帆。 歌に定評ある生徒さんだけど、今回は特にすごかった。 新しい映画の台本を紹介するところ、ヒロインが1人で一場面歌い上げるのが半端なかった。 個人的にちょっと残念だなって思うのは、最初のダサいピアニストの衣装を脱ぎ捨ててゴージャスなショースターに変身するところ。 変身しても・・・やっぱりダサかった。 ショースターじゃないんだよね、希帆ちゃんて。

 Dr.ジョンソンの久城あす。 何でこんな意味のなさそうな役を、わざわざこんな上級生にやらせるんだろう?って思ったんです、最初はね。 前言撤回。 最後一番いいとこ取りしてった感がありました。

 車掌の彩凪翔はポーターたち率いてタップ踏んでるくらいで、あまり芝居に絡んでこなかった。 元気いっぱい踊ってたけどね。

 最初の不倫議員はどこに行ったのか?何か意味あったのか?とか、車掌とドクターが持ち込んだ脚本は何かに生かされるわけじゃないのねとか、 放りっぱなしで回収ナシなのが気になったけど、まあ細かいことは置いておきます。
 とりあえず、とにかく面白かった。 真ん中だけオペラグラスで見てて、うっかり周りの小芝居見逃して後悔するほど。 ずっと笑ってた気がする。 見に行って良かったです。