雪組
シティーハンター
Fire Fever!


2021年10月8日
於・東京宝塚劇場



少年漫画の舞台化。 原作のシティーハンターが好きで、案外宝塚に合うんじゃないかと思ってたので、本当に舞台化されると聞いてすごくうれしかったです。

シティーハンターと呼ばれるスイーパー(始末屋)に仕事を依頼するには、新宿東口の掲示板にXYZと書き残すこと。 XYZ、もう後がないと追い詰められた依頼者が最後に頼るシティーハンターの正体は、殺し稼業とは裏腹に女好きでチャラい冴羽リョウだった。
グジャマラ王国のクーデターで祖国を追われた王女が、日本に亡命してシティーハンターに助けを求めてきた。 リョウは暴力団から息子を救ってほしいと別の依頼を受けていたが、王女のボディーガードも同時に引き受けることになる。 2つの事件が絡み合い、やがてリョウの育ての親でクーデターにも関与している海原との一騎打ちになる。

プロローグ、グジャマラ王国のクーデターで照明がチカチカするところ、本当に銃撃戦のようでした。
一転して新宿の街。 ごちゃごちゃした新宿っぽさはよく出てるのだけど、後ろのモニターやアンサンブル芝居が多すぎて情報過多。 もう少しすっきりさせて、ストーリーに集中できるようにしてもらいたかった。

彩風咲奈の冴羽リョウ、リアルにリョウでした。 チャラくて女たらしでふざけてばっかりいるようでいて、素に戻った時の男っぽさと孤独。 脚長い、カジュアルな衣装が似合う。 香のミスを必要以上にキツく叱責するところなんかも、本当は裏の社会にいて欲しくないリョウの気持ちがすごく分かる。 見てるうちに本当にリョウにしか見えなくなって、どんどん引き込まれました。
次元大介や斎藤一のころはいっぱいいっぱいで役の魅力が全然出し切れてなかったのに、いい感じに大人の男になりました。 素直に咲奈が格好いいと思えるようになったことが嬉しい。
GET WILDを銀橋で歌うところは、来た〜!って感じでした。

綾凰華の槇村。 ほとんどエピソードなく死んじゃうのは尺の都合で仕方ないと分かってるけど、できることならもう少し最初のエンジェルダストのところとか、リョウや香とのかかわりを見たかった。 それはそうとして、とても槇村らしくて良かった。 幽霊になってせりあがってくるのが何とも言えない。
香に銃の引き金を引かせてしまうところだけは、それは槇村じゃない〜!って心の中で叫んでしまった。 リョウ的にも絶対にやらせないことだし、ここだけは残念。 リョウに槇村の姿が見えてたのかは分からないけど、心が通じ合ってる感じは良かった。

朝月希和の香。 なぜ彼女がトップ娘役!?って思ってたけど、香は好演してたのでまあいいです。 お約束の巨大ハンマーも振り回してたし、愛を止めないでを歌ってくれたのが嬉しかった。

ヒロインっぽいのは夢白あやのアルマ王女の方でした。 リョウとキスシーンもあるし、あやちゃんがトップ娘役でいいんだけどな。

ミックの朝美絢。 ポスターでは目を引くのだけど、実際の舞台では何かあと一歩足りない気がしてしまった。 正統派2枚目で超格好良くてもいいはずなのに、女好き設定に引っ張られすぎたのか、あまり格好いいと思わなかった。 海原の命を受けてリョウを裏切ろうとしたり、香に対してはただの女好きと違って本気だったり、リョウとの関係で思うところがあったり、そういういろいろが見えない。 雪組に異動して来た頃はもっと押し出し強い印象があったのだけど、案外役幅狭いのかもしれないと思ってしまった。

海坊主の縣千。 声の出し方も動き方も、すごくいい。 よくもまあ、あの年次であれだけ色濃い役を演じられるものです。 出番はそんなに多いわけじゃないのに、美樹に対する思いとか、シャイだけど心根が優しいところとか、ちゃんと海坊主らしさが出てた。

海原の夏美よう。 原作のままの海原で、リョウが慕ってたのも分かるし、殺しあわなきゃならない悲しさも伝わるし、ラスボスらしい大きさもあるし、さすがです。

冴子の彩みちるのお色気もなかなかのものでした。

グリーンのブルゾン着てレインボーブリッジを封鎖しようとする織田とか、シルエットから浮かび上がるキャッツアイとか、小ネタも多い。 警視総監が首相に電話するときのお決まり文言が「安心安全」って、ちょっとした時事ネタがシニカルでいい。 ちょっと詰め込みすぎなのは否めないけど、あれだけ膨大な話をよくまとめ上げたと感心します。 全体としてすごく楽しめました。

ショー「Fire Fever!」
これからの雪組はダンスとビジュアルで押すことに決めたらしい。
全員ロケットはどうなんだろうと思ったけど、縣がソロでダンスを披露してすごい大抜擢を感じました。