雪組
BONNIE & CLYDE


2023年3月1日
於・御園座



恐慌下のアメリカで、強盗や殺人を繰り返したボニーとクライド。 彼らをヒーロー扱いする市民も現れるが、最後は警察に撃ち殺される。
宝塚では以前「凍てついた明日」というタイトルで上演されたことのあるボニー&クライドのブロードウェイ版。 前回の宝塚版は生きるのに疲れた大人の男女が死に場所を求めてるようにも感じたけれど、今回は若くて生命力にあふれた男女の物語だった。

クライド・バロウ、彩風咲奈。 ハットにスーツはもちろん囚人服すらスタイリッシュだし、オープンカーに乗るところなんてため息ものに格好いい。 型にはまるのが耐えられない、とんでもなく悪い男だけど、勢いもあるし周りが心酔してしまうのが分かる。 ギャングごっこが好きだった少年が、本物の銃に持ち替えてどんどん深みにはまっていってしまうのが、自業自得なのだけど悲しい。

ボニー・パーカー、夢白あや。 女優になって雑誌の表紙を飾りたい、華やかな暮らしに憧れる少女のころの気持ちは持ち続けてるけど、夢見る乙女じゃなくて、アメリカ女性らしい奔放さとか生身の女の色香を感じる。 言葉使いや態度が割と過激で(下着姿の胸にドキドキ)、ブロードウェイミュージカルっぽい雰囲気がよく出てました。 少女時代の愛陽みちの天真爛漫さもいい。 愛されて育ったのに、クライドという麻薬から抜け出せなくなってしまったんだなって分かります。

クライドの兄バック、和希そら。 もともとクライドと同じ悪のDNAは持ってたのだろうけど、妻の献身であと少しで真人間に戻れそうだったのに。 ボニー同様、クライドという麻薬に取り込まれてしまったんだろうな。 小柄なのもあってともすれば弟に見えてしまうけど、そこは演技力で十分カバーしてました。

バックの妻ブランチ、野々花ひまり。 信仰心の強い女性だけど、夫を想うあまりにクライドの仲間に入ってしまう。 すごく難しい役をうまく演じてました。

ボニーに想いを寄せる警察官テッド、咲城けい。 さわやか好青年、最初から最後までそれ以外の印象がない。 もう少しボニーに対する執着心とかあってもいいのに。

牧師、久城あす。 仕事もない金もないでもここはアメリカ的な歌を市民たちが歌う場面で、神が救ってくれると信仰を説き続ける牧師。 飢えて死んでも犯罪に巻き込まれて死んでも、神が救ってくれる。 本気で信じてる様子が心底怖かったです。

幕開けいきなりボニー&クライドのハチの巣から始まって、最後また同じシーンで締めるのかと思ったら、先に希望を残したような終わり方。 そして華やかなショー。 新しい雪組がスタイリッシュで勢いのある組になりそうな予感がします。
「凍てついた明日」の楽曲でのデュエットダンス、そら君の歌声がよくはまってた。 本編が明るいのミュージカルナンバーだったので、トランペットのもの悲しさが沁みました。
パレードの最後に真っ赤なオープンカーに乗って出てきた咲奈が格好良すぎました。
本当にいい作品だったので、御園座だけで終わらせてしまうのはもったいない。