雪組
ブラックジャック


2013年2月26日
於・日本青年館



 無免許の外科医ブラックジャックは、法外な治療費を請求するが、手術の腕は天才的。
 ブラックジャックのもとを、バイロン侯爵と名乗る青年が訪ねてきた。 交通事故でどの医者からもさじを投げられた恋人を救ってほしい、そのために自分の体のあらゆる臓器を摘出してくれて構わないと言うのだった。 依頼を断ったBJだったが、侯爵に強引に連れ去られ、手術を行うことになった。 バイロン侯爵は不老長寿の一族であり、そのために人体実験にさらされた人もいたこと、300余年をひっそりと暮らしてきたこと、愛した女性は侯爵の秘密を知って飛び出して行ったことなどを語る侯爵。 BJは、治療費の代わりに、自宅で治療にあたっている少女のために侯爵の体を使いたいことを申し出る。 奇形腫から摘出した少女、ピノコ。 どんな姿であっても生きる希望を強く持つピノコは、周りの人間皆に生きる力を与えてくれた。
 医療ドラマお約束の手術シーンはほとんどなくて、人間ドラマ、人の命の大切さが強く描かれていました。

 ブラックジャック、未涼亜希。 低い声質、落ち着いた話し方、たたずまい。漫画から抜け出してきたかと思うほど、ブラックジャックそのままでした。 クールで無表情っぽいのだけれど、BJなりの喜怒哀楽がきちんとあるし、最後のピノコに対する優しさが特に胸をうちました。

 ピノコ、桃花ひな。 まさかあの包帯ぐるぐる巻きの中に、本当に入っているとは思わなかった。 トークショーでも言っていたけれど、何も見えない動けない状況では、BJの声だけが全て。 まっつの落ち着いたトーンの声を聞いていたら、すごく安心感があっただろうなと思います。 めちゃくちゃはじけていて、まさにピノコでした。

 バイロン侯爵、夢乃聖夏。金髪ロン毛に時代がかった衣装、お貴族様とは言えずいぶんクラシカルな・・・と思っていたら、そうきたか〜!のバイロン侯爵。 「薔薇の封印」のフランシスとか「不滅の棘」のエロールとか、宝塚なら不老不死なんていう非現実的な設定もありかもと思えます。 綺麗なだけのヘタレになってもおかしくないバイロン侯爵なのに、ともみんが演じると熱い!そしてすごい包容力。 あんな風に後ろから抱きしめられたら・・・くらくらします。 日ごろあまり娘役ビジョンにならない私でも、せしる君がうらやましいと思ってしまいました。 手負いのともみん、うわ〜痛そう〜とちょっと萌えでした。(死なない程度の手負いは萌えポイント)
 ともみんのもう1役、BJの影。プロローグだけなのですが、 他の影メンバーも格好いいけれど、ともみんが加わるのは反則としか思えない。 濡れたような黒髪といい、長い手足、シャープなダンス、鋭い目つき、どれを取っても文句なしの格好よさでした。

 カテリーナ、大湖せしる。 大人のいい女。 侯爵の夢に出てきたように、醜く老いて、自分が若くあるためだけに侯爵を利用しようなんてことは、カテリーナは絶対しないと思う。 祖母と孫にしか見えなくなっても、カテリーナの心が変わらない以上、侯爵もあんな風にカテリーナを拒絶しないだろうし、そもそもカテリーナ自身がそんな醜い心に変わらないだろうし。 本当に幸せになってもらいたいカップルです。

 彩風咲奈、カイト。ふてくされたチンピラ。なんかこの手の役が続くうえに、いつも同じ役作りに見えてしまって、正直また?という印象。 BJとピノコ、バイロン侯爵とカテリーナのラストは心温まるのに、カイトのラストはふ〜んという感じ。もうちょっと演技力をつけてください。
 恋人のエリ、沙月愛奈はいい女でした。

 トラヴィス、帆風成海。GPSなんて今なら携帯電話にもついているけど、当時はNATOにも秘密の最新兵器だったんですね。 というか、全然役に立たないし。 憎めないんですけどね・・・なんだかホタテマンみたいでした。

 BJの影もだけど、ダンスナンバーが格好良くて見ごたえありました。

 公演後、トークショーがついていました。 まっつはオフでもクールで落ち着いた雰囲気がBJそのもの。本人も「自分がBJなのか、BJが自分なのか分からなくなる」と言っていたけれど、本当にその通りです。 ともみんは、熱意がから回って何を言っているのか分からなくなる感じが、まっつと正反対で面白い。 ちょっとお得な公演でした。